永瀬廉が体現する“重め”な愛と圧倒的没入感 『鬼の花嫁』で切り拓いた新たな扉
永瀬廉が、ファンタジーという独特な世界観のなかで、新たな魅力を開花させた。シリーズ累計580万部を突破したクレハによる大ヒット作を映像化した『鬼の花嫁』。舞台となるのは、人間とあやかしが共生し、その頂点に立つ「鬼」に見初められることが最大の栄誉とされる世界だ。この極めて非日常的な設定が光る物語のなかで、圧倒的な存在感を放っているのが、鬼一族の次期当主・鬼龍院玲夜を演じる永瀬廉である。
主人公の東雲柚子(吉川愛)は、妹の花梨(片岡凜)が妖狐・狐月瑶太(伊藤健太郎)の「花嫁」に選ばれたことで、家庭内での居場所を完全に失っていた。あやかしの花嫁になることは一族に繁栄をもたらす誇り高い出来事。両親の愛を独り占めし、周囲からも羨望の眼差しを向けられる花梨の陰で、何の力も持たない姉の柚子は、実の家族から家政婦同然に扱われ、孤独な日々を耐え忍んでいた。
ある日、瑶太とのトラブルに巻き込まれ、柚子は大けがを負ってしまう。そんな彼女の前に現れたのが、あやかしたちの頂点に君臨する鬼龍院玲夜だ。玲夜は、彼女が自身の「運命の花嫁」であることを確信すると、その霊力で柚子の傷を癒やす。孤独に耐えてきた少女と、最強の鬼。この出会いが、閉ざされていた柚子の人生を劇的に変えていく。
正直なところ、「鬼」というキャラクターを実写で表現するのは、俳優にとって非常に難易度が高い。一歩間違えれば、その浮世離れした設定がコスプレ感を生んでしまったり、豪華な映像の中で人物だけが浮いてしまったりと、チープな印象を与えかねないからだ。しかも、熱狂的なファンを持つ人気原作となれば、そのビジュアルや佇まいに対するプレッシャーは計り知れない。
しかし本作においては、そんな高い壁を、永瀬が持つ独特の空気感や佇まいが説得力をもって飛び越え、観客をスムーズに作品の世界観へと誘う大きな原動力となっている。彼がまとう浮世離れした透明感は、ファンタジー特有の非日常感を浮かせず、むしろ「鬼」という存在に気品と確かなリアリティを与えている。一歩間違えれば古風で危うい関係性に見えかねない「運命の花嫁」という設定を、現代の観客が憧れるラブストーリーへと昇華させたのも、まさにこの端正な佇まいがあってこそだ。
思えば、永瀬が俳優として大きな注目を集めるきっかけとなったのも、人気漫画の実写化作品だった。2020年公開の映画『弱虫ペダル』である。彼が演じたのは、本作の玲夜とは正反対のキャラクター、内気でアニメオタクの少年・小野田坂道。キラキラした目で大好きなアニメソングを口ずさむ、不器用だけど、ひたむきな少年だ。CGを一切使わずに過酷な傾斜をママチャリで激走するその姿は、普段、King & Princeとして活動する際の華やかさを完全に封印した、泥臭い熱量に満ちていた。その役作りは高く評価され、永瀬は第44回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞した。