静かに、しかし確実に緊張が高まっていく『DOPE 麻薬取締部特捜課』（TBS系）第5話。今回は登場人物たちの内面に深く切り込みながら、過去の因縁と能力の連鎖が、容赦なく彼らの日常を蝕んでいく様子が描かれた。

　特捜課に届いたのは、椿（忍成修吾）の死の知らせ。死因は自殺と報告されたが、才木（髙橋海人）と陣内（中村倫也）はそれを額面通りに受け止めなかった。椿は以前から「5億円盗難事件」に関する情報を追っていた人物。それだけに特捜課の一部では偽装を疑う声も上がるのは無理ないが、それはあまりにも短絡的すぎる。そして真相は、やはり本郷（佐野和真）による復讐だった。金銭トラブルの末に恨みを買い、追い詰められた椿は命を絶った。だがその死は、表向きの鬱という言葉だけでは語り尽くせない。

　椿の死を受け止めきれないままの才木は、陣内を呼び出し、「椿からあなたを見張るよう言われていた」と正直に告白する。その理由は、陣内にDOPEの使用疑惑がかけられていたからだ。だが実際に陣内が服用していたのは、精神安定剤だった。才木は自らの誤解と行き過ぎた疑念を悔い、素直に謝罪する。なんでもズケズケと踏み込んでくる才木に、陣内が「これだからZ世代は」と思わずツッコミを入れる場面には、ふと笑いがこぼれた。

　一方、美和子（真飛聖）の家庭では、さらなる不安が襲う。パートの面接から帰宅した彼女の前にあったのは、倒れた状態の結衣（蒼戸虹子）だった。命の危機が迫る中で、美和子が再び頼れるのは「DOPE」と、自らの“ヒーリング”能力しかない。しかし、それを使えば振り出しに戻ってしまうというジレンマ。家族を守るために、自分の体と倫理の境界を踏み越えるか。母親としての葛藤が、切実に描かれており、胸が苦しくなった。

　物語の焦点は再び特捜課へ。DOPE摘発の新たな囮捜査が実施され、才木はナイトクラブへ潜入。売人との接触には成功するが、すぐに正体がバレてしまい、追い詰められる展開に。そこへ陣内が現れ、BGMも相まってスリリングな戦闘シーンが展開。彼のクールな立ち回りと判断力が、現場の緊張を一気に切り裂いていく。売人は確保されたが、DOPEの背後にいる仕入れ先の情報は得られず、依然として核心には届かない。

　事態の混迷が深まるなか、葛城（三浦誠己）は再びニコラス（フェルナンデス直行）に潜入捜査を命じる。だがその矢先、ニコラスは何者かに拉致され、拷問の末に意識不明となり病院へ搬送される。見舞いに訪れた陣内を襲ったのは、正体不明の男。その口から発せられた「香織を殺した」という一言に、陣内は激昂するが、そこへ現れたジウ（井浦新）が静かにその怒りを制止する。

　一方、才木は戦闘力を求めて綿貫（新木優子）のもとで訓練を受けることに。その綿貫の前に現れたのが、かつての特捜課の部下だった泉（久間田琳加）。綿貫をパワハラで告発し、組織を去った泉は、「特捜課を辞めてようやく本当の自分を見つけられた」と語る。かつての上司と部下、そして現在の敵と味方。泉の登場は綿貫の過去を抉るだけでなく、犯罪シンジゲート白鴉の策略がどこまで深く根を張っているかを示唆する。

　そして、今回最大の転機となったのが結衣の能力の覚醒だった。止まった空間、動かない時間――彼女は“時間を止める”能力を持っていた。血縁的に見れば不思議ではないが、あまりにも唐突な開花に正直驚いた。けれど、その能力は使うたびに身体を蝕む副作用がある。乱用の危険性を知っている美和子は当然能力を使わないように結衣を止めるが、この先の展開を考えたときにこの結衣の能力が鍵になってきそうな気もする。

　第5話では、新キャラクターも登場。異能力ハンターの寒江（松角洋平）と藤川（小倉史也）、さらに「バイオエイル遺伝子研究所」の研究者・田所輝明（清水伸）といった顔ぶれが加わることで、物語は次のステージへ。能力をめぐる争いは、もはや個人の感情や正義だけでは収まりきらない領域に突入しようとしている。

■放送情報
金曜ドラマ『DOPE 麻薬取締部特捜課』
TBS系にて、毎週金曜22:00〜22:54放送
出演：髙橋海人、中村倫也、新木優子、三浦誠己、豊田裕大、久間田琳加、忍成修吾、入山法子、佐野和真、蒼戸虹子、小池徹平、真飛聖、伊藤淳史、井浦新
原作：木崎ちあき『DOPE 麻薬取締部特捜課』シリーズ（角川文庫／KADOKAWA刊）
脚本：田中眞一
演出：鈴木浩介ほか
プロデュース：長谷川晴彦、佐藤敦司
音楽：内澤祟仁
主題歌：Uru「Never ends」（ソニー・ミュージックレーベルズ）
編成 ：杉田彩佳、松本友香
製作：TBSスパークル、TBS
©︎TBS
公式サイト：https://www.tbs.co.jp/DOPE_tbs/
公式X（旧Twitter）：@dope_tbs
公式Instagram：＠dope_tbs