2025年の年間ベスト企画
アナイス(ANAIS)の「2025年 年間ベストアニメTOP10」 “熱”ほとばしるTVシリーズが充実
リアルサウンド映画部のレギュラー執筆陣が、年末まで日替わりで発表する2025年の年間ベスト企画。映画、国内ドラマ、海外ドラマ、アニメの4つのカテゴリーに分け、アニメの場合は、劇場公開・放送・配信されたアニメーション作品から、執筆者が独自の観点で10作品をセレクトする。第16回の選者は、映画コラムニストのアナイス(ANAIS)。(編集部)
1.『僕のヒーローアカデミア FINAL SEASON』
2.『光が死んだ夏』
3.『全修。』
4.『メダリスト』
5.『九龍ジェネリックロマンス』
6.『タコピーの原罪』
7.『その着せ替え人形は恋をする』Season2
8.『ガチアクタ』
9.『ダンダダン』第2期
10.『真・侍伝 YAIBA』
2025年も気がつけばベスト10を選定する時期になってしまった。例年までは映画作品を交えてのランキングだったが、今年はあえて地上波で放送された作品のみで選出した。劇場の盛り上がりや興収を支える上で、年々アニメ映画の存在が大きくなるのを感じる中、2025年はもちろんその前提で、しかし個人的には地上波放送のアニメ作品が持つ“力強さ”に心打たれ、夢中になり、救われた年だった。
『真・侍伝 YAIBA』は1993年版を再解釈し、舞台を令和の現代に移したリメイク作。原作者・青山剛昌の大ファンであるが故に本作も楽しみにしていたのだが、とにかく第1話からアクションシーンの作り込みに圧倒されるばかり。ストーリーは令和アレンジされているとはいえ、あえて言うなら古き良きシンプルな物語だ。しかし、複雑だったり、ショッキングだったりする展開の作品が溢れる今だからこそ、そのシンプルさが光輝く。子供の頃に観ていたようなアニメを大人がワクワクしてまた観られる作品としての最適解を打ち出したと思う。平成女児の精神を取り戻させてもらった。
演出の面白さといえば、やはり『ダンダダン』だ。第2期も相変わらず素晴らしい映像表現で、中でも邪視の“怨念ボール”を蹴るモーションが凄まじく、圧巻の作画だった。小野不由美の小説『残穢』を彷彿とさせるような、土地に染み込む呪いとその背景を描くシーンでは、邪視の過去を理解しようと努めるジジの善意と相まって、悲壮感と気味の悪さが非常にいいバランスで描かれていた。原作ものながら「Hunting Soul」や大仏ロボットの連結シーンなど、映像で観ることでさらに新しいものが楽しめる、そんな引き出しが『ダンダダン』は多い。
同じく第2期作品としていい意味で驚かされたのが『その着せ替え人形は恋をする』 Season2だ。コスプレを中心にオタク文化への解説的視点を持ちつつ、主人公の喜多川海夢と五条新菜の恋のはじまりを描いた第1期。第2期はそれに加え、キャラクターデベロップメント重視の深いストーリー展開に心動かされる。特に天野千歳を軸に描かれた「好きに性別は関係ない」というメッセージや、五条と周囲の関係性の変化を通して伝える力強い物語はもちろん、感情の機微を感じさせる映像クオリティの高さが印象的だった。
“力強い”といえば、『ガチアクタ』も忘れられない。あそこまで一貫して純粋な“怒り”を原動力にしている主人公も珍しく、個人的には「人間が長い間心を込めて使用したとき、その物に思念が宿る」という設定にワクワクした。また、令和の作品でありながら場所と場所の移動など作品の中に流れる時間を描く丁寧さが、いい意味でどこか平成アニメを思わせる。貧困化や経済格差が世界的に進んでいく今だからこそ、主人公ルドをはじめとする登場人物の感情に寄り添える作品に感じた。
そして“寄り添う”といえば、『タコピーの原罪』。映像化によって音や動作がつくことで第1話の“あの”シーンやいじめの描写の壮絶さが浮き彫りになる。最終話は声優陣の演技が凄まじく、ただただ泣かされてしまった。理解し合えなくても、別にいい。問題を解決してほしいわけでもないし、できなくてもいい。違うもの同士で分かり合えなくても手を握らなくても、ただ隣にいて寄り添うことで分かち合える温もりがあるのだと。その温もりが、人の命を救うのだと。そんなメッセージが何でも理解しようとしてしまう、問題は解決したほうがいいと思ってしまう自分にとって、静かに胸に刺さった。