芦田愛菜、役所広司の迫力で入った“復讐のスイッチ” 『果てしなきスカーレット』対談
細田守監督の最新作『果てしなきスカーレット』は、国王である父を殺した敵への復讐を心に誓う王女・スカーレットが、“死者の国”で現代からやってきた看護師の青年・聖と運命的な出会いを果たし、彼への信頼をもとに心を動かされ変化していく物語だ。細田監督作品史上初となる“中世の王女”の主人公・スカーレットを演じたのは芦田愛菜。彼女の復讐相手であるクローディアスを4作続けての細田監督作品出演となった役所広司が演じている。本作が初共演となった芦田と役所に、役作りやお互いの印象について話を聞いた。
『果てしなきスカーレット』プレスコ収録の舞台裏
ーーまずはオファーがあったときの心境を聞かせてください。
芦田愛菜(以下、芦田):幼いころから細田監督の作品に触れてきたので、お話をいただいたときは純粋に嬉しかったです。その一方で、『果てしなきスカーレット』はとても深いメッセージが込められている作品なので、「きちんと伝えられるのか?」という不安もありました。
役所広司(以下、役所):僕も、細田監督の作品のファンですから、今回も声をかけていただけて嬉しかったです。
ーー役所さんは4作目の細田監督作品出演となりましたが、今回は初めてプレスコ(先に音声を収録して、あとから映像を制作する手法)での収録だったそうですね。
役所:そうなんです。僕は声優ではないので、絵にセリフを合わせていくのが難しくて……。いつも、キューランプを待っているときにドキドキしていたんです(笑)。でも、今回は違ったので、すごくリラックスして収録に臨むことができました。
ーー芦田さんはいかがでしたか?
芦田:本当にのびのびと演じさせていただけて、ありがたかったです。私はプレスコで演じたあと、アフレコもさせていただいたんです。その2段階を経たことで、スカーレットというキャラクターをより深く理解できたかなと思います。
ーー完成した映像をご覧になったときの感想は?
芦田:もう、大迫力でした……! 舞台となる“死者の国”は、一面に荒野が広がっていて寂しい雰囲気なのに、どこか美しさがあるんです。そのアンバランスさがとても魅力的でした。
役所:声を入れているとき、シェイクスピアの『ハムレット』を土台にしているというのはなんとなくイメージしていました。でも、まさか映像がこんな感じになるとはまったく想像していなかったです。まさに、想像を超える作品に仕上がっていました。毎回、細田さんの絵コンテをもらっているんですけど、今回はもらえなかったので残念でした。すごく美しいんですよ、細かくて。
芦田:……実は、絵コンテいただきました(笑)。
役所:えー!
芦田:おっしゃるとおり、すごく素敵でした。2Dなのに躍動感が伝わってきて。不思議だな……と。
ーー復讐を果たすために“死者の国”を旅する王女・スカーレットと、スカーレットの叔父であり冷酷非道な国王・クローディアス。それぞれどのように役づくりをされましたか?
役所:舞台で『ハムレット』の中のレアティーズ役を演じたことがあったので、物語のイメージはしやすかったです。ただ、クローディアスというのは複雑な役柄でしたね。台本を読んでいるときにはイメージが湧かなかったけど、声を吹き込んでいくうちに、どんどんキャラクターを掴んでいった感じです。
芦田:私は、スカーレットの“二面性”を意識しました。たくましくてカッコいい女性に見える一方で、19歳の女の子ならではの、誰かにすがりたくなる気持ちや脆さも持っている。その両面を丁寧に演じ分けることで、人間らしさが立ち上がるのではないかと思いました。