『あんぱん』勝手なのに憎めない登美子から目が離せない 松嶋菜々子だから成立した母親像

 2002年の大河ドラマ『利家とまつ』(NHK総合)でも、前田利家(唐澤寿明)の正妻・まつを演じたが、やはり気丈な物怖じしない強い女性像を作り上げていた。織田信長や豊臣秀吉にも一目置かれるような存在で、「わたくしにおまかせくださりませ」は、流行語にもなったほどだ。

 2001年に『GTO』(1998年/カンテレ・フジテレビ系)で共演した俳優・反町隆史と結婚。以降、家庭を大切にしながら女優業を続けていく。スキャンダルとも無縁なまま、母親役やキャリアウーマン役など、年齢とともに役の幅を広げていった。

 そして2011年、松嶋の代表作の一つとなる『家政婦のミタ』(日本テレビ系)が放送される。民放連続ドラマの主演としては、2003年の『美女か野獣』(フジテレビ系)ぶりではあったが、最終回は視聴率40%という大ヒットとなった。主人公・三田灯は、感情を一切見せないまるでロボットのように無表情な家政婦。妻が亡くなって崩壊寸前の阿須田家で、家主の恵一(長谷川博己)とその子どもたちの命令に、「承知しました」「それは業務命令ですか」と冷ややかに返事をし、それがたとえ犯罪行為だとしても、文字通りに遂行しようとする。トレードマークとも言える笑顔を封印した、冷ややかで暗い役柄だった。

 このユニークかつ強烈なキャラがお茶の間に受け入れられたのは、ひとえに松嶋という俳優のお陰であったと思われる。凛とした正義感を持っていること、どこかに温かい情や明るい心根があることを感じさせる演技で、最終的に明かされる三田の過去には涙を禁じ得なかった。

 『あんぱん』では、姑となった登美子がこれから何かと嵩とのぶに干渉してきそうだ。松嶋はNHKドラマガイド『連続テレビ小説 あんぱん Part2』にて、こう話す。「自分勝手に見えますが、登美子は自分軸で生きているだけ。息子を思い通りにコントロールできなくても不機嫌にはなりません」。嫌われそうで嫌われない、憎まれそうで憎まれない、飄々としてどこかあっけらかんとした登美子は、松嶋だからこそ作り上げられた人物なのだろう。視聴者の胸に強烈なインパクトを残すことは、間違いない。

■放送情報
2025年度前期 NHK連続テレビ小説『あんぱん』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00〜8:15放送/毎週月曜〜金曜12:45〜13:00再放送
BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜8:15〜9:30再放送
BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:今田美桜、北村匠海、江口のりこ、河合優実、原菜乃華、高橋文哉、眞栄田郷敦、大森元貴、戸田菜穂、戸田恵子、浅田美代子、吉田鋼太郎、妻夫木聡、阿部サダヲ、松嶋菜々子ほか
音楽:井筒昭雄
主題歌:RADWIMPS「賜物」
語り:林田理沙アナウンサー
制作統括:倉崎憲
プロデューサー:中村周祐、舩田遼介、川口俊介
演出:柳川強、橋爪紳一朗、野口雄大、佐原裕貴、尾崎達哉
写真提供=NHK

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