実写版『ゴールデンカムイ』が支持された理由とは 原作ファン太鼓判の名シーンを一挙紹介

 最初に『ゴールデンカムイ』の実写化が発表されたときは、期待半分、不安半分というのが正直なところだった。だが蓋を開けてみれば、その心配はいい意味で裏切られた。映画とドラマを組み合わせた珍しい構成で、映画は興収29.6億円を積み上げ、WOWOWドラマもオンデマンドのオリジナルドラマ部門で年間視聴者数1位を獲得。豪華キャストが揃っていたとしても、中身が伴っていなければこうはならないだろう。

 『ゴールデンカムイ』はそもそも実写との相性が良い要素が多いように思う。明治末期の北海道を舞台に描かれる、泥と血と雪のサバイバル。手織りのアイヌ衣装や銃剣など、カメラの前に「本物」を置けるシーンが多く、小道具の質感がそのまま画面の説得力になる要素も多く、実写の画面でちゃんと“金カム”の物語が立ち上がっていた。日本テレビ系『金曜ロードショー』にて、『ゴールデンカムイ』とドラマ『ゴールデンカムイ 北海道刺青囚人争奪編』特別編集版の2週連続放送、そして3月13日には映画第2弾『ゴールデンカムイ 網走監獄襲撃編』の公開も控えるいま、映画とドラマの“実写版名シーン”をあわせて振り返っておきたい。

二〇三高地のアクション

映画『ゴールデンカムイ』予告①【2024年1月19日(金)公開ッ‼】

 映画は杉元佐一が二〇三高地で銃剣を振るう場面から始まる。塹壕に密集した兵士たちが爆風で吹き飛ばされ、泥と血の中を杉元が叫びながら突っ込んでいく。すべての始まりであるこの戦いが、実写のスケールで再現されたインパクトは凄まじかった。

 久保茂昭監督によれば、「二〇三高地」パートを原作からまとめたら原作の1巻分くらいになり、当初4日間のこのパートの撮影予定が、こだわりの末に10日間まで延びたという(※1)。あの過酷な冒頭5分があるからこそ、実写でも以降の杉元の行動に「あの戦場を生き延びた男」としての説得力が生まれているように思う。

 そしてここで伝わってくるのは、杉元がまだ戦場の時間から抜けきれていないということだ。以降の強さも、ただの豪快なキャラとしてだけではなく、極限の環境を生き延びた人間であることが際立ってくる。冒頭のこのシーンのリアリティがあるからこそ、物語の見え方は大きく変わるのではないだろうか。

ヒグマ遭遇からチタタプシーン

 杉元は後藤の遺体を運んでいる最中にヒグマに襲われ、アシリパの毒矢に救われる。その時に仕留めたヒグマを解体し、チタタプを作って食べるまでの一連のシーンも素晴らしい。

 実写ではまず、ヒグマが立ち上がった瞬間の巨体が圧倒的だ。CGの設計としては、筋肉や肉感の動きを表現するために筋肉シミュレーションを導入し、動きに対して肉の揺れや重さが破綻しないよう設計しているとのこと(※2)。こうした動物CGは一歩間違えるとチープにも見えかねないが、本作のヒグマは存在感が凄まじく、森でうっかり出会ってしまったときの恐怖もありありと想像できる。

 もうひとつ大事なのは、この場面で「食」が、命をいただく行為として実感を伴って描かれるところだ。以後の「ヒンナヒンナ」が軽い掛け声にならないのは、この場面で食べることの重みが身体的に伝わってくるからだろう。原作でこの場面を読んだとき、多くの読者が「金カムってこういうことも描く漫画なんだ」と思ったのではないだろうか。

 命のやり取りの直後に、獲物をさばいて食べる。アクションバトルだけではない作品の多面性がこの数話に凝縮されている。ちなみに解体シーンでは、アシリパが両手を上に向けて祈る「オンカミ(礼拝)」の所作がオリジナルとして追加されている。

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