『鬼滅の刃』胡蝶しのぶの笑顔の裏にあった“意外な素顔” 早見沙織が体現した静かな激情
『鬼滅の刃』の序盤から登場し、ミステリアスな微笑みで人気を博していた蟲柱・胡蝶しのぶ。7月18日から公開されている『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』では、その“意外な素顔”が明らかになり、あらためて注目を集めているようだ。
しのぶはどんな時でも感情を表に出さず、慈愛に満ちた笑みを浮かべていることでお馴染み。そのやさしさが向けられるのは鬼殺隊の隊士だけでなく、鬼と戦うときにも「仲良くしましょう」と積極的に語りかけるのだった。
※本稿は『鬼滅の刃』無限城編のネタバレを含みます。
しかし「無限城編」ではそんな態度をかなぐり捨て、激しく怒り狂いながら戦闘する様子を見せた。姉・カナエの仇として長年憎んできた上弦の弐・童磨との遭遇を果たしたからだ。
人を殺すことを“救済”と語る童磨に対して、しのぶはこれまで見せたことがなかったような険しい形相を浮かべ、「貴方頭大丈夫ですか?」「本当に吐き気がする」と罵りながら激情をぶつけていく。
とくに今回の劇場版では、声優・早見沙織の演技力によって、原作より一層しのぶの変化が強調されている。これまでのしのぶは上品な話し方で、“素の感情”を一切感じさせないよう声色が抑制されていたが、童磨と対峙してからはイメージが激変。冷静でいようとするも自制が利かず、マグマのように感情が爆発してしまう様を圧倒的な迫力で表現していた。
さらに白眉と言えるのが、童磨に致命傷を負わされた後の演技。童磨から身体付きが小さく、首を斬れないことを指摘され、しのぶは無力感に打ちひしがれるが、そこでカナエの姿を幻視する。そして肺に血が入った状態で地獄の苦しみを味わいながら、ふたたび力を振り絞るのだった。自分の限界を自覚しながらも立ち上がる力強さが、ひしひしと伝わってくる名シーンだ。
とはいえ、正確にはしのぶは童磨との戦いで人格が変わったわけではない。もともと激情家の性質があり、今まではそれを抑え込んでいたと言うべきだろう。
実際にアニメ1期の第25話で描かれた栗花落カナヲの過去編では、今より幼かった頃のしのぶが登場するのだが、その振る舞いは別人のように感情的。当時のしのぶは笑顔どころか眉を吊り上げた厳しい表情をしており、「姉さんに触らないでください」と敵意をむき出しにして人買いの手を払いのけるなど、好戦的で短気なところを見せていた。
また第24話では、嗅覚の鋭い炭治郎が笑顔の裏にある激情を見抜き、「怒ってますか?」「なんだかいつも怒っている匂いがしていて……」と問いかける場面もあった。