胡蝶しのぶ“5つ目の蟲の呼吸”が劇場版で初解禁 『鬼滅の刃 無限城編』童磨戦を解説
しのぶの使う「蟲の呼吸」は、技の一つひとつに蟲にちなんだ名称がつけられている。「虻咬ノ舞 切裂の誘い」以外で劇場版・TVシリーズに登場した型を、改めて振り返ってみたい。
・蟲の呼吸・蜂牙ノ舞 真靡き(ほうがのまい まなびき)
・蟲の呼吸・蜻蛉ノ舞 複眼六角(せいれいのまい ふくがんろっかく)
・蟲の呼吸・蜈蚣ノ舞 百足蛇腹(ごこうのまい ひゃくそくじゃばら)
・蟲の呼吸・蝶ノ舞 戯れ(ちょうのまい たわむれ)
こうして並べてみると、「蝶ノ舞」だけが柔らかい響きを持っていることに気づくだろう。蜂、蜻蛉、蜈蚣……他はいずれも肉食性で、どこか攻撃的な印象を与える虫たちだ。この並びにおいて、蝶だけが異質に映るかもしれない。だが、実際には、蝶の中にも毒を持つ種が存在する。
TVアニメ『「鬼滅の刃」竈門炭治郎 立志編』第23話では、蝶屋敷の庭を舞う無数の蝶が描かれており、それらは「アサギマダラ」と呼ばれる実在の毒蝶がモデルとされている。今後の展開に関わるため詳しい特性は伏せるが、この蝶は美しさと毒性を併せ持つ、まさにしのぶ本人のような存在だ。
しのぶの隊服の袖口や髪飾りにも、このアサギマダラの翅を思わせる模様があしらわれている。華奢で穏やかな印象の彼女が、実は誰よりも“毒に特化した柱”であることが、衣装ひとつとっても浮かび上がってくるのだ。
さらに、TVアニメシリーズに登場した蝶屋敷の中には、今回の映画の伏線と読み取れるような描写も存在していた。たとえば、第24話では、館内に掲げられた掛け軸に「風春彩雲」という文字が登場する。この言葉自体は既存の四字熟語ではなく、意味や出典も定かではない。だが、一説には、愛知県犬山市の「博物館明治村」にある第四高等学校武術道場「無声堂」に掲げられた「電影春風」(現物の表記は「風春影電」)から着想を得たものではないかという見方もある。
「彩雲」とは、太陽の近くを通過する雲が虹色に輝く自然現象のこと。この幻想的な表現を聞いて思い出すのは、やはりしのぶの仇である童磨の虹色の光を宿す瞳。しのぶが長らく追い続けてきたその存在を、「風春彩雲」という言葉が象徴していたのだとすれば、背景美術にまで彼女の戦いが静かに刻まれていたことになる。
しのぶの戦いは、美しく、静かで、そして恐ろしいほどの覚悟に満ちている。蟲のように忍び寄り、喰われることすら厭わず、毒と共に刺す。この夏、劇場で彼女の刃に触れた観客はきっと、その静かな怒りと決意に、心を撃ち抜かれたに違いない。
■公開情報
『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』
全国公開中
キャスト:花江夏樹(竈門炭治郎役)、鬼頭明里(竈門禰󠄀豆子役)、下野紘(我妻善逸役)、松岡禎丞(嘴平伊之助役)、上田麗奈(栗花落カナヲ役)、岡本信彦(不死川玄弥役)、櫻井孝宏(冨岡義勇役)、小西克幸(宇髄天元役)、河西健吾(時透無一郎役)、早見沙織(胡蝶しのぶ役)、花澤香菜(甘露寺蜜璃役)、鈴村健一(伊黒小芭内役)、関智一(不死川実弥役)、杉田智和(悲鳴嶼行冥役)、石田彰(猗窩座役)
原作:吾峠呼世晴(集英社ジャンプ コミックス刊)
監督:外崎春雄
キャラクターデザイン・総作画監督:松島晃
脚本制作:ufotable
サブキャラクターデザイン:佐藤美幸、梶山庸子、菊池美花
プロップデザイン:小山将治
美術監督:矢中勝、樺澤侑里
美術監修:衛藤功二
撮影監督:寺尾優一
3D監督:西脇一樹
色彩設計:大前祐子
編集:神野学
音楽:梶浦由記、椎名豪
主題歌:Aimer「太陽が昇らない世界」(SACRA MUSIC / Sony Music Labels Inc.)・LiSA「残酷な夜に輝け」 (SACRA MUSIC / Sony Music Labels Inc.)
総監督:近藤光
アニメーション制作:ufotable
配給:東宝・アニプレックス
©︎吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
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