INTO1としてアジアで大ブレイク、SANTAとは一体何者? ボーダーを越え続ける表現者の素顔

ステージで届ける相手がどんな人であるかは関係ない

ーー2021年には、中国のオーディション番組『創造営2021』への出演がきっかけで、アイドルグループ・INTO1として中国でデビューされました。これはどういう流れだったのでしょう?

SANTA:avexから話をもらったときは「やりたくないです」と言ったんですよ。WARPs UPはボーイズグループだけど、曲もイケていたし、ダンスもキャピキャピしたかわいい感じとは全く違ったので「それならやりたい」と思えました。とはいえ、まだ多少の抵抗がある時期だったので、大々的に“アイドル番組”を謳っているコンテンツに参加するのは、自分には違うんじゃないかなって。そのときは、ダンサーとして少しずつ認めてもらってきていた時期でした。それこそ「東京オリンピックの開幕式に、ソロで踊りませんか?」というお話をもらっていて。ほかにも大きな話をいただく機会が多い時期だったので、オーディション番組に参加するとアイドルのイメージがつき、ここまで積み上げたものを捨てる可能性がある。それは得策ではないと考えていたんです。

ーーそれでも参加することを決めた理由は?

SANTA:僕らが参加する前のシーズンを観ていて、最初は「アイドル番組だな」と思っていたんです。でも、1人だけクールでムスッとしている男の子がいて、めちゃくちゃドープなラップをしていたんです。しかも、その子がダントツで人気があって、センターを任されていた。それを見て「これなら自分もできる」と思ったんです。確かにアイドルはキラキラしたかわいいイメージがありますし、それを引き受けているプロの人は本当にすごい。でも、自分がかわいいことをやるのは抵抗があった。逆に、カッコいいダンスを認めてくれる土壌があるなら、やっていけるかもしれない――そう考えてチャレンジしました。

ーーINTO1時代を振り返って、印象に残っていることは?

SANTA:メンバー11人の個性が強くて、面白いチームだったんですよ。それぞれの得意不得意がハッキリしていて、性格も分かりやすくて。振り返ると、青春をしていたなって思います。誰かがしんどくなる時期もあったけど、そこで支え合えるのは一緒に生活している僕らメンバー。ありがたいことに、あのときは人気がすごすぎて、みんなで集合できることが少なくて。その分、撮影などで会えることが本当に嬉しかったです。それぞれ国籍が違うメンバー同士だけど、夢に向かって戦っている同志だからこそ、相手への感謝やリスペクトもある。表に見える部分とは別に、プライベートでも本当に支え合っていたなって思います。

ーー2023年にINTO1の活動を終えて、再び個人でステージに立つようになりました。どんな思いで新しいスタートを切ったのでしょう?

SANTA:結成した時点で、2年後には卒業することは決まっていたんです。最初から「卒業まであと○○日」みたいに言われていて。卒業ライブの時期は、僕個人はダンス番組のメンターをやらせてもらうなどして、卒業ライブも本当にバタバタでした。その前から自分のソロ曲を作ってはいましたが、「何日後にはソロになるぞ」と考える余裕もなく、気づいたらソロになっていた感じです。ジェットコースターのように目まぐるしい日々を過ごし、あっという間に約束の日が来て個人になったので、全然心の準備ができていなくて。INTO1の活動が終了して、しばらくしてから「本当にソロになったんだ」と実感が湧きましたね。グループとは何もかもが違うんですよ。ライブでは歌って踊ってを1人で全部やらなくちゃいけない。スタッフさんを含めて人との関係性も、今まではチームメイトが助けてくれていたし、中国メンバーが中国語で仲良くしてくれて、いろんな人を紹介してくれて。何か分からないことがあったら「これはどういうこと?」と聞ける人がいたけど、番組に1人で出ることが増えた。完全に自分一人でやらなければいけない、と後から感じました。

ーー今、日本で活躍を続けていく上で、SANTAさんのブランディングやアーティスト性、どんな楽曲を出していくかなど、その点についてはどう考えていますか?

