『鬼滅の刃』善逸はなぜ“闇堕ち”しなかったのか? 兄弟子・獪岳との決定的な違い

 7月18日の公開以来、大ヒットを記録している『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』。劇中では我妻善逸と上弦の陸・獪岳が激しい戦闘を行い、決着をつけることになる。

 2人は正反対の運命をたどったキャラクターとして描かれているが、実はその境遇には似たところが多い。それどころか、一歩間違えれば善逸も“闇堕ち”していた可能性があったように思われる。

「鬼滅の刃」全七夜特別放送|特別映像『そして無限城へ ~我妻善逸編~』

※本稿は『鬼滅の刃』無限城編のネタバレを含みます。

 善逸は幼い頃に捨て子となり、実の親について何も知らないまま育った過去をもつ。それが原因なのか人からの愛情に飢えており、惚れっぽい性格で誰かと結ばれることを強く欲していた。

 しかし『鬼滅の刃公式ファンブック 鬼殺隊見聞録』によると、恋愛運も悪かった模様。これまで7人の女性と付き合ってきたが、騙されて「奴隷」のように使われるだけの関係だったという。師匠にあたる“育手”の桑島慈悟郎と出会ったのも、好きになった女性に裏切られ、借金で人生が破滅しかけていたところを救われたという流れだった。

 さらに善逸はすぐれた聴覚を持っているのが特徴だが、これもまた孤独感を生み出す原因になっている。『鬼滅の刃公式ファンブック 鬼殺隊見聞録・弐』収録の「大正コソコソ噂話」によると、女性たちが表では自分を褒め、裏では見下し嘲笑しているのを聞いてしまうことがあり、一時は女性恐怖症になっていたという。

 なお「無限列車編」では眠り鬼・魘夢が「幸せな夢」を見せる血鬼術を使った際、善逸の「無意識の領域」が描かれたことがある。そこは何も見えない真っ暗闇な空間で、炭治郎や伊之助のものと比べても明らかに異質。夢のなかに入り込んだ魘夢の刺客は、「息苦しい」「体が重たい」とその異常性を言い表していた。これを善逸が抱えた“心の闇”の表現として捉えることもできるだろう。

 それに対して「無限城編」で激突した獪岳も、善逸と負けず劣らず孤独な人生を送ってきた。

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