『探偵さん、リュック開いてますよ』の“抜け感”が心地良い 松田龍平、夏帆ら配役の妙
松田龍平主演の金曜ナイトドラマ『探偵さん、リュック開いてますよ』(テレビ朝日系)が面白い。“探偵もの”ということもあり、ミステリー要素も含まれているのだが、ゆるっとふわっと楽しむことができる。この程よい抜け感が、1週間の疲れが溜まった金曜日の夜にぴったりなのだ。
物語の舞台は、小さな田舎町・西ケ谷温泉。都会のスピードに慣れてしまったわたしからすると、この町は時間がゆっくりと流れているような気がする。その癒しの空気があるからこそ、ミステリー要素も重くなりすぎない。まるで温泉に浸かっているかのように、じんわりと心の芯までほぐされていく感覚になる。
そして、この“抜け感”を表現する上で大きな役割を果たしているのが、主演の松田だ。松田が演じている一ノ瀬洋輔は、失踪した父の後を継いで探偵業を営みながら、発明に力を注いでいる……という少し変わった男である。人と会話をするとき、返事がワンテンポ遅い。質問に対して、まっすぐに答えない。急に一点を見つめたまま静止したりする。まるで、彼だけが別の時間軸を生きているかのようだ。
「もしかして、時空が歪んでる?」なんてツッコミを入れたくなるような違和感を、松田はごく自然に体現している。そして、そのズレが不快ではなく、むしろ心地いいのが面白い。松田龍平という俳優の体温が、そのまま一ノ瀬というキャラクターにスッと重なっているようにも思える。
だから、このドラマの抜け感はあざとく見えないのかもしれない。計算されたゆるさではなく、自然と生まれた余白を活かしているからだろうか。松田を主役に据えたことこそが、この作品のトーンを決定づけた最大の配役の妙なのだろう。
洋輔を取り巻くキャラクター陣の配役もまた、実に秀逸だ。松田の“静”を引き立てるように、周囲にはそれぞれ異なる色を持つ俳優たちが配置されている。たとえば、洋輔の中学時代からの親友・清水としのりは、お調子者で適当すぎる性格をしている。時に(というか、よく?)トラブルを引き起こすのだが、演じているのが大倉孝二だからこそ「もう、仕方ないなぁ」と許せてしまう。