『雪風 YUKIKAZE』はドラマファン必見 『あんぱん』“寛おじさん”に重なる竹野内豊の言葉

 物語は、寺澤が雪風の艦長として赴任するところから始まる。先任伍長とは、最古参として艦の全下士官・兵を束ね、唯一、艦長にも意見を言えるポジションで、寺澤艦長も早瀬先任伍長を尊重しながら、共に働くこととなる。寺澤は、武士道を信念に携えた、いわゆる一般的な軍人像とは一線を画す、澄み切った人間性の艦長という設定にも惹かれた。型破りな判断で激戦をくぐり抜ける手腕がある、リーダーシップに長ける寺澤を、穏やか且つ静かな情熱を持って演じる竹野内がとても良く、大いに惹き付けられる。

 竹野内は、現在放送中のNHK連続テレビ小説『あんぱん』で、『アンパンマン』の作者として知られるやなせたかしをモデルにした柳井嵩(北村匠海)の伯父・柳井寛を演じたが、彼は「絶望の隣は希望」や「何のために生まれて、何をしながら生きるのか」といった名セリフを発するキャラクターで、寛おじさんの数々の言葉が視聴者の心に響いたと話題になった。今回の『雪風 YUKIKAZE』でも、予告編にもある寺澤艦長の「普通がいいな」という言葉は、戦争が終わった未来の日本がどうなっていてほしいか、彼の心からの言葉であり、竹野内が発することで、朝ドラ視聴者をはじめ、多くの人の心に刺さるのではないだろうか。

 『真夏のオリオン』(2009年)や『沈黙の艦隊』(2023年)では艦長を演じてきた玉木が、本作ではどちらかと言うと肉体派のキャラクターである早瀬先任伍長に扮しているのも興味深い。仲間を救うためなら、いくらでも体を張り、泥まみれになって働く人間臭い早瀬を、とても魅力的に表現している玉木。

 そんな早瀬によって、沈没した巡洋艦から海に投げ出されところを救い上げられた若き水雷員・井上壮太を演じているのは奥平大兼。『MOTHER マザー』(2020年)で衝撃的なデビューを果たし、日本アカデミー賞やブルーリボン賞で新人賞を受賞した彼は、『Cloud クラウド』(2024年)や、1月期のTBS日曜劇場『御上先生』などで、どんどん演技の幅を広げている。井上は早瀬を尊敬し、絶対に諦めずに仲間を救うという精神を受け継いでいく。

 また、早瀬の妹・サチを演じている當真あみは、兄の無事を願い、戦時下を懸命に生きている少女を等身大に体現。日本テレビ系にて放送中の『ちはやふる-めぐり-』や、10月17日公開の待機作『ストロベリームーン 余命半年の恋』で主役を張る當真も、平和を願うメッセージが込められた『雪風 YUKIKAZE』の重要な役割を担うキャラクターを好演している。

 竹野内や玉木といったベテラン俳優と、奥平や當真といったフレッシュな才能のケミストリーも見どころで、あらゆる年代の観客に刺さる見応えのある映画となっている。終戦記念日の8月15日から公開中の『雪風 YUKIKAZE』は、冒頭でも述べたが、ほかの戦争映画とはまた違った、胸に広がるような感動が味わえる、人間ドラマとしての魅力に溢れている作品だと感じた。観終わった後に感想を語り合いたくなるし、雪風の活躍のおかげで助かった命に想いを馳せ、雪風が現代へとつないでくれた平和を守らなければならないと強く痛感する傑作映画だ。

■公開情報
『雪風 YUKIKAZE』
全国公開中
出演:竹野内豊、玉木宏、奥平大兼、當真あみ、藤本隆宏、三浦誠己、山内圭哉、川口貴弘、中林大樹、田中美央、田中麗奈、益岡徹、石丸幹二、中井貴一
監督:山田敏久
脚本:長谷川康夫
撮影監督:柴主高秀
VFX 監督:オダイッセイ
音楽:岩代太郎
主題歌:「手紙」Uru(ソニー・ミュージックアソシエイテッドレコーズ)
協力:防衛省、海上自衛隊
製作プロダクション:デスティニー
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント、バンダイナムコフィルムワークス
©︎2025 Yukikaze Partners.
公式サイト:yukikaze-movie.jp 
公式X(旧Twitter):@yukikazemovie
公式Instagram:@yukikaze_movie

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