『ばけばけ』“あっち側”の人間になってしまったトキ 大衆の関心は100年経っても変わらない
『ばけばけ』(NHK総合)第77話が1月20日に放送された。
松江新報に記事が掲載されたことで、トキ(髙石あかり)と同居の家族は、一躍松江の有名人になった。
梶谷(岩崎う大)が執筆する『ヘブン先生日録』の第1回は、ヘブン(トミー・バストウ)の日本滞在記の完成祝いの様子を報じていた。トキの「ステーキは素敵」というコメントが見出しになり、親しみやすい内容が人々にウケたようだ。街へ出ると声をかけられ、周囲に人垣ができる。
ついこの間まで貧乏長屋で肩を寄せ合って暮らしていたのが、にわかに脚光を浴びて、トキは戸惑う。そんなトキたちに、ヘブンは「ヒト、ジロジロ、イツモノコトデス」と話す。“イジン”、“ヘブン”と名指しされることのストレスは、ヘブンが日本に来て以来、感じていたものだった。あらためて、ヘブンの苦労を知るトキたちであった。
「憧れの素敵な家族」とされることは、今で言うと、皇室や大谷翔平夫妻の動静をメディアで扱うようなものだろうか。人間の興味関心は、100年たっても変わらないと感じる。
境遇の激変に戸惑っていたのはトキたちだけではなかった。第74話で、サワ(円井わん)は、川向こうにあるトキの新居を訪ねるが、玄関に飾られた生け花を目にして、摘んできた花を捨てる。別世界の住人になってしまった親友に、どんな言葉をかけていいかわからない心境が伝わってきた。
天国町に暮らすサワとナミ(さとうほなみ)からすると、トキは「もうすっかりあっち側の人間」で、愚痴をこぼし、うらめしさを慰め合いながら、どうにかその日その日を生きていた日々は遠い記憶のかなただ。貧乏を脱出するために「身を売るか、男と一緒になるしかない」が持論のナミに対して、サワは「自分の力でここを出るけん」と、教員試験に合格して正規の教員になることを誓う。
トキの境遇の変化は、誰もやりたがらなかった(または、先方から断られた)ヘブンの女中を務めたことから関係が発展しており、単純に運が良かっただけではない。女中づとめをしたのも実家と雨清水家の家計を支えることが目的だった。松江の人々がそのことを知ったら、人々の見る目も単なる好奇から尊敬に変わるかもしれない。
周囲の喧騒にもかかわらず、英語を学んだり、散歩中に一緒に地蔵に手を合わせるなど、トキとヘブンは夫婦の時間を楽しんでいる。平穏な日常が多幸感を醸し出すのも、今作ならではだ。
■放送情報
2025年度後期 NHK連続テレビ小説『ばけばけ』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:髙石あかり、トミー・バストウ、吉沢亮、岡部たかし、池脇千鶴、小日向文世、寛一郎、円井わん、さとうほなみ、佐野史郎、北川景子、シャーロット・ケイト・フォックス
作:ふじきみつ彦
音楽:牛尾憲輔
主題歌:ハンバート ハンバート「笑ったり転んだり」
制作統括:橋爪國臣
プロデューサー:田島彰洋、鈴木航、田中陽児、川野秀昭
演出:村橋直樹、泉並敬眞、松岡一史
写真提供=NHK