松田龍平が語る“受け身”の美学と変化 40代を迎え意識し始めた“自分の楽しさ”

 俳優として数々の名監督に愛され、独自の存在感を放ち続けてきた松田龍平が、金曜ナイトドラマ『探偵さん、リュック開いてますよ』でテレビ朝日ドラマ初主演を務めている。本作で彼が演じるのは、タイトル通りどこか抜けた、しかし得体の知れない魅力を持つ探偵兼発明家の一ノ瀬洋輔。企画段階から参加した本作で探偵役に挑んだ背景や3度目のタッグとなる沖田修一監督とのやりとりについて聞いた。

「受け皿のようなものを意識できたのは大きな収穫」

ーー沖田監督との対談動画(※)で「やりたいことがない」とおっしゃっていたのが印象的でした。これまで数々の名作に出演されてきた松田さんですが、常に“受け身”の姿勢でお仕事に向き合ってこられたのでしょうか。

松田龍平(以下、松田):役者という仕事を考えると、それでいいのかなと思っています。まっさらの状態から「自分が何かを描きたい」という欲求は、僕の中にはそこまで強くはないんです。これまで素晴らしい才能を持った監督たちと仕事をする中で、「自分には到底こんな発想はないな」と驚かされることばかりでした。その中で、僕自身のやりたいことも十分に果たされてきたという感覚があります。

ーー自分で発信するよりも、誰かの世界観に飛び込むことに自信を持っていた?

松田:自信というよりは、信頼ですね。ただ、年齢を重ねる中で、だんだん「自分がどうしたいか」を考えることも重要なんじゃないか、と感じるようにもなりました。若い頃は感覚だけでやれていたことが、だんだん頭でっかちになってきて、一度思考を挟まないと感覚を呼び起こせなくなってきたというか。

ーー今回の企画は、ご自身の中でもタイミングが良かったのですね。

松田:はい。ちょうど「自分の楽しいことは何だろう」と再確認したい時期にいただいたお話だったので、すごくありがたかったです。

ーー実際に現場に入ってみて、何か新しい感情や思考は芽生えましたか?

松田:毎回余裕がなくなってしまう自分を、もう少し“大きな皿”で受け止めたいな、と思うようになりました。仕事をする上で、余裕がない、慌てているという状態も、それを包み込む大きな受け皿があれば一つの“表現”として楽しめる。でも皿がないと、ただ余裕がないだけで終わってしまう。今回、沖田さんと一緒に作っていく中で、その受け皿のようなものを意識できたのは大きな収穫でした。

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