『あんぱん』濱尾ノリタカ再登場で嵩たちに転機 戦争の傷跡から生まれた“アンパンマン”

 ミュージカル『怪傑アンパンマン』のもとに、嵩(北村匠海)の仲間が集まってくる。NHK連続テレビ小説『あんぱん』第123話で、ミュージカルの準備に健太郎(高橋文哉)が加わった。

 岩男(濱尾ノリタカ)の息子・田川和明(濱尾ノリタカ)の来訪は、嵩とのぶ(今田美桜)の情熱に、薪をくべる出来事になったのだろう。戦争という常識が通用しない、個人の正義を貫くことが許されない時を超えて、残された命だからこそ、“逆転しない”正義と平和のためにできることは何か。嵩とのぶにとって、ミュージカル『怪傑アンパンマン』の制作は、自分の命に与えられた使命を果たすことにつながっている。

 それは、健太郎も同じだったようだ。嵩、八木(妻夫木聡)と同様に、戦地での岩男の死を見ていた健太郎も、和明の存在から戦地での経験を思い出したのだろう。

 健太郎がミュージカル制作の仲間に加わった一方で、蘭子(河合優実)は変わらず、戦争体験者の取材を続けていた。蘭子も和明の一件から、戦争体験者の生の声を届けることの意義を改めて実感している様子。取材を続けることが、豪(細田佳央太)の最期を知ることにつながると考えているのだろうと八木は想像する。八木の表情には含みがあり、何か思っていることがある様子。八木が、あらためて蘭子の傷を癒す展開があるのだろうか。

 衣装選びに演技指導、楽曲制作と、ミュージカル『怪傑アンパンマン』の準備が着々と進んでいく。限られた予算と時間のなか、どのような工夫を凝らせば、絵本『あんぱんまん』の魅力が伝わるのか、頭を絞って考える制作メンバーの様子は、なんだか青春を味わっているように見えた。それぞれが絵本『あんぱんまん』の力と個人的な使命との合致を感じ、情熱を注いでいるからだろう。

 ミュージカルのテーマ曲『怪傑アンパンマン』の歌詞には、「ぼくのいのちがおわるとき、ちがういのちがまた生きる」というフレーズがある。当たり前のことではあるが、自分が生きた世界で、未来に生まれる子どもたちも生きていくのだ。和明のように、父の最期を知った結果、戦争の傷跡に直面して悲しみを背負う人もいる時代。未来を生きる子どもたちに悲しみや苦しみを残さないためには、何を残すべきなのか。

 のぶの願いは、今を生きる人たちにとっても、未来を生きる人たちにとっても救いになるような作品が生まれること。いせたくや(大森元貴)も賛同する。わずかな会話から、ミュージカル『怪傑アンパンマン』に携わる彼らが、戦争の傷を乗り越えた先で、何を望んでいるのかが見えた。

 令和の現在も数多くの子どもたちを虜にしている『アンパンマン』。やなせたかしの意志が脈々と引き継がれている証拠だ。『怪傑アンパンマン』は、その足がかりになるミュージカル。チケットを売るために、屋村(阿部サダヲ)を訪ねたのぶが思いついた策はどういったものだろうか。

■放送情報
2025年度前期 NHK連続テレビ小説『あんぱん』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00〜8:15放送/毎週月曜〜金曜12:45〜13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜8:15〜9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:今田美桜、北村匠海、江口のりこ、河合優実、原菜乃華、高橋文哉、眞栄田郷敦、大森元貴、戸田菜穂、戸田恵子、浅田美代子、吉田鋼太郎、妻夫木聡、阿部サダヲ、松嶋菜々子ほか
音楽:井筒昭雄
主題歌:RADWIMPS「賜物」
語り:林田理沙アナウンサー
制作統括:倉崎憲
プロデューサー:中村周祐、舩田遼介、川口俊介
演出:柳川強、橋爪紳一朗、野口雄大、佐原裕貴、尾崎達哉
写真提供=NHK

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