『ばけばけ』の“かわいさ”を体現するトミー・バストウ 人と文化を愛することの尊さ

「行くぞ! 待っちょれ、川のあっち側」

 勇ましいトキ(髙石あかり)の声。トキとヘブン(トミー・バストウ)が結婚し、川の向こうの豪奢な武家屋敷に引っ越した。朝ドラことNHK連続テレビ小説『ばけばけ』。新年最初の週は第15週「マツノケ、ヤリカタ。」ではいよいよ日本と異国の生活の違いが浮き彫りになり、あんなに気が合ったトキとヘブンにすれ違いが生じる。

 引っ越し後はトキとヘブンと司之介(岡部たかし)とフミ(池脇千鶴)が同居。勘右衛門(小日向文世)はどこへ。彼はタツ(朝加真由美)と結婚して別に所帯を持つことになった。勘右衛門の家もヘブンがお金を払って、すべて支度を整えたそうで、女中の給金20円を失っても、逆にもっと多くの恩恵を被ることになったのだ。

 明治維新から長い年月、貧しい暮らしを余儀なくされていた松野家の人々がようやく豊かな暮らしに戻れた。広く清潔感のある家で、庭も広い。食料もいくらでも買えるので、はじめての朝ごはんは、フミがはりきって何品もおかずを作る。料理の腕も鳴ったことだろう。作り方を忘れていたりはしないものだろうか。だが、ここでトキがこれまで料理を作っていなかったことがわかる。確かに食事は花田旅館から取り寄せていたが……。女中の仕事には料理が含まれていなかったとは、それで20円とは、なかなかトキはラッキーである。

 トキが女中として行っていたのは、魚の小骨とり。でも、ヘブンは女中にさせる仕事を妻のトキにはさせない。これからは自分で小骨をとることにする。

 小骨とり以外も、ヘブンは郷に入っては郷に従えとばかりに「日本 やり方、松野家 やり方いきましょう」と異国の作法を受け入れる気満々だ。もともと日本が大好きなヘブンだから、日本のやり方を身につけるのは願ってもないことであろう。

 だが彼のその日本贔屓が梶谷(岩崎う大)によって新聞に書き立てられたことで状況が変わる。正座もできるし、小骨もとる稀有な外国人として注目を浴び、日夜、近隣の人たちが彼を見に来るようになった。完全に見せ物で、傍から見たらちょっと失礼な態度だと思うのだが、ヘブンは怒らず受け入れている。……と思いきや、やっぱりストレスが溜まっていた。

 ヘブンは寄り道をするようになり、トキは浮気を疑う。頬に赤いものがついているとか、なかなかベタな浮気疑惑ではあるが、ヘブンがこっそり食べていた西洋料理をトキがはじめて食して、ナイフとフォークの使い方を知るという流れや、トキが拒んだ西洋式の挨拶・キスを受け入れることなど、異文化コミュニケーションがほのぼの愉快に活写された。

 皮肉めいているのは、ヘブンが「建前」という日本独特の作法まで身につけてしまっていたことだ。第14週でさんざん、トキの嘘に怒っていた彼が、第15週では自ら嘘をついている。錦織(吉沢亮)と毎日教育について熱い議論を戦わせているため帰宅が遅くなると嘘をついて、こっそり西洋料理を食していたのだ。

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