宇野維正の映画興行分析

『嵐が丘』に続き『マーティ・シュプリーム』も 最先端の実写外国映画がヒットしない現状

 3月第3週の動員ランキングは、『映画ドラえもん 新・のび太の海底鬼岩城』が週末3日間で動員27万4600人、興収3億5700万円をあげて3週連続で1位。公開から17日間の累計動員は147万2100人、累計興収は18億9500万円。

 2位はディズニー配給、ピクサー・アニメーション・スタジオの最新作『私がビーバーになる時』。オープニング3日間の動員は26万5000人、興収は3億6500万円。前週、興収では『ウィキッド 永遠の約束』が『映画ドラえもん 新・のび太の海底鬼岩城』を上回って1位だったのと同様に、今回も興収では『私がビーバーになる時』が『映画ドラえもん 新・のび太の海底鬼岩城』を上回って1位。『インサイド・ヘッド2』(2024年8月日本公開)のようなシリーズ作品を除いて、コロナ禍以降のピクサー作品の日本での興行はかつての安定感を失っていたが、今作は最終興収27億円の『マイ・エレメント』(2023年8月公開)クラスのヒットは見込めそうだ。

 今回は、先月公開の『嵐が丘』に続いて、公開初週にトップ10入りを逃した外国映画、『マーティ・シュプリーム 世界をつかめ』を取り上げたい。主演男優賞受賞が有力視されていたティモシー・シャラメは惜しくも受賞を逃したが、今週月曜(日本時間)に授賞式を終えたばかりのアカデミー賞でも9部門にノミネートされていた同作のオープニング3日間の動員は4万100人、興収は6000万円。

 『嵐が丘』も『マーティ・シュプリーム 世界をつかめ』も公開スクリーン数や上映回数の時点でそこまで高い期待をされていなかったという見方もあるが、それにしても前者は現時点で世界興収2億2700万ドル、後者は現時点でA24作品の歴代記録を大きく塗り替える世界興収1億8000万ドルを稼いでいるヒット作。特に『マーティ・シュプリーム 世界をつかめ』は海外で大きな話題になった後、主演のティモシー・シャラメと監督のジョシュ・サフディがプロモーションで来日、アカデミー賞授賞式直前のタイミングで日本公開と、万全の体制での公開だっただけに拍子抜けと言えるだろう。

 前週興収では1位スタートの『ウィキッド 永遠の約束』や、公開前から大ヒットの機運が高まっている今週末公開の『プロジェクト・ヘイル・メアリー』などからもわかるように、必ずしも実写外国映画すべてがヒットしなくなっているわけではない。『マーティ・シュプリーム 世界をつかめ』に関しては、都内などの一部の都市圏の劇場は賑わっているという情報もある。しかし、特に実写外国映画においては、ごく一部のヒット作(それも年々減っている)とそれ以外の作品の動員差、都市部と地方の動員差がますます開いているのが現状だ。

 近年、上映権料の安さもあって、90年代や00年代に日本の若者の間で流行った実写外国映画のリバイバル上映が盛んにおこなわれている。それらの興行を支えている観客には、当時を懐かしむ世代ばかりではなく、若い世代も多い。しかし、もし映画館ビジネスがこのまま続いていたとしても、20年後には「当時若者の間で流行った実写外国映画」という概念そのものが日本では消えているかもしれない。

■公開情報
『マーティ・シュプリーム 世界をつかめ』
TOHOシネマズ 日比谷ほかにて公開中
出演:ティモシー・シャラメ、グウィネス・パルトロウ、オデッサ・アザイオン、ケビン・オレアリー、タイラー・オコンマ(タイラー・ザ・クリエイター)
監督・脚本:ジョシュ・サフディ
配給:ハピネットファントム・スタジオ
2025年/アメリカ/英語/149分/原題:Marty Supreme/レイティング:G
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公式サイト:happinet-phantom.com/martysupreme/
公式X(旧Twitter):@martysupreme_jp

『今週の映画ランキング』(興行通信社):https://www.kogyotsushin.com/archives/weekend/

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