『ぼくたちん家』手越祐也の演技に絶賛の声 7年ぶりの連ドラで示した落ち着きと貫禄
ドラマ『ぼくたちん家』(日本テレビ系)で、手越祐也が7年ぶりに連続ドラマへ復帰した。
手越が演じるのは、中学校教師であり、人生への達観と孤独を抱えたゲイの男性・作田索。明るく華やかなパブリックイメージが強い手越が、静けさと陰影をまとったキャラクターをどう体現するのかという点で多くの視聴者の関心を集めていたが、いざ蓋を開けてみると、まさかあの“手越くん”だとはどうしても思えなかったのだ。
『ぼくたちん家』は、年齢も背景も異なる2人の男性の家族未満の関係を描く物語だ。作品が真正面から扱っているのは「この社会で、どう生きるか」。その視点を支えているのが、索というキャラクターの生活のリアルさである。生い立ちは複雑で、人生を斜めから見つめる癖がある。それでいて、どこか優しさがこぼれてしまう瞬間がある。その屈折と柔らかさをどう一人の人間として存在させるかという点は俳優の力量が問われる部分だろう。
けれど、手越の演技は、その心配をあっさりと払拭してくれた。最初の登場シーンで静かに台詞を発した瞬間、これまでのイメージとはまるで違う“落ち着き”が空気を変える。声は低めに抑えられ、語尾も丁寧に着地する。視線は無駄に揺れず、身振りも必要最小限。派手さを封印したその佇まいは、これまでバラエティ番組で見せてきた明るいテンションとは別人だ。
索という人物は癖のあるキャラクターだが、手越の場合、役に色をつけすぎて見せようとしない。その代わりに、日々の生活でふと見せるような表情や、ちょっとした息づかいを丁寧に積み重ねていく。そうした控えめな演技が、索を“特別に奇妙な人”ではなく、“どこかで出会ったことがあるかもしれない誰か”として感じさせる。ドラマが描く「自分の居場所をどう見つけるか」というテーマが自然と胸に落ちてくるのは、手越が役の輪郭を静かに整え、余白のある人物として成立させているからだ。
シリアスな役柄に強みを持つ手越祐也
思い返せば、デビュー間もない頃の手越は、もともとシリアスな役柄に強みを持つ俳優だった。映画『疾走』では、家庭の崩壊と罪を背負った少年の痛みを、驚くほど繊細に体現してみせた。一方で、キャリアを重ねる中で、『マイ☆ボス マイ☆ヒーロー』(日本テレビ系)では、主人公の兄弟分として明るく軽やかな存在感を発揮し、『ヤマトナデシコ七変化』(TBS系)では、王子然とした美しさにコミカルさをまぶしたキャラクターを飄々と演じた。『デカワンコ』(日本テレビ系)では、熱血で真っ直ぐな刑事役を担当し、爽やかな好青年像をナチュラルに成立させている。いずれも、当時の手越の明るさや素直さ、愛嬌がそのまま役の説得力へとつながった出演作だった。
だが、『ぼくたちん家』での手越は、その象徴であった金髪を黒髪へと変え、さらには声のトーンも抑え、存在をまるごと静けさの方向へ振り切ってみせている。ギラギラした明るさを前面に出すのではなく、役として呼吸するために余計な音を消していくような演技だ。台詞のひとつひとつはささやくように落ち着いていて、間の取り方も丁寧。感情を激しく動かすのではなく、小さな揺らぎを積み重ねることで、索という人物の内側にある孤独やためらいが自然とにじみ出てくる。
例えば、第8話で玄一から家をかすがいにしましょうと言われたことが嬉しかったと告げるシーンでは、少し考えるように目線を落としながら、まっすぐに思いを伝えていく。ドラマの中で手越が発する言葉が重たく響くのは、その前段にある沈黙が、キャラクターの心の重層性を確かに支えているからだ。
『ぼくたちん家』は、手越にとって大きな意味を持つ作品になったはずだ。これまでバラエティや音楽活動で培ってきた表現力に加えて、若い頃に挑戦していたシリアスな演技の感覚も確かに残っていたし、今回の索という役は、その両方を自然な形で結びつけるきっかけになっているように見えた。
手越の俳優としての第2章は、きっとここから始まっていくのだろう。これまでの彼を見てきた人ほど、今回の静かな変化には気づきやすいはずだ。無理にアピールするのではなく、作品の中で少しずつ表れているその新しい手越を、これからもゆっくり見届けていきたい。
■放送情報
『ぼくたちん家』
日本テレビ系にて、毎週日曜22:30~放送
出演:及川光博、手越祐也、白鳥玉季、田中直樹、渋谷凪咲、坂井真紀、光石研、麻生久美子
脚本:松本優紀、渋谷凪咲、田中直樹
演出:鯨岡弘識、北川瞳
インクルーシブプロデューサー:白川大介
チーフプロデューサー:松本京子
プロデューサー:河野英裕、西紀州、岡宅真由美
音楽:東川亜希子、神谷洵平
主題歌:「バームクーヘン」
制作協力:AX-ON
©日本テレビ
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