『エイリアン:アース』音を立てて広がっていく“亀裂” 地球外生命体たちがついに動き出す
ディズニープラス スターで独占配信中の『エイリアン:アース』。『SHOGUN 将軍』のFXが製作を手がけ、エイリアンの生みの親であるリドリー・スコットが製作総指揮を務める本作は、映画批評家サイト「Rotten Tomatoes」で批評家スコア95%フレッシュという、『エイリアン』シリーズの中で最高となるスコア(※9月8日時点)を獲得。第6話ではついに、これまでのエピソードで小さく入り込んでいた亀裂が、音を立てて広がっていく。
※本稿は『エイリアン:アース』第6話のネタバレを含みます。
火花散るユタニとカヴァリエの話し合い
ボーイ・カヴァリエ(サミュエル・ブレンキン)がマジノ号の事故まで画策して“積荷”を横取りしようとしていたことが判明した前話。『エイリアン』シリーズにおいて常にウェイランド・ユタニ社が極悪非道な企業として登場し、ゼノモーフを生物兵器として利用しようとしてきたが、『エイリアン:アース』ではそういった企業が他にもあったことがわかった。そしてその事実は、「ファイブ」と呼ばれる権力を持った企業が民生を支配する時代により一層暗い影を落とすのだ。
そんな「ファイブ」が間に介入し、ユタニ(サンドラ・イ・センシンダイバー)とカヴァリエに正式な話し合いの場が設けられる。結局は金の話になるわけだが、カヴァリエは隔離期間が解けるまではエイリアンは渡さないと最終的に主張する。もちろんユタニはそんな答えに納得いかず、モロー(バボー・シーセイ)にプロディジー社の研究島「ネバーランド」にカオスを持ち込み、その隙にゼノモーフの個体を捕獲する作戦に出る。
この話し合いが終わった後、エレベーターの中でモローがカーシュ(ティモシー・オリファント)に対して煽るように言った「お前を時代遅れのモデルにした会社で働くのはどんな気分だ?」というセリフもなかなかで、これまでのエピソードでカヴァリエから侮辱的な発言を受けたり、この第1話でウェンディに言っていた言葉を思い返したりすると、正直いつカーシュがカヴァリエを裏切っても仕方ない(忠実でい続ける意味がわからない)のである。こういったモローの発言が、何かの伏線になっていく可能性も見逃せない。
「人間でいたくない」
第6話で大きなテーマとして描かれたのは、精神を病んだことで停止状態にされたニブス(リリー・ニューマーク)に対する“非人道的”な処置だ。もともとニブスはメンバーの中でも病弱だったが、シルヴィア(エシー・デイヴィス)の発言から、過去にもトラウマを含め何かと抱えていたような性格だったことがわかる。シルヴィアはそれを“少しの調整”という言葉を使って、彼女の記憶の一部を消す。これに対し、夫であり共同開発者とも言えるアーサー(デヴィッド・リズダール)が倫理的に同意できないと、ハイブリッドを思い通りに扱いたいアトム(エイドリアン・エドモンドソン)から解雇を言い渡されてしまうのだった。
大きなポイントとしては、ハイブリッドの精神が肉体と同じように人工的なものではないこと。中身は人間としてこの世に生を受けた子供なのだ。アトムはすでに彼らを人間として扱っていないため、記憶を消すことに対しての人道性に疑問を抱かない。しかし、ウェンディはニブスの記憶が消されていることに気づくとシルヴィアと対立するのだった。
ネバーランドは“肯定の場”だと言われてきたのに、実際に自分たちに選択肢は与えられていなかったこと。自分たちは観察対象であること。状況の異常性に気づき始めた彼女は「ウェンディ」と呼ばれることに対しても「それは私の名前ではない」と反抗するのだ。そしてカーシュから言われた「人のふりをすることをやめること」について理解を示し出す。