興収で読む北米映画トレンド
『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』北米No.1 『スーパーマン』と僅差の大接戦
『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』の製作費は2億ドル。オープニング興収はひとまず幸先のいいものとなったが、コスト回収の観点では現在の勢いをキープする必要がある。Rotten Tomatoesでは批評家スコア87%・観客スコア93%、観客の出口調査に基づくCinemaScoreでは「A-」と好評価を得ているため、口コミ効果でファン以外の層をつかみ、どこまで数字を伸ばせるか。
なお、ここ数年間のMCUは、『デッドプール&ウルヴァリン』(2024年)という破格のヒット作はあったものの興行的に苦しい状況が続いており、2025年公開の『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』と『サンダーボルツ*』は特に厳しい成績となっていた。
マーベル・スタジオのケヴィン・ファイギ社長は、『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』の公開直前に現地メディア向けの会見を開き、2021年以降、映画・テレビシリーズを大量生産してきたディズニーの戦略を「ブランドの価値を下げるものだった」と反省。本作がMCUの過去作とまったくつながっておらず、予習のいらない一本であることをアピールするとともに、2027年『アベンジャーズ/シークレット・ウォーズ(原題)』でMCUをいったん「リセット」するとまで(その真意は不明だが)予告している。
すなわち『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』は、向こう3年間の一大イベントに突き進む出発点でもある。MCU次回作はソニー・ピクチャーズ配給の『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』とあって、マーベルは人気スーパーヒーローの連発で『アベンジャーズ』につなげる構えだ。
DC映画『スーパーマン』は首位の座を譲り、公開3週目で第2位となった。週末興収は2486万ドルで、前週比マイナス57%。ライバルの出現によって下落率はさすがに大きめとなったが、北米興収は2億8950万ドル、世界興収は5億ドルを突破する順調ぶりだ。
第3位は『ジュラシック・ワールド/復活の大地』で、公開4週目で北米興収3億ドル、世界興収7億ドルを達成。シリーズとしては10億ドルの壁を超えるのが通例だが、今夏の公開作では屈指のヒットとなっている。第4位には『F1/エフワン』が前週の5位から再上昇し、こちらも世界興収5億ドルを超える快挙となった。オリジナル脚本による大人向けのレース映画としては異例のヒットで、Appleとしても歴代記録を更新しつづけている。
そんななか、前週公開の『ラストサマー』シリーズ最新作『I Know What You Did Last Summer(原題)』と、アニメーション映画『スマーフ』のリブート版『劇場版スマーフ/おどるキノコ村の時空大冒険(パラレルアドベンチャー)』、そしてアリ・アスター監督最新作『Eddington(原題)』は軒並み苦戦しており、サマーシーズンのラッシュにうまく乗れなかった。
2025年の北米市場累計興収は52億ドルを超え、2024年の同時期と比較してプラス13%という好記録。サマーシーズンだけでは前年比プラス10%、コロナ禍以前の2019年と比較するとマイナス15%。コロナ前の水準を取り戻すのはまだまだ大変……というところだが、数字の差が15%まで縮まったことをひとまず喜ぶことも大切だろう。
北米映画興行ランキング(7月25日~7月27日)
1.『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』(初登場)
1億1800万ドル/4125館/累計1億1800万ドル/1週/ディズニー
2.『スーパーマン』(↓前週1位)
2486万ドル(-57.5%)/3930館(-345館)/累計2億8950万ドル/3週/ワーナー
3.『ジュラシック・ワールド/復活の大地』(↓前週2位)
1300万ドル(-45.2%)/3550館(-304館)/累計3億151万ドル/4週/ユニバーサル
4.『F1/エフワン』(↑前週5位)
620万ドル(-37.2%)/2615館(-479館)/累計1億6555万ドル/5週/ワーナー
5.『劇場版スマーフ/おどるキノコ村の時空大冒険(パラレルアドベンチャー)』(↓前週4位)
540万ドル(-51.2%)/3504館/累計2278万ドル/2週/パラマウント
6. 『I Know What You Did Last Summer(原題)』(↓前週3位)
510万ドル(-60%)/3206館/累計2355万ドル/2週/ソニー
7.『ヒックとドラゴン』(↓前週6位)
280万ドル(-48.2%)/2346館(-502館)/累計2億5700万ドル/7週/ユニバーサル
8.『Eddington(原題)』(↓前週7位)
166万ドル(-62.2%)/2065館(-46館)/累計810万ドル/2週/A24
9.『Oh, Hi!(原題)』(初登場)
111万ドル/866館/累計111万ドル/1週/ソニー
10.『The Home(原題)』(初登場)
100万ドル/1015館/累計100万ドル/1週/ライオンズゲート
(※Box Office Mojo、Deadline調べ。データは2025年7月28日未明時点の速報値であり、最終確定値とは誤差が生じることがあります)
参照
https://www.boxofficemojo.com/weekend/2025W030/
https://variety.com/2025/film/box-office/fantastic-four-first-steps-box-office-opening-weekend-1236471441/
https://variety.com/2025/film/box-office/fantastic-four-first-steps-global-box-office-superman-f1-milestones-1236471480/
https://www.hollywoodreporter.com/movies/movie-news/fantastic-four-first-steps-box-office-opens-1236330424/
https://deadline.com/2025/07/box-office-fantastic-four-first-steps-1236468412/
https://deadline.com/2025/07/fantastic-four-first-steps-global-international-box-office-1236468911/
■公開情報
『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』
全国公開中
出演:ペドロ・パスカル、ヴァネッサ・カービー、ジョセフ・クイン、エボン・モス=バクラック
日本版声優:子安武人(リード・リチャーズ/ミスター・ファンタスティック役)、坂本真綾(スー・ストーム/インビジブル・ウーマン役)、林勇(ジョニー・ストーム/ヒューマン・トーチ役)、岩崎正寛(ベン・グリム/ザ・シング役)、楠大典(ギャラクタス役)、上田麗奈(シルバーサーファー役)
監督:マット・シャクマン
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
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