『こんばんは、朝山家です。』朝子と蝶子の不器用さ 中村アンの演技力の凄さに圧倒される

 「晴太には特性があるから仕方がない」というのは、蝶子も両親から幾度となく言われてきたはずだ。だからこそ、心の奥では弟のしんどさも理解している。でも、あまりにも自分が邪険にされ続けると、「もっとわたしのことを見てよ!」と訴えたくなってしまうのだ。ただ、高校生の蝶子はそれを上手く言葉にして伝えることができない。そのもどかしさが、苛立ちとなって表に出てしまい、結果的に誤解を与えてしまう。本当は愛されたいだけなのに、“反抗的な娘”というレッテルを貼られ、ますます心を閉ざしていく……。そんな負のループが見え隠れする。

 そんな蝶子の不器用さは、母の朝子にも通じる部分がある。朝子は、夫である賢太の夢を、賢太以上に大事にしているのではないだろうか。きつい言葉を吐くから“鬼嫁”に見えてしまうけれど、本当は“聖母”のような人だと思う。だからこそ、子育てだけでもパンクしそうな日々のなかで、賢太が監督する映画企画のために走り回ることができるのだろう。そのパワーは一体どこから湧いてくるのか……と思ったが、やっぱりそれは家族への深い“愛”から生まれているのだと感じた。

 そう思うことができたのは、朝子がひとりになった時にふと見せる表情が、あまりにも優しかったから。それは、微笑んでいるとか、家族を愛おしく見つめるといった、そんな単純なものではない。「愛おしい存在のために頑張るぞ」という決意が滲み出ているような……硬い表情のはずなのに、愛情深さを感じさせる不思議な力があった。ほんの一瞬の場面で、ここまでの奥行きを表現できる中村アンの演技力の凄さには、本当に圧倒されるばかりだ。

 朝山家は、男性陣のほうが問題を抱えているように見えるが、実は追い詰められているのは、女性陣のほうなのかもしれない。孤軍奮闘のようになってしまっている朝子と、「やっぱり、わたしの話は誰も聞いてくれない……」と家族のなかで孤独を感じている蝶子。今はまだバラバラな4人が、いつかひとつの“家族の形”を作り上げることはできるのだろうか。果たして、この先にどんなドラマが待っているのか。ますます目が離せなくなってきた。

こんばんは、朝山家です。

足立紳が自身の連載日記『後ろ向きで進む』をベースに執筆したホームドラマ。“キレる妻”と“残念な夫”という衝突不可避の夫婦が、罵倒と叱責、ときどき愛で、家族の難題を切り抜けていく。

■放送情報
『こんばんは、朝山家です。』
ABCテレビ・テレビ朝日系にて、毎週日曜22:15〜放送
TVerにて、放送終了後見逃し配信
U-NEXT、Prime Videoにて全話配信
出演:中村アン、小澤征悦、さとうほなみ、小島健(Aぇ! group)影山優佳、渡邉心結、嶋田鉄太、土佐和成、佐野弘樹、竹財輝之助、河井青葉、丸山智己、宇野祥平、松尾諭
脚本:足立紳
原案:足立紳・足立晃子『ポジティブに疲れたら俺たちを見ろ~ままならない人生を後ろ向きで進む~』(辰巳出版)
演出:足立紳、小沼雄一、安村栄美
チーフプロデューサー:山崎宏太
プロデューサー:寺川真未、宮本日奈美、加藤伸崇(S・D・P)、坪ノ内俊也(R.I.S Enterprise)
協力プロデューサー:足立晃子
ビジュアル撮影:浅田政志
タイトルロゴ:寺内暁
制作協力:S・D・P
制作著作:ABCテレビ
©ABCテレビ
公式サイト:https://www.asahi.co.jp/asayamake/
公式X(旧Twitter):@drama_asayamake
公式Instagram:@drama_asayamake
公式TikTok:@drama_asayamake
公式LINE:@abc_drama

 

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