“映画好き”にこそ勧めたい『TOKYO MER 南海ミッション』 “攻め”のディザスターに興奮必至

 攻めのディザスターで有名なのは『ツイスター』(1996年)および『ツイスターズ』(2024年)だろう。竜巻解明を目的とする科学者が観測のためにディザスター状況へとガンガン突っ込んでいく傑作災害映画だ。竜巻を科学的に解き明かし、将来的に被害を無くそうとする行為は竜巻という不条理に対する唯一の反逆である。そして竜巻を追う者《ストーム・チェイサー》に必要なものは竜巻を観測するための機器と、身を守るための装備を搭載した車の存在である。

 攻めのディザスターにおいて特別な装備を搭載した車ほど心強い存在はない。『イントゥ・ザ・ストーム』(2014年)の竜巻観測用装甲車両「タイタス」がその最たる例であろう。災害という不条理へまっすぐ突き進む機能美的洗練さと無骨さが同居した車両の姿は、見るものの子供心を熱くさせる。そして『TOKYO MER』シリーズにも攻めのディザスターに必要不可欠な、心を熱くさせてくれる車両がある。それがMER専用緊急車両「ERカー」である。

 ERカーは最新のオペ室をまるごと搭載した緊急車両だ。文字通り「走る緊急救命室」であり、鈴木亮平(演じる喜多見)が率いるチームMERはこれに乗ってディザスター状況へと突っ込むことができる。本作では「待っているだけでは助けられない命がある」という言葉が頻出する。ERカーはまさにその意志を体現したような車両であり、刻一刻を争う現場──爆発寸前の飛行機のそばや、噴石降り注ぐ孤島など──に駆け付け、その場で手術することができる。

 医者がディザスター状況に突っ込むのはそれほど珍しくない。レスキュー隊員ならなおさらだ。だがオペ室そのものがディザスター状況に突っ込むのはなかなか無いのではないだろうか。走るオペ室が災害現場へと激突するその様は、まさに「医療」そのものがディザスターへと反逆していくような高揚感を覚える。医療vsディザスター。それが劇場版『TOKYO MER〜走る緊急救命室〜南海ミッション』なのだ。

 劇場版『TOKYO MER〜走る緊急救命室〜南海ミッション』は傑作ディザスターであり、大災害にオペ室を突っ込ませる独自性を伴った作品である。鈴木亮平は完全にヒーローの肩幅をしており、プロフェッショナルに徹する人間の演技がとても上手い。また、離島医療の問題に触れる誠実さを持ちつつ、ディザスターvs医療の映画として怒涛のクライマックスがある。特に「人の命を救う」という覚悟を焼き付けるようなフロントライトの激しい光を目にした瞬間、誰もが興奮すること必至である。

 恐らく、劇場版『TOKYO MER〜走る緊急救命室〜南海ミッション』は筆者がこうして紹介するまでもなく大ヒットを記録し、興行収入を伸ばすだろう。そういう意味ではこの記事は全く持って必要性がないと言ってもいい。邦ドラの続き物の映画によくあることだが、X上での話題の少なさに対し、爆発的な興行収入を記録することがある。恐らく、本作もそういった作品群に名を連ねることになるだろう。無論、Xで話題になることが映画の価値の全てではない。むしろ些細なことと言って差し支えない。だが、それでもこうして本作の記事を書いた理由はひとつ。皆がそうであるように単純におもしろいディザスターが好きだからだ。

 というわけでドカンと大噴火のNON STOPディザスターvs医療の劇場版『TOKYO MER〜走る緊急救命室〜南海ミッション』は真夏の劇場鑑賞にピッタリの作品だ。

■公開情報
劇場版『TOKYO MER〜走る緊急救命室〜南海ミッション』
全国公開中
出演:鈴木亮平、賀来賢人、高杉真宙、生見愛瑠、宮澤エマ、菜々緒、中条あやみ、小手伸也、佐野勇斗、ジェシー(SixTONES)、 フォンチー、江口洋介、玉山鉄二、橋本さとし、渡辺真起子、鶴見辰吾、石田ゆり子
監督:松木彩
脚本:黒岩勉
配給:東宝
©2025 劇場版『TOKYO MER』製作委員会
公式サイト:https://tokyomer-movie.jp/
公式X(旧Twitter):tokyo_mer_tbs
公式Instagram:tokyo_mer_tbs
公式TikTok:tokyomer

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