『ザ・ロイヤルファミリー』“広中”安藤政信が見抜いた資質 偶然を必然にする逃げ馬の法則

 逃げ馬は勝ち馬になれるか。『ザ・ロイヤルファミリー』(TBS系)第2話が10月19日に放送された。

 耕造(佐藤浩市)の選任秘書として働くことになった栗須(妻夫木聡)は、さっそく山王家へ招かれる。耕造に妻の京子(黒木瞳)と長女の百合子(関水渚)の一家は華麗なる一族のオーラをまとい、別世界を強く感じさせる。人事部長を務める長男の優太郎(小泉孝太郎)は、栗須に試練を課した。競馬事業部存続の条件として、中央競馬で今年中に1勝することを耕造に受け入れさせた。

 出会いは人生を変える。栗須は、耕造と出会ったことで運命が180度転換した。馬と人にも運命の出会いがある。第2話で登場した調教師の広中(安藤政信)が、“ロイヤルファミリー”の系譜を継承する案内人になった。

 競馬場やテレビの中継で目にするサラブレッド。彼らがどんな道をたどって出走するかが目黒蓮のナレーションで語られる。国産のサラブレッドが中央競馬のレースに出るには、まず、馬主が生産牧場で生まれた仔馬を購入し、育成専門の牧場で競走馬としての基礎を学ばせる。次に、調教師に管理を委託し、成長するとトレーニングセンターに入れて登録。こうしてはじめて実戦に挑むことができる。「難関エリート進学校」のたとえもあったが、サラブレッドの中でもえりすぐりのエリートを私たちは観ていることになる。

 調教師は、サラブレッドの運命を決める重要な役目を担っている。良い調教師と出会えれば、サラブレッドの運命は開ける。悲願の1勝を目指して、山王は調教師に発破をかける。だが、山王の強引なやり方に耐えられず、田所(吉田ウーロン太)は調教を降りてしまう。調教師を探す栗須だったが、山王の悪評が影響してか後任探しは難航。困った栗須は、加奈子(松本若菜)に相談する。

 第1話で「積んだ金の額だけが勝敗を決めるわけじゃない」という台詞があった。資金を投じて血統の良い馬をそろえれば勝率は上がるかもしれない。けれども、それが全てではない。競馬に関わる人間が馬と一体になる“人馬一体”の状態になれば、番狂わせを起こすことも不可能ではない。第2話は、人馬一体の境地をもたらす人と馬の出会いが描かれていた。そこには、経験に裏打ちされた頭脳戦の側面もあった。

 広中博という人物の描かれ方が興味深い。ものをよくなくす広中は、エゴを捨てて馬のために奉仕することを説く。名馬を多く保有する椎名(沢村一樹)ではなく、山王が所有するロイヤルファイトとロイヤルイザーニャのきょうだい馬を引き受けた。そこには理由があるのだが、ここでは、人が人を見るように、馬の来歴と馬同士の関係にも注意が向けられる。

 第2話のポイントは「人で決める」という徹底した人間性重視の姿勢であり、同じことが馬にもいえる。出会いは偶然で、競馬はギャンブルである。どちらも確率論の世界ではあるのだけれど、それを引き寄せるのが人間であることは明白だった。

 ここまで観てくると、逃げ馬が勝ち馬になった理由もわかる気がする。ロイヤルイザーニャの激走は、ダートから芝への博打がたまたま当たったように見えるが、完全に戦略勝ちである。馬の性格を熟知し、数代前の先祖の血統を把握した上で、細かな調整を重ねて、最後に勝利を信じて送り出す。先頭でリードし、力の限り走り抜ける。逃げることは勝利への疾駆にほかならない。

 競走馬を主題とする『ザ・ロイヤルファミリー』は、偶然性に支配される競馬の世界が、実は緻密に張り巡らされた因果と、人々の思いの蓄積によって左右されることを解き明かす。勝負とはこのようにして決するのだと思い知らされる。

日曜劇場『ザ・ロイヤルファミリー』

早見和真の同名小説をドラマ化。税理士としての挫折を味わい希望を見出せなくなってしまった主人公の人生が、馬主である山王耕造との出会いにより大きく動き出していく。

■放送情報
日曜劇場『ザ・ロイヤルファミリー』
TBS系にて、毎週日曜21:00~21:54放送
出演:妻夫木聡、目黒蓮、松本若菜、安藤政信、高杉真宙、津田健次郎、吉沢悠、木場勝己、尾美としのり、関水渚、長内映里香、秋山寛貴(ハナコ)、三浦綺羅、小泉孝太郎、黒木瞳、沢村一樹、佐藤浩市
第1話ゲスト:武豊、丸田恭介、菅原隆一、今村聖奈
原作:早見和真『ザ・ロイヤルファミリー』(新潮文庫刊)
脚本:喜安浩平
演出:塚原あゆ子、松田礼人、府川亮介
主題歌:玉置浩二「ファンファーレ」
プロデュース:加藤章一
協力プロデュース:大河原美奈、小髙夏実
編成:佐藤礼子、中野翔貴
製作:TBSスパークル/TBS
©TBSスパークル/TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/RoyalFamily_tbs/
公式X(旧Twitter):@royalfamily_tbs
公式Instagram:royalfamily_tbs
公式TikTok:@royalfamily_tbs

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