新星・咲耶は『星と月は天の穴』になぜ抜擢されたのか 荒井晴彦脚本は「とても文学的」
12月19日よりテアトル新宿ほかにて全国ロードショーされる綾野剛主演映画『星と月は天の穴』より、本作のヒロインを務めた咲耶からコメントが寄せられた。
本作は、『ヴァイブレータ』『共喰い』などでキネマ旬報脚本賞に5度輝き、近年は『火口のふたり』『花腐し』など監督も務めている荒井晴彦が、長年の念願だった吉行淳之介の同名小説を映画化した人間ドラマ。
主人公の矢添克二を演じるのは、荒井と『花腐し』でもタッグを組んだ綾野。矢添を取り巻く女たち――女子大生の紀子を演じるのは、新星・咲耶。女性を拒む矢添の心に無邪気に足を踏み入れていく。矢添のなじみの娼婦・千枝子を演じるのは、荒井作品3作目の出演となる田中麗奈。そのほか、柄本佑、岬あかり、MINAMO、 宮下順子らがキャストに名を連ねた。
主人公・矢添との運命的な出会いから、女性としての欲望に目覚め、開花していくヒロイン・紀子。次第に矢添を凌駕していき、彼の日常を大きく変えていくこの役は選考が難航した。本作で描かれる1969年という時代設定に説得力を持たせられる昭和の雰囲気、そして大胆なラブシーンに対する覚悟、存在感がなくては成立しない役柄だったからだ。
オーディションを重ね、人選にこだわり、クランクインが差し迫る中でオーディションにやってきたのが咲耶だった。「荒井さんは適役の人が現れた瞬間に直感的に決めている」と竹田正明助監督が語るように、この時も、荒井、そして制作陣が待ちわびていた“紀子”が現れた瞬間だった。オーディションでは、咲耶は全ての台詞を憶えていて、どの台詞をどう言うかプランニングして来ていたため、台本をただ読んでほしいというオーディションに戶惑っている様子だったという。咲耶がどれほどこのオーディションの為に準備してきたかを感じることができたと制作陣は語る。
一方咲耶はもともと、「純文学の登場人物になってみたい」「オールヌードありの作品に出てみたい」という強い願望があったという。今の時代、そういった作品を制作されること自体が稀なため、「こんな理想的な形で実現するなんて」と彼女自身並々ならぬ思いでオーディションに挑み、役を掴み取った。1960年代の映画や映像を観て、女性たちの言葉遣い、喋り方を研究し、一番参考にしたのは『卍』(1964年/増村保造監督)の若尾文子だと明かす。
本作の撮影が終わった後、監督の荒井に「あなたは今までどこにいたの? どうして今まで現れなかったの?』と言わしめた咲耶。完成した作品を観て、「初号試写で初めて大きなスクリーンで観たとき、自分のフルヌードがスクリーンに映っているのに恥ずかしくなかった。そもそもカメラの前で脱ぐこと自体を恥ずかしいと思ってはいませんが、それを自分が客観的に見るとなれば、やっぱりちょっと恥ずかしさがあるのかなと思ったけど、全然そうじゃなかった。モノクロの画面で、現在とかけ離れた時代の世界を描いていて、しかも川上(皓市/撮影監督)さんが撮る画がものすごく綺麗で、荒井さんの書く脚本はとても文学的で。そういう全ての要素が合わさって、美しく撮っていただけたことが、すごく嬉しかったです」と語った。
■公開情報
『星と月は天の穴』
12月19日(金)テアトル新宿ほか全国ロードショー
出演:綾野剛、咲耶、岬あかり、吉岡睦雄、MINAMO、原一男、柄本佑、宮下順子、田中麗奈
脚本・監督:荒井晴彦
原作:吉行淳之介『星と月は天の穴』(講談社文芸文庫)
撮影:川上皓市、新家子美穂
照明:川井稔
録音:深田晃
美術:原田恭明
装飾:寺尾淳
編集:洲﨑千恵子
音楽:下田逸郎
主題歌:松井文「いちどだけ」ほか
写真:野村佐紀子、松山仁
製作・配給:ハピネットファントム・スタジオ
©2025「星と月は天の穴」製作委員会
公式サイト:https://happinet-phantom.com/hoshitsuki_film/