『べらぼう』や『光る君へ』で話題の“呪術監修”とは? 呪いのプロたちが防ぐ“効力”

 映画のシーンにマッチする呪文やお札を、実際に使われているものから「近いものを探す作業はとても楽しかったですね」と振り返る加門だが、「万が一何か起こると怖いのでちゃんとフェイクを加えています」と、『べらぼう』の高橋同様に現実への影響に配慮したことを明かしている。古くから使われ威力を見せてきた魔法や呪文を扱う上で大切なところなのだろう。

 『陰陽師0』で演じる役者も、こうした監修や考証を受けて頑張った。呪術で印を組む場合、両手すべての指と関節に意味があって正しく組む必要があるが、普通の人ではなかなか組めない印もある。主役の安倍晴明を演じた山﨑賢人は、パンフレットで「一本一本の指を意識して神経を解放させる練習をしましたし、呪の練習もたくさんしました」と答えている。撮影日誌には、「指が曲げやすくなるように、指の骨の間に鍼を打ってもらいました」と話したことも紹介されている。配信などで映画を観る機会があったら注目したいポイントだ。

『陰陽師0』 ©2024映画「陰陽師0」製作委員会

 『陰陽師0』の佐藤監督といえば、古賀新一の漫画『エコエコアザラク』を映画化した『エコエコアザラク -WIZARD OF DARKNESS-』(1995年)や『エコエコアザラクII -BIRTH OF THE WIZARD-』(1996年)が知られている。黒魔術を使う魔女の少女、黒井ミサを主人公とした作品だけあって漫画にも映画にも魔術シーンが描かれる。『エコエコアザラク』は清水厚監督らによってドラマ化もされていて、佐伯日菜子が表情も声音も本物の黒井ミサかと思わせる演技で評判になった。

 このTVドラマ版『エコエコアザラク』のLD-BOXが発売を記念したイベントが、1997年夏に秋葉原で開かれ、登壇した佐伯が魔術の専門家から呪文をすべて言わないように指導されたことを振り返っていた。呪文が効力を発揮してしまわないような配慮が、この頃から行われていたことが伺える。

 佐伯主演の『エコエコアザラク』は、東京での放送が神戸連続児童殺傷事件の影響で18話までで打ち切りとなってしまった。地方で再放送された際に全話放送されたり、LDやDVDに収録されたりしたが、今はなかなか観ることができない。日本の魔術ドラマの金字塔的作品だけに、再評価の機運が起こって欲しいところだ。

 魔術は今やファンタジー小説や漫画、アニメ、ゲームなどで一種の超能力のように使われている観がある。三田誠のライトノベル『レンタルマギカ』(角川スニーカー文庫)のように、ケルト魔術やルーン魔術、真言密教といった実在する魔術を取り入れた作品もあって、人類が積み上げてきた魔術知識に触れられる。

 TVアニメ化されたこの『レンタルマギカ』で魔術考証を担当したのが三輪清宗だ。魔術やオカルトに関する豊富な知識を活かしてゲームデザインやゲームリプレイの執筆などを行っている。

 三輪は、三田がTYPE-MOON作のビジュアルノベルゲーム『Fate/stay night』から派生した小説として執筆した『ロード・エルメロイII世の事件簿』(角川文庫)でも魔術考証を務め、TVアニメ『ロード・エルメロイII世の事件簿 -魔眼蒐集列車 Grace note-』も含めて魔術が飛び交う物語の世界にリアリティーを与えている。

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 同じ『Fate』シリーズから派生した作品では、『デュラララ!!』で知られる成田良悟の小説『Fate/strange Fake』を元にしたアニメでも、三輪が魔術考証に名前を連ねている。2024年の大晦日に第1話、8月3日に第2話が先行で放送・上映され、2025年に本放送が始まるアニメへの期待が高まっているだけに、そこで繰り出される魔術が考証を経たリアリティーとカッコよさをあわせ持っているものとなれば、大いに視聴者を刺激して魔術への関心を深めることになるだろう。

参照
※ https://x.com/Keiya_Takahashi/status/1949435851144151119

■放送情報
大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』
NHK総合にて、毎週日曜20:00〜放送/翌週土曜13:05〜再放送
NHK BSにて、毎週日曜18:00〜放送
NHK BSP4Kにて、毎週日曜12:15〜放送/毎週日曜18:00〜再放送
出演:横浜流星、小芝風花、渡辺謙、染谷将太、宮沢氷魚、片岡愛之助
語り:綾瀬はるか
脚本:森下佳子
音楽:ジョン・グラム
制作統括:藤並英樹
プロデューサー:石村将太、松田恭典
演出:大原拓、深川貴志
写真提供=NHK

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