『奪い愛、真夏』数々の名シーンはどう生まれた? “シリーズ生みの親”鈴木おさむが明かす

 2017年の『奪い愛、冬』(テレビ朝日系)からスタートした『奪い愛』シリーズ最新作となる『奪い愛、真夏』(テレビ朝日系)は、さまざまな登場人物たちが愛を奪い合う“ドロドロキュン愛憎ドラマ”。回を追うごとにカオスな展開がエスカレートしていき、大きな盛り上がりを見せている。脚本を手がけているのは、シリーズの生みの親である鈴木おさむ。2024年3月末に放送作家業と脚本業から引退した鈴木だが、今回は引退発表以前から制作陣と続編を作る約束していたこともあり、特別に筆を執ることを決意したという。そんな鈴木に、『奪い愛、真夏』の名シーンの裏側や、主演の松本まりかをはじめとするキャスト陣について、そして今後の『奪い愛』シリーズの展望を聞いた。

出し惜しみはしない不倫が見つかる瞬間のカタルシス

ーー物語も佳境に入っていますが、視聴者のみなさんからの反応はいかがですか?

鈴木おさむ(以下、鈴木):まず、第3話がキーになるということは初めからプロデューサーチームと話していました。第1話がタイムリープするというサプライズ、第3話で未来(高橋メアリージュン)の「ずっと見てたよー!」があって。『奪い愛、冬』(テレビ朝日系/2017年)の時も蘭(水野美紀)の「ここにいるよー!」が第3話だったんです。だから、第3話が自分の中で大事だと思っていたら、切り抜きで1600万回を超えるほど再生も回っていた
ので(番組公式X・Instagram・TioTok、YouTube【テレ朝ドラマ 公式ch】/2025年9月5日現在)、ここで待ってくれている人がいるんだなと思いました。

ーー第3話を経て、第4話からは、未来役の高橋メアリージュンさんの怪演が幕開けとなりますが、鈴木おさむさんの脚本の筆が乗ってるなと感じました。

鈴木:不倫ドラマは不倫が見つかる瞬間がカタルシスになるので、そこを過ぎると落ち着いていくドラマも多いんです。タイムリープ不倫は、何回も見つかって報復されるので、カタルシスが何回も作れることに気づいて、出し惜しみはしませんでした。不倫が見つかった真夏(松本まりか)が、未来に謝罪文と退職願を書かせられるのはなかなかな展開で、全8話でいうとほんとなら第7話くらいで起こるようなことなんですけど、そこは出し惜しみしないでいけましたね。松本まりかさんも、「自分が奪う側だから酷い目に遭ってほしいと本当に思ってます」と話していて、どうやって酷い目に遭えば視聴者のみなさんがスカッとするかを意識していました。

ーー第6話のラストで未来が「私の個展にようこそ! 今回の個展のタイトルは『奪い愛、真夏』!」と鮮やかにタイトル回収するシーンが観ていて気持ちよかったです。

鈴木:本当ですか!(笑)。タイトルをセリフにすることって、意外とやってないなと思って、すごくいいですよね。

ーー未来はヴィラン役ではあるんですけど、回を重ねるごとに愛されるキャラクターになっているなと思います。

鈴木:『奪い愛、冬』のときの水野美紀さんもそうですけど、怪演と言ったって、奪われてるのは未来なんですよね。高橋メアリージュンさんと僕の間には共通の知人がいて、未来を演じる前に自分が時夢(安田顕)のことをどう思ってるかを書き出した文章を知人を通じて送ってくれたんです。その芯があるからこそ、振り切って演じられているんだと思うんですよね。だからこそ、僕は今後の展開の中でメアリージュンさんが書いて送ってきてくれたことをけっこうセリフに入れたんです。

ーー高橋メアリージュンさんの芝居はどのように見ていますか?

鈴木:もちろんお芝居を見たことはありましたけど、未来のようなキャラクターをどう演じるんだろうと思っていたところもありました。第3話からの「ずっと見てたよー!」の振り切りと、喫茶店でフジコ・ヘミングのようにピアノを弾く姿は、メアリージュンさんの中でもしかしたら一つ箱を開けたのかなと思います。

ーー第5話で未来が花瓶に向かって「ふざけんなー!」「なに言ってんのー!」と叫ぶシーンが大好きなんですが、あれは高橋メアリージュンさんのアドリブだと知って驚きました。

鈴木:僕もああいった演出になってるのは知らなかったんです。あのシーンは、どちらかというと母親の佳子(菊池桃子)が主役の感じだったので、あれによってちゃんと未来のシーンになったと思いましたね。

ーー演出陣もそういった遊び心があるというか。

鈴木:演出の方がみんなそれぞれ遊んでくれていて面白いですね。菊池桃子さんがあそこまで嫌な役をやるのも珍しいですし、今後もゲスト的に面白い人が出てくるんですけど、こんなふざけたことができるドラマもないと思うので、それを楽しんでやってくれているのがありがたいです。

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