『ばけばけ』リヨ様が“女中トキ”におかんむり 松江の寒さがヘブンとの距離を縮める?

 『ばけばけ』(NHK総合)第47話では、リヨ(北香那)がトキ(髙石あかり)に不満をぶつけた。

 12月に入った。はなやいだ恋愛ドラマが似合う季節だ。『ばけばけ』でも恋バナが進行中である。ところで、恋愛ドラマでおもしろいのは相関図だ。誰と誰が両想いで、どのキャラクターがひそかに恋心を抱いているか。すれ違いと三角関係を想像するだけで、むずがゆい気持ちになる。

 ヘブン(トミー・バストウ)に熱をあげているのはリヨだ。知事の娘の立場と、女学校で学んだ英語を武器にぐいぐい迫る。利発で多才、西洋料理をふるまったかと思えば、第47話で箏を演奏してヘブンに絶賛された。

 父の江藤(佐野史郎)や錦織(吉沢亮)の妨害にめげず、熱烈アピールを続けるリヨの前に、思わぬ伏兵が現れる。それはトキだった。笑顔をたやさないリヨがトキに向けた言葉は丁寧だったが、顔にははっきりと怒りの表情が浮かんでいた。

 トキが華道や茶の湯、三味線など日本文化をたしなみ、ヘブンの前で披露することを、リヨは迷惑に感じている。「あなたがいると私が目立たないでしょ」。せっかくの努力が台無しになるというのだ。

 リヨはトキをライバル視しておらず、ただの女中という認識だろう。トキにもその気はなく、リヨの邪魔をしようとは思っていない。かんじんのヘブンはイライザ(シャーロット・ケイト・フォックス)に一途で、近況を手紙にしたためる。

 このほかに、トキに思いを寄せる小谷(下川恭平)もいるが、やや圏外の感は否めない。また、勘右衛門(小日向文世)とタツ(朝加真由美)の老いらくの恋があって、ドラマに彩りを添えているのが第10週だ。

 そんな中で、進展があるとするなら、寒さがポイントになりそうだ。松江は日本海に面しており、冬はかなり寒くなる。温暖な地域からやってきたヘブンは寒さにやられていて、「サムイ」を連発。とうとう学校で倒れてしまう。

 ヘブンの「もうだめだ。ここが臨終の地になるとは(和訳)」はさすがに大げさだとしても、わりとストレートに寒さを訴えるヘブンに異なる対応をしていたのが興味深かった。リヨは大丈夫かと尋ねるものの、ヘブンの「マツエ、サムイ」に微笑むだけ。基本的に自分のことで頭がいっぱいである。

 トキはヘブンに布団と着替えを用意し、病人に接するように看病する。あたりまえのことをやっているだけだが、起点が自分ではなく、相手のニーズに寄り添っている点がリヨと異なる。ただし、心の底では、ヘブンへのいつくしみの感情が生まれているかもしれない。タエ(北川景子)やなみ(さとうほなみ)はトキの変化に気づいた。あとは、本人が意識するかどうかだ。

■放送情報
2025年度後期 NHK連続テレビ小説『ばけばけ』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:髙石あかり、トミー・バストウ、吉沢亮、岡部たかし、池脇千鶴、小日向文世、寛一郎、円井わん、さとうほなみ、佐野史郎、北川景子、シャーロット・ケイト・フォックス
作:ふじきみつ彦
音楽:牛尾憲輔
主題歌:ハンバート ハンバート「笑ったり転んだり」
制作統括:橋爪國臣
プロデューサー:田島彰洋、鈴木航、田中陽児、川野秀昭
演出:村橋直樹、泉並敬眞、松岡一史
写真提供=NHK

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