『ばけばけ』『冬のなんかさ、春のなんかね』など “密室劇”が2026年ドラマのトレンド?

 今クールのテレビドラマは、密室感のある作品が印象に残る。

 ここで言う密室感とは、部屋の中で俳優が芝居をするシーンが多いドラマのこと。たとえば、2025年のクリスマス(12月24日)にFODで全4話一挙配信され、1月から日曜23時15分から毎週放送された『嘘が嘘で嘘は嘘だ』(フジテレビ系)は、クリスマスの夜に居酒屋で1人の女と3人の男が対話をする姿を描いたドラマだが、居酒屋に舞台が限定された、ある種の密室劇となっている。

『嘘が嘘で嘘は嘘だ』©︎フジテレビ

 本作は、『silent』(フジテレビ系)、『いちばんすきな花』(フジテレビ系)、『海のはじまり』(フジテレビ系)といった連続ドラマの脚本家として知られる生方美久の最新作だが、面白いのは会話の内容で、表向きはある事件について話しているようだが、前面に打ち出されているのが「嘘」というテーマで、登場人物のほとんどが嘘をついているため、4人のやりとり自体が「嘘」とは何なのかと問いかける内容となっていた。

 元々、生方美久の作品は、1シーンが長く、俳優の芝居を丁寧に見せることに定評があった。今回はそれを居酒屋という1シーンで描いているのだが、密室で4人が延々と話し続ける姿に異様な迫力を感じ、圧倒された。

 『嘘が嘘で嘘は嘘だ』ほど極端でなくとも、部屋の中で役者の芝居を丁寧に見せる深夜ドラマを観ていると「密室劇のようだ」と感じることが多い。

 今クールで言うと『キンパとおにぎり~恋するふたりは似ていてちがう』(テレ東系)がそうだ。

 本作は小料理屋でアルバイトをしている青年・長谷大河(赤楚衛二)と日本に留学中のパク・リン(カン・ヘウォン)が、食事を通じて仲良くなっていく姿を描いたラブストーリー。

 劇中では大河とリンの二人芝居が多いのだが、外を歩いているシーンであっても、二人のやりとりを観ていると密室劇のようだと感じる。

『キンパとおにぎり』©「キンパとおにぎり」製作委員会

 思うに密室感は、部屋の中にいるという空間的な状況以上に、その世界に二人しかいないかのような心理的状態に強く表れるのだろう。だから二人芝居を丁寧に描く作品を見ていると、心理的な意味で密室劇だと感じる。

 そんな密室感を初めて強く意識したのは、本作で主演を務める赤楚衛二の出世作となった2020年の深夜ドラマ『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』(テレ東系/以下、『チェリまほ』)だった。

 本作は人の心の声が聞こえるようになったサラリーマンの安達清(赤楚衛二)と同期の黒沢優一(町田啓太)のラブストーリーで、劇中では二人芝居が多い。

 生方美久の『silent』と『海のはじまり』でチーフ演出を務めた風間太樹が監督として参加していたため、『silent』などで展開された二人の芝居をじっくり見せる演出は『チェリまほ』から広がったとも言えるだろう。その意味でも、今の密室感のあるドラマの先駆けとなった作品である。

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