『ブギウギ』から『九条の大罪』の“影のMVP”へ 黒崎煌代の進化が止まらない
2023年、連続テレビ小説『ブギウギ』(NHK総合)に登場した黒崎煌代を目にしたとき、「こんな逸材、一体どこから見つけてきた!?」と驚愕した視聴者は多いのではないだろうか。主人公・スズ子(趣里)の弟・六郎を演じた黒崎が作り出す「実在するようにしか見えない」リアルな存在感に息を呑んだ。スズ子いわく「ちょっとトロい子」で心優しい六郎が、戦争という強大な暴力に巻き込まれていく。在りし日の六郎の「煌めくような生」と「無力無念の死」が、目に焼きついて離れない。
黒崎煌代、『ブギウギ』六郎として生き抜いて 「順調な時にこそ謙虚でいなきゃいけない」
2022年にレプロエンタテインメント30周年企画「主役オーディション」で約5千人の中から見事合格を勝ち取り、NHK連続テレビ小説…衝撃のドラマデビューから3年。黒崎煌代の進化が止まらない。近年の彼の出演作を見るにつけ、その稀有な存在感に加えて、技術を身につけていると感じる。各所のインタビューでの語り口から垣間見られる真摯で勉強熱心な姿勢、各現場で発揮される吸収力の凄まじさ、勘所の正確さが、確かな結果をもたらしている。
『闇金ウシジマくん』の真鍋昌平による人気漫画をドラマ化し、4月2日から配信が始まった『九条の大罪』(Netflix)で黒崎は、物語前半のキーマンとなる曽我部を演じている。この作品での黒崎の演技が各所で「影のMVP」と絶賛され、原作者・真鍋をして「曽我部にしか見えない」と言わしめるほどだ。
黒崎のスクリーンデビュー作となる『さよなら ほやマン』(2023年)のシゲルと『ブギウギ』の六郎、そして『九条の大罪』の曽我部は、いずれも知的機能に何らかの特性を持つ役どころだ。この3作を見比べてみると、より黒崎の演技の進化が伝わる。
『ブギウギ』六郎役・黒崎煌代はとんでもない俳優になる “生きている”演技の只者じゃなさ
「ワイな、寝るときに考えてまうねん。死ぬってどんな感じなんやろって。どないなって死ぬんか思うと、頭おかしなりそうになるんや」 …シゲルと六郎はひたすらその存在感が心に残ったのだが、曽我部を演じる黒崎は「押し引き」のテクニックがより洗練されていると感じる。薬物の「運び屋」を生業とし、反社との共依存に苦しむ曽我部の、自暴自棄の感情の中に一瞬宿る激しい怒り。「ピキッ」と音が聞こえてきそうな、それでいて抑制の効いた刹那の眼差しの切り替わりにゾッとする。
原作2話と同タイトルで、ドラマ版2話・3話の題目ともなっている「弱者の一分」という言葉が、黒崎が演じる曽我部を通じて観客の心に豪速球で飛び込んでくる。現代社会の歪みが生み出した悲劇を背負う役をやらせたら、黒崎の右に出るものはいないのではないかと感じさせるものがある。
在日外国人との共生と多様性を問うた『東京サラダボウル』(2025年/NHK総合)の5話「ティエンと進」で、進役としてエピソード主演をつとめた黒崎。進もまた、「現代日本のいびつさ」を体現する役だった。
パワハラがはびこる介護施設に勤める進は、ベトナム人技能実習生・ティエン(グエン・チュオン・カン)の教育係を任されていた。ティエンは進に親近感をおぼえ、2人は友達になる。しかし進は、ティエンに言われた「進さんはティエンと同じ」という言葉に引っかかりをおぼえ、それ以来、彼の中にある感情が芽生えはじめる。ときに人は不遇に直面した際、誰かを「下に見る」ことでアイデンティティを保とうとする。そんな人間の性(さが)と、愛憎相半ばする感情を、黒崎が見事に映し出していた。