永瀬廉が体現する“重め”な愛と圧倒的没入感 『鬼の花嫁』で切り拓いた新たな扉

 近年の永瀬のキャリアを振り返ると、その振り幅の広さには改めて驚かされる。ドラマ『東京タワー』(テレビ朝日系)やNetflix映画『余命一年の僕が、余命半年の君と出会った話。』では、生や死、そして愛に揺れる「等身大の若者」を、リアルな体温で演じきった。繊細な心の機微をこぼさないよう丁寧にすくい取る彼の芝居は、観客の共感を呼び、私たちの心を震わせた。

永瀬廉、『リブート』で漂わせる“違和感”の正体 悪役で見せた俳優としての新境地

“顔を変えて別人として生き直す”という設定によって、白熱した考察が繰り広げられている日曜劇場『リブート』(TBS系)。登場人物の…

 一方、直近で出演した日曜劇場『リブート』(TBS系)では、感情が読み取れない裏社会の実行役を演じ、これまでのイメージを鮮やかに裏切ってみせた。「組織の掃除屋」として冷徹に任務をこなすダークな立ち位置ながら、その裏では身寄りのない子供たちを助けるために動いているという、極めて複雑な二面性を持つ男。自らの信念のためなら冷酷な手段も厭わない危うさと、静かな威圧感をまとった佇まいは、俳優としての新たな扉を開いたといえるだろう。

 こうした多彩なキャリアで磨かれた表現力は、本作の玲夜というキャラクターの造形にも、確かな深みを与えている。特に印象的だったのは、玲夜が抱える「強さと孤独」、そのどちらも取りこぼさないバランス感覚にある。鬼一族の次期当主として、生まれた時から最強の存在であることを一人で背負う宿命にあった玲夜。永瀬は、他を寄せ付けない彼の冷徹な瞳が、柚子を捉えた瞬間から熱を帯びていく過程を、驚くほど繊細に体現してみせた。

 永瀬は池田千尋監督と丁寧なディスカッションを重ね、玲夜の愛の形を模索したという。そこで導き出されたのは、単なる優しさだけではない、どこか「重め」な独占欲をも思わせる愛の表現だ。(※)柚子に向ける熱のこもった眼差しと、敵に向ける冷徹な視線。その落差をわざとらしく強調するのではなく、一人の男の中に自然に同居するものとして成立させることで、玲夜という存在に単なる“理想の恋人像”に留まらない、多面的な奥行きが生まれた。

 彼が放つ唯一無二の空気感と、キャラクターの深層を捉える表現力。その二つが息をのむような映像美と重なり合ったとき、私たちは『鬼の花嫁』という甘美なファンタジーの世界に、ただただ酔いしれることとなる。永瀬廉がその身を呈して導き出す、この圧倒的な没入感を、ぜひ心ゆくまで堪能してほしい。

参照
※ https://www.instagram.com/p/DWu-7a8kZBV/?igsh=cHc4dHc0bWw2ZzI5

■公開情報
『鬼の花嫁』
全国公開中
出演:永瀬廉、吉川愛、伊藤健太郎、片岡凜、兵頭功海、白本彩奈、田辺桃子、谷原七音、嶋田久作、尾野真千子
監督:池田千尋
脚本:濱田真和
原作:『鬼の花嫁』クレハ著(スターツ出版文庫)、コミカライズ:作画・富樫じゅん/原作・クレハ(スターツ出版「noicomi」)
音楽:小山絵里奈
主題歌:King & Prince「Waltz for Lily」(ユニバーサル ミュージック)
イメージソング:由薫「Ray」(ユニバーサル ミュージック)
製作:「鬼の花嫁」製作委員会
配給:松竹
©2026「鬼の花嫁」製作委員会
公式サイト:https://movies.shochiku.co.jp/onihana/
公式X(旧Twitter):@onihanamovie
公式Instagram:@onihanamovie
公式TikTok:@onihanamovie

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