大森南朋、相葉雅紀、松下奈緒がトリプル主演を務める水9ドラマ『大追跡～警視庁SSBC強行犯係～』（テレビ朝日系／以下、『大追跡』）が最終章に突入する。

　本作は、1980年代からテレビ朝日の水曜21時台に設けられている刑事ドラマ枠・水9ドラマの新シリーズ。新シリーズが放送されるのは、東山紀之が主演を務めた『刑事7人』（テレビ朝日系）以来、10年ぶりとなる。視聴者としては、これまで慣れ親しんでいた作品が終了し、全く別の新シリーズが放送されるとなるとワクワクする反面、以前と同じように楽しめるだろうかと不安になることもあるだろう。しかし、『大追跡』には、水9ドラマらしい“あるある”が各所にちりばめられている。ここでは、特に10月から放送される『相棒』（テレビ朝日系）との共通点に注目してみたい。

　SSBC強行犯係には、外資系証券会社への就職を経て、国家公務員総合職中途採用試験に合格し警察庁入りしたという異色の経歴を持つ、冷静な名波（相葉雅紀）と、捜査一課の元刑事であったが、3年前に問題を起こしてSSBCへと異動となった、いまだに喧嘩っ早い伊垣（大森南朋）がいる。この2人がバディとなって捜査を進める様子は『相棒』シリーズの右京（水谷豊）と亀山（寺脇康文）を彷彿とさせる。そんな彼らと協力するはずの捜査一課主任・青柳（松下奈緒）は捜査の進め方などをめぐって、いつも対立。毎回、「なんでまたSSBCが」「もういい加減にして」というやりとりが定番になりつつある。『相棒』でも特命係の2人のことを捜査一課メンバーが敵視しがちで、特に同期の伊丹（川原和久）と亀山は今でも会えば互いに憎まれ口を叩いている。それでも事件の解決に向けて足並みを揃えるところがとても水9ドラマらしいといえる。

　さらにクスッと笑える小ネタも散りばめられている。『相棒』では、階級が上であるほど権力に弱く、立場の強い人間に媚びへつらう人たちが時折描かれる。『大追跡』でも名波が元警察庁長官で現・内閣官房長官である久世（佐藤浩市）の甥であることがわかると、青柳や捜査一課長の八重樫（遠藤憲一）の態度が一変している。出世を狙う人たちのそんな“あるある”の様子が組織の厳しい上下関係や複雑な組織内政治を表し、逆にドラマに「観たことある！」という親やすさを与えている。

　また、八重樫には「はうっ」という毎回聞かれるセリフも誕生。『相棒』では特命係がいるフロアにいる角田係長（山西惇）がちょくちょくやってきては「暇か？」と声をかけてくるが、八重樫の「はうっ」はいずれそのような“お馴染みのセリフ”になってきた。

　しかし、作品に共通する“あるある”があるからこそ、ちょっとした違いが作品の良さに繋がっている。何かと対立しがちな伊垣と青柳は『相棒』の亀山と伊丹とは違い、同期ではなく元夫婦。2人の間には娘・美里（今濱夕輝乃）もおり、第7話では美里が通う学校の教師が殺されてしまう。その教師は夜廻りをして見かけた生徒の連絡先を控えており、なんとそこには美里の名前も。2人は娘の教育をめぐって口論になったり、伊垣は亡くなった教師の悪口を恥じらいもなくSNSに投稿する美里を叱ったりする。このような場面は伊垣と青柳の関係性があるからこそ描けるものだ。

　そして、『大追跡』にも名波の馴染みの小料理屋「まえだ」が登場。『相棒』の右京にも昔から行きつけの小料理屋があるが、こちらは事件の解決後にほっと一息つく場なのに対して、『大追跡』では、名波と久世が会う密談の場の雰囲気が漂っている。この違いが伊垣や青柳といるときとは違う名波の“闇”を感じさせる要因となっているのではないだろうか。

　『相棒』をはじめとした長期シリーズ作品がそろう水9ドラマ。『大追跡』は刑事ドラマとして親しみやすい展開でありながらも、だんだんその作品特有の“らしさ”が出てきている。きっと、長く愛される作品になってくれることだろう。

■放送情報
『大追跡～警視庁SSBC強行犯係～』
テレビ朝日系にて、毎週水曜21:00～放送
出演：大森南朋、相葉雅紀、松下奈緒、伊藤淳史、髙木雄也、足立梨花、丸山礼、野村康太、佐藤浩市、遠藤憲一、光石研ほか
脚本：福田靖
監督：田村直己、豊島圭介、小松隆志
ゼネラルプロデューサー：服部宣之（テレビ朝日）
チーフプロデューサー：黒田徹也
プロデューサー：藤崎絵三（テレビ朝日）、目黒正之（東映）
音楽：沢田完
制作：テレビ朝日、東映
©テレビ朝日・東映
公式サイト：https://www.tv-asahi.co.jp/daitsuiseki/
公式X（旧Twitter）：https://x.com/daitsuiseki2507
公式Instagram：https://www.instagram.com/daitsuiseki2507/