『Turkey!』も『舟を編む』も見逃したらもったいない! 脚本家・蛭田直美の秀逸な人間描写

 そう考えると『Turkey!』のテーマは、やはりボウリングに象徴されていると思うのだが、戦国時代にタイムスリップするという虚構性の高い設定と、5人の女子高生の少しとぼけたやりとりの奥底にある10代ならではの切実な心情描写には、ドラマの時とは違う緊張感が漂っている。

 劇中では「ボウリングには二投目がある」といったボウリングを引き合いにした例え話が冗談めかして挟み込まれる。最終的にスネークアイのような、どちらかを選び、どちらかを捨てなければならない状況に置かれても、誰も見捨てずにみんなで現代に戻りたいという麻衣の決意が描かれる。彼女は母親の影響でボウリングのピンを救うべき人に見立てているところがあり、ボールを投げる時に「みんないっしょに帰ろうね」とピンに語りかけていたことが第4話で明らかとなる。

 だから、現代に帰れそうになった時も、置き去りになった利奈のために戦国時代に残ることを麻衣たちは選択した。この第4話では利奈の内面が掘り下げられるのだが、彼女が両親の離婚が原因で「人の役に立つ」ことでしか自分の居場所が作れないと思いつめていることや、いずれ先輩たちが学校を卒業して自分が一人ぼっちになることを恐れるあまり、麻衣たちにつらく当たっていたことが明らかとなる。

 最終的な評価はボウリングと戦国時代をうまくリンクさせるかにかかっているが、そういった設定面での辻褄合わせがどうでもよくなるくらい、麻衣たちの心情描写が素晴らしい。そこにはどんな時代においても「人は必死で生きて思い悩んでいる」という確かな手触りが存在する。この手触りこそが、蛭田直美脚本の一番の魅力なのだ。

■放送情報
『Turkey!』
日本テレビほかにて、毎週火曜25:29〜放送
出演:菱川花菜(音無麻衣役)、市ノ瀬加那(五代利奈役)、岩田陽葵(一ノ瀬さゆり役)、天麻ゆうき(三鷹希役)、伊藤彩沙(二階堂七瀬役)
原案:BAKKEN RECORD、ポニーキャニオン
監督:工藤進
脚本:蛭田直美
キャラクターデザイン・総作画監督:武川愛里
メインアニメーター:那花優統
色彩設計:のぼりはるこ
美術監督:田尻健一
撮影監督:小西庸平
CGディレクター:堀本夏生
編集:及川雪江
音楽:林ゆうき
音楽制作:ポニーキャニオン
プロデューサー:木下哲哉、北林俊哉
アニメーションプロデューサー:大松裕
オープニングテーマ:「ヒャクニチソウ」長野県一刻館高校ボウリング部
エンディングテーマ:「もしも」太陽と踊れ月夜に唄え
制作:BAKKEN RECORD
©BAKKEN RECORD・PONY CANYON INC. /「Turkey!」製作委員会
公式サイト:https://turkey-project.com/
公式X(旧Twitter):https://twitter.com/Turkey_PJ

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