『ザ・ロイヤルファミリー』に込めた“覚悟”と“愛” 加藤章一P&塚原あゆ子監督が明かす秘話
妻夫木聡主演ドラマ『ザ・ロイヤルファミリー』(TBS系)が、4月10日にBlu-ray&DVDとなって帰ってくる。競馬の世界を舞台に描かれたのは、20年にわたる“継承”の物語。父から子へ、夢と誇りが受け継がれていく壮大なドラマは、多くの視聴者の心を揺さぶった。
一方で、その舞台裏にも思うように制作が進まない状況と、それでも前へ進もうとする人々の姿があった。加藤章一プロデューサーと塚原あゆ子監督が、コロナ禍による中断、未知の世界への挑戦、そして俳優陣との濃密な時間を振り返りながら、作品に込めた“覚悟”と“愛”を語る。(佐藤結衣)
思い通りにいかない馬たちを前に、何ができるのかを模索した日々
――加藤プロデューサーが原作小説と出会われたのは、2019年だったそうですね。
加藤章一(以下、加藤):知り合いの方から「面白い本がある」と紹介されたことがきっかけです。目を通してすぐに「これはドラマに向いている」と感じました。ただ、その後まもなくコロナ禍に入りまして。JRA(日本中央競馬会)さんとも企画について少しずつ話を進めていたのですが、「現状では難しい」という判断になり、一度中断することになりました。
塚原あゆ子(以下、塚原):当時は本当に大変な状況でしたね。加藤さんが『私の家政夫ナギサさん』(TBS系)、私が『MIU404』(TBS系)を担当していたのですが、それぞれ目の前の作品がどうなるのか見通しが立たず、必死に対応していた時期だったのを覚えています。
――そこから再び動き出したのは?
加藤:状況が落ち着きを取り戻し始めた2023年ごろです。TBSテレビの編成部に「もう一度企画を進められないか」と相談しました。その際、塚原監督にも改めて声をかけたんです。
塚原:そのときは『下剋上球児』(TBS系)という野球ドラマを手がけていました。高校野球について知識がなかったので、基礎から勉強している最中で。そこに競馬という新たな題材が加わることに、正直なところ「また勉強しなければ」という気持ちが強かったです(笑)。
――加藤プロデューサーは競馬についてはいかがでしたか?
加藤:実は私自身も、本作で初めて競馬に触れました。ドラマ化にあたっても「まずは日高だ」と、馬券の買い方を学ぶよりも先に北海道の牧場へと取材に向かっていました。
塚原:その分、助監督たちが作中に登場するオッズや馬券の設定など細かく作り込んでくれていましたね。現場ではキャストの皆さんが競馬に詳しくて、私が慣れない競馬用語を使ってみると「監督、そこはワイドですね」なんて教えていただくこともありました。
――本作では、馬券を購入しなくても楽しめる競馬の魅力が描かれています。
加藤:取材を重ねるなかで、競馬の魅力は「強さ」だけではないことがわかりました。勝敗に関わらず「走り方が印象的」「気性に個性がある」といった点に惹かれる方も多い。さらに、そうした資質が次の世代へと受け継がれていく点も、競馬ファンの関心を集める要素だと感じました。
塚原:その魅力をどのように映像として表現するかが、最も難しい部分でしたね。まずは馬の映像を徹底的に見て、どの角度であれば美しく、かつ印象的に映るのかを検証しました。また、ワイド撮影を取り入れることで、馬の表情や存在感をより近くに感じられるような工夫もしています。視聴者が自然に感情移入できる映像を模索し続けました。
――そのような模索が続くなかで、「すでに競馬シーンを撮ったことのある監督で」という案は出なかったのでしょうか?
加藤:振り返ってみると、ここまで競馬業界を連ドラで描くことそのものがほとんどなかったんです。時代劇で見かける騎馬戦シーンだと、もはやフルCGで描くことのほうが多くて。しかも、ああいったシーンは視聴者サイドも「フィクションだから」という前提で観ているので、たとえば人が馬から馬へ飛び乗ったとしても「そういうCGシーンだよね」と受け入れられると思うんです。ですが、日本の競馬場で走る馬やジョッキーは、現実にいる存在ですから観る方の目がより厳しくなりがち。だからこそ、全部CGで描くと厳しいことになるなと思い、実写でどこまでできるかを精査していくのが苦労した点です。
塚原:当然ながら、馬に対して「このレースシーンは、あなたが1着、あなたが2着ですので、そう走ってくださいね」と演出意図をそのまま伝えることはできません。思い通りにコントロールすることが難しいからこそ、馬に負担をかけない形でどこまでクオリティを高められるかを考えました。元気な状態のタイミングで素材を撮影し、それらを組み合わせていく方法を取っています。レースシーンでは、JRAさんから過去映像をお借りし、本作の馬の映像をCGで合成しました。序盤は素材が限られていましたが、撮影を重ねることで表現の幅も広がっていきました。
――近年はAI技術の発展もあり、映像加工の自由度も高まっている印象があります。
塚原:現時点では、まだまだ細かな部分は人の手による作業が中心です。CGチームも将来的な技術の進化には期待していますが、現場では一つひとつ丁寧に仕上げていく必要がありました。また、使おうと思っていたレース映像の大事な場面で、他の馬がカメラの前に割り込んできてしまうこともあり、CGルームからは馬主席のように「そこ、抜くな! 抜くな!」「そのまま行け!」なんて声が飛び交っていました(笑)。