『ばけばけ』髙石あかりの“婚活”にやきもき 池脇千鶴VS北川景子、2人の母の緊迫シーンも
司之介(岡部たかし)の事業失敗により、多額の借金を背負うことになった松野家。18歳となったトキ(髙石あかり)は貧乏生活脱出のため、婿取りを決意する。NHK連続テレビ小説『ばけばけ』第6話では、第2週のサブタイトル「ムコ、モラウ、ムズカシ。」が示す通り、前途多難なトキの婿探しが始まった。
婿探しにあたり、縁結びで有名な八重垣神社で恋占いを試したトキ。小銭を乗せた紙の船は長い長い時間をかけて、ようやく向こう岸で沈んだ。つまり、婚期は遅く、遠方の人と結ばれるということ。トキは約5年後、のちに夫となるギリシャ出身のアイルランド人・ヘブン(トミー・バストウ)と出会う。占いは大当たりだ。
しかし、今のトキはそんな未来を想像すらしていない。それどころか、一刻も早く今の生活から抜け出したいトキにとっては絶望的な結果だった。落ち込むトキを、「当たるも八卦、当たらぬも八卦」とフミ(池脇千鶴)は励ます。一方、「占いは当たるじゃろう」と追い討ちをかけるのが、勘右衛門(小日向文世)だ。
勘右衛門が詠んだ〈八雲立つ 出雲八重垣 妻籠みに 八重垣作る その八重垣を〉は、『古事記』に記された日本最古の和歌。ヤマタノオロチを退治したスサノオノミコトが、クシナダヒメを妻に迎えた際に詠んだ歌とされる。八重垣神社は2人が新居を構えた土地にあり、ゆえに古くから縁結びの聖地として知られているのだ。
「出雲はわけても神々の国である」とは、ヘブンのモデルとなっているラフカディオ・ハーン(小泉八雲)が残した言葉。出雲は古い歴史を持つ由緒正しき神社が点在し、またヤマタノオロチ伝説をはじめとした数々の神話が残る場所であり、人々は神々の気配を感じながら生きてきた。
加えて、当時は電気すらも通っておらず、月明かりや蝋燭の光だけで夜を過ごしていた時代。「たかが占い……」とは切り捨てられぬ、非科学的なものを信じる心の“余白”があったのではないだろうか。そんな土地と時代が、トキを怪談好きに育てたのかもしれない。目には見えないものに心を寄せる豊かさは、時代に取り残された司之介を置いていかない寛容さや優しさにも通じている。
家族のために婿を取るという決断をしたトキに心を動かされ、両親も彼女が希望する働き者で怪談が好きな婿探しに奮闘する。当時、高価だった牛乳を配達する司之介は顧客に縁談を申し込むが、失敗。一方、フミは良い縁談を探してもらおうと雨清水家を尋ねるが、夫・傳(堤真一)を通して事情を知っていたタエ(北川景子)は先回りしてトキの相手を見繕っていた。ありがたい話のはずだが、フミはなぜか「それならそうだと先にお伝えいただきたかった」と不快をあらわにし、タエはハッとしたように「それは先走り過ぎました」と謝罪する。この意味深な会話は史実を知っている人なら、察するものがあったのではないだろうか。
傳とタエの三男・三之丞(板垣李光人)が登場したシーンでも、のちの展開に繋がりそうな伏線が張られていた。恋占いの結果通りにトキの同僚・せん(安達木乃)の縁談が決まり、工場で楽しそうに祝福していた三之丞。だが、そこに長男の氏松(安田啓人)が現れ、「ここはお前がくる場所じゃない」と追い払う。家族の中で、肩身の狭い思いをしているのだろうか。工場に入ってきた傳とすれ違うとき、三之丞はどこか緊張しているように見えた。貧しくとも笑いの絶えない家庭で育つトキと、対照的なキャラクターとして存在感を増していきそうだ。
■放送情報
2025年度後期 NHK連続テレビ小説『ばけばけ』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00〜8:15放送/毎週月曜〜金曜12:45〜13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜8:15〜9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:髙石あかり、トミー・バストウ、吉沢亮、岡部たかし、池脇千鶴、小日向文世、寛一郎、円井わん、さとうほなみ、佐野史郎、北川景子、シャーロット・ケイト・フォックス
作:ふじきみつ彦
音楽:牛尾憲輔
主題歌:ハンバート ハンバート「笑ったり転んだり」
制作統括:橋爪國臣
プロデューサー:田島彰洋、鈴木航、田中陽児、川野秀昭
演出:村橋直樹、泉並敬眞、松岡一史
写真提供=NHK