SANTA:まず、自分は中国でデビューしたのもそうですけど、ダンスで世界一を獲った経歴も特殊ではあると思うので、僕が今までやってきたことを日本の皆さんに知っていただくのが、今の大きな課題ではあります。僕は中国で活動していたときもそうですし、ダンサー時代から、国籍、年齢、肌の色も違う人たちと言葉は通じなくても会話をしてきた。国や人種の垣根を越えて、人と人の関係を大事にしてきたんです。人間同士が分かりあうことに、言葉がいらないときもあるし、文化は違ってもお互いがいいと思えるものがある。それを日本に戻ってきた今、皆さんに伝えたいです。中国と日本を行き来しているアーティストって、そんなにいないと思いますし、僕だからできることはきっとあるだろうなって。

SANTA「大丈夫」MUSIC VIDEO

ーー3月11日に配信リリースされた「大丈夫」で、SANTAさんが「この曲を書いたのは2025年7月。否定されるより、可哀想だと思われる、その優しさの方が耐えられないという事を知りました。初めて誰にも言わずに地元に逃げました」とコメントをしていて。「逃げてきた」ってどういう意味だろうと思っていたんですけど、取材前にスタッフさんから事情をお聞きして腑に落ちました。何より、中国と日本で挑戦するSANTAさんだからこそ、書ける曲だなって。なかなか言及するのは難しいと思いますが、アーティストとして国境や国籍を超え、みんなの架け橋になれたら素敵ですよね。

SANTA:自分がステージで届ける相手がどんな人(国籍、年齢、性別とか)であるかは関係ないんです。表に出る仕事だから、いろんな影響を受けるのはある程度覚悟をしていました。中国や東京だって、賑やかなところもあれば、綺麗なところもいっぱいある。知らないから偏ったイメージを持ってしまう気がするんです。もっとたくさんの人に、双方の素敵な魅力を知ってもらいたい。そういう意味でも、自分が架け橋になれたらいいなと思います。

「宇野賛多」を保つための俳優業

ーーそんなSANTAさんは、音楽活動以外に俳優としての顔も持っています。演技はどういう位置付けですか?

SANTA:ダンス、音楽、演技と表現方法を持っている中で、僕にとって欠けると一番まずいと思ってるのは演技なんですよ。

ーーそれはどうして?

SANTA:自分の精神を保つためには、演技が必要なんです。ダンスは自分の生活に近いものだから、ほぼノンプレッシャーでやれるけど、体を使うので肉体的な疲労は伴う。音楽に関しては、自分を消費していくアウトプットの作業がとてつもなく多いので、精神がかなり削られるんですよね。今回の「大丈夫」は、歌詞を書きながらも気が滅入っていたし、何度も泣きながら書き上げていて。歌詞ができた後も人に送るまでに何日もかかり、「レコーディングしようね」と言われてからも時間を延ばして、自分の中で整理がついてからようやく歌えました。要するに、ダンスも音楽も、心や体を削る作業が多いんです。演技に関しては、役に入っている最中はほかの人間になっているわけじゃないですか? そこから自分に戻ってきたときに、「SANTAという人は恵まれているんだな」と毎回感じるんですよ。つまり、演技を通して自分を肯定してあげられる。だから、すごく大切な時間なんです。自分が俳優としてうまくいかなかったとしても、演技の仕事がなかったとしても、演技の練習は続けなきゃいけない。それは宇野賛多(SANTAの本名)を保つため、という感じですね。

ーー前にアーティストをしながら俳優もされている方にインタビューをしたとき、「別の人間を演じたことで、新しい視点が身についたんです。そして、第三者として自分を俯瞰して見たときに、初めて僕が何者なのかを知ることができた」とおっしゃっていて。SANTAさんのお話と通じると思いました。

