『ザ・クロウ』ビル・スカルスガルドの凄み ハリウッドとは思えない残酷描写と復讐の果て

 結論から書くと、どんな天才たちが結集しても『クロウ/飛翔伝説』(1994年)を超えることは不可能だ。1990年代当時の空気感、才能が結集した撮影現場、そして主演俳優の死という二度とあってはいけない悲劇。これらが混然一体となって『クロウ』という1本の映画を成立させている。ゆえに『クロウ』のリメイクは、「オリジナルをどう超えるか?」ではなく、「どこまでオリジナルに近づけるか?」になる。オリジナル以上のものは作れないし、作れたとしたら、それはブランドン・リーの死のような悲劇が起きた、ということだ。そういう意味では、オリジナルと同じものが出来てしまってはいけない、ともいえるかもしれない。

映画『ザ・クロウ』予告編

 しかし、現在でも『クロウ』は世界中で愛され続けている。恋人を殺された男が、カラス(クロウ)の持つ超自然的な力によって不死身の肉体を得て蘇る。復讐の天使と化した男は、自身と恋人を殺した悪党どもを皆殺しにしていく。単純明快だが、それゆえにいつの時代でも求められ、観る者の心を震わせる。普遍性があるゆえに、新しい技術と才能で、その物語が再び描かれてほしいと思うのも、また当然のことであるし、実際これまで様々な形で『クロウ』のリメイクが作られてきた。その結果は……まぁ、置いておくとして、では今回ご紹介する最新作『ザ・クロウ』(2024年)は、どのようにオリジナルに挑戦して、どこまで近づくことができたのか?

 あらすじはオリジナル通りである。ただし舞台はどこかファンタジー世界のように見えたオリジナルとは違い、リアルで現代的なアメリカだ(ついでにいうと、明確に死後の世界も描かれる)。主演は『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』(2017年)でペニーワイズを演じ、肉体を使った表現に高い評価のあるビル・スカルスガルド。「その筋肉でチンピラのアンちゃんは無理だろう」と言いたくなるような、バッキバキに仕上がった肉体を披露している。ブランドン・リーにも近い、セクシーさと危うさを併せ持つビジュアルは、新世紀のクロウ役としては100点満点だといっていいだろう。

 そして本作最大のポイントは、思い切ったエモと残酷である。映画は前半に時間をたっぷり使って、クロウとなるエリック(ビル・スカルスガルド)と、その恋人シェリー(FKAツイッグス)の出会いと幸福な日々を描く。厚生施設での出会い、手を取り合っての旅路、「ただ2人でいられるなら、それだけでいい」そんな無軌道で無目的な生活。……まるでここだけ別の映画のように、エモーショナルに2人の日々が綴られていく。これは今までありそうでなかったアプローチだ。

関連記事