SANTA:まさに、それが役作りで一番大切にしていることなんです。映画『Forgiveness -ワイズマンの孤独-』で演じさせてもらった主人公の聡太は、脚本家さんと話しながら僕と真逆の性格にしたんですよ。僕は家族とすごく仲がいいんですけど、聡太は家庭に問題があって、周囲の人との関係もよくない。作品を撮影している数ヶ月間、自分は聡太として生きていて、人と会話をしないからご飯が美味しくないんですよ。タイで撮影をしていたんですけど、人生で一番つまらないタイだったんです。それは“聡太だったから”つまらないんですよね。本来の自分は人の目を見て話すんですけど、聡太は俯いて会話をするから、床に落ちているものに意識が向くんです。それによって、僕になかった視点に気づくことができたり、自分が毎日ご飯を食べられること、いろんな人から「頑張ってね」と言ってもらえること、親や友達がいる環境のありがたさに、改めて気づけるんですよ。役を学ぶことは人として成長する、大事なプロセスになっています。

ーー現在は5月から上演される舞台『ナミヤ雑貨店の奇蹟』が控えています。これから稽古が始まるとのことですが、心境はいかがですか?

SANTA:東野圭吾さんの原作小説を読むと、僕が演じる幸平のことが知りたくてしょうがないんですよ。「幸平が一番最初に発した言葉は何だっけ?」と、すごい気になるんです。で、もう1回原作を読み直すじゃないですか。今度は敦也(葉山侑樹)のことも気になってきちゃって(笑)。全キャラクターに深みがあるし、小説を読むと「この人とこの人はこうだったんだ」と新しい発見がある。僕は細かいことも知りたい性格だから、時系列をバーっと書き出すんです。そうすると文中には書いていないんですけど「幸平って、この場所にいたんじゃない?」って気づきがあったりして。研究するほど奥が深くて、仕事ということを忘れて、この作品の虜になっています。

ーー稽古が楽しみですね。

SANTA:『ナミヤ雑貨店の奇蹟』は日本で舞台化も、映画化もされているんですよね。で、中国版の映画もあるんですよ。それぞれ違う監督さん、俳優さんがいろんな形で表現されていますが、本当にどれも素敵で。それって名作であり奥が深いから、味を変えても美味しく届けられるわけで。今回はどんな形になるのかワクワクもしますし、こういう舞台は初めてなのでとても緊張しています。

ーー今、SANTAさんが直近で叶えたい目標はなんでしょう?

SANTA:まずは有名になることです。有名になってからじゃないと、僕の届けたいことが伝わらないと思っているんです。「日本と中国の架け橋になりたい」と言いましたけど、それって大層な意味ではなくて。僕が好きなものを好きと言ってくれる人たちと、みんなで「中華料理食べようよ」「日本のラーメン面白いよ」みたいなことをしたいだけなんです。でも、それができるようにするためには、もっと中国で人気にならなきゃいけないし、日本でもたくさんの人に知ってもらわないといけない。有名になって初めて「みんなで楽しもう」と言えると思うので、まずそこですね。

ーー今日お話しいただいた中で、特に読者に届けたいのはどんな話題ですか?

SANTA:このタイミングで伝えたいことは「どうして日本に帰ってきたのか?」「日本で何をしたいのか?」を不思議に感じている方が多いと思うので、そこを伝えたいです。「大丈夫」の話に関連するところが特に大事ですね。

ーー一番はどちらの魅力も伝えて、お互いを結ぶきっかけになりたいと。

SANTA:それを叶えるために、今は日本でSANTAを広めたいと思っています。

■公演情報
舞台『東野圭吾シアターVol.2 ナミヤ雑貨店の奇蹟』
【東京公演】5月16日(土)~24日(日)サンシャイン劇場
【大阪公演】6月6日(土)・7日(日)COOL JAPAN PARK OSAKA TTホール
チケット:全席指定・税込 東京・大阪公演 9,500円
一般発売:4月8日(水)
※開場は開演の45分前
※未就学児入場不可
出演:葉山侑樹、土屋神葉、SANTA、濱岸ひより、関根翔太、三浦剛、渡邊安理、林貴子、澤田美紀、櫻井佑音、辻合直澄、多田直人、神保悟志
原作:東野圭吾『ナミヤ雑貨店の奇蹟』(角川文庫刊)
脚本・演出:成井豊
企画協力:株式会社KADOKAWA
主催・製作:TBS/ナッポスユナイテッド
公式サイト:https://napposunited.com/namiya2026

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