人質よりも式根潤平を心配して怪しい行動を見せているのが屋代圭吾。人物紹介では「正義感が強く、市民や国家の安全を守る警備部SATに強い誇りを持っている。ストイックな性格で、自分にも部下にも厳しい人間。」とあり、今回和泉に代わって指揮をとる警視庁刑事部BCCT捜査員の本庄杏（瀧内公美）を姪に持つ人物だ。これまでのシリーズを観ていると、黒幕との仲介役として懺悔させられるポジションで、人質の命最優先で動く捜査一課の武蔵（櫻井翔）たちと、真実を隠蔽したい県警本部や直属のSATといった、より権力側にいる者たちが対立し、犯人たちとの三つ巴の展開が定番となっているが、今回もその役割として武蔵にはピッタリと部下の天草樹（曽田陵介）を同行させ監視している。そして屋代は官房長官からこっそりと直電していたが、官房長官の息子が人質の中にいたら犠牲者がいても真っ先に救えという連絡があるのは当然のこと。ただ、前述した通り式根潤平は叩けば政権を揺るがす大スキャンダルな埃が出てそうな人物だけに、政府側も息子を救うのではなく口止めしろと命令が下っていてもおかしくない。ただこの『占拠』シリーズでは、私怨の復讐劇は前菜に過ぎない。『大病院占拠』（日本テレビ系）ではワクチン開発の「P2計画」、『新空港占拠』（日本テレビ系）では地下資源発掘の「Mプロジェクト」といった巨大利権を世間に晒すことが最終目的だっただけに、今回も放送局絡みの国家規模の闇がきっとあるはず。

　ただ、屋代は正義感が強い人間という設定なのですでに何らかの不満を持っている可能性も高く、そこがどう動くのか。高橋克典といえば『特命係長 只野仁』（テレビ朝日系）でのヒーローキャラのイメージが強いが、最近は年齢も重ねNHKドラマ『正直不動産』シリーズのミネルヴァ不動産の社長役や『No Activity』シーズン2（Prime Video）での暴力団組長などラスボス的な悪役も増えている。今のところ本庄に押され気味だが、悪いほう方での覚醒があるかも知れない。只野世代としては姪っ子のために正義を貫いて最後は男の美学を感じるカッコいい男であってほしいし、ブルース・リーばりのアクションも遊び心のある『占拠』シリーズスタッフなら期待したいところ。

　そして怪しい動きといえば青鬼・大和耕一。第2話の最後に、妖の天狗を芝大輔（モグライダー）、がしゃどくろを瞳水ひまりが演じていることが明かされ、この2人が大和を脱獄させていたことが判明。今回大和が追っている鎌鼬事件だが、天狗の面には「横浜鎌鼬」、がしゃどくろの面に「鎌鼬」の文字が確認できるだけに、2人が鎌鼬事件の追及に大和の力を借りるために脱獄させたと考えられる。大和が脱獄したときに拘置所の前で「あれで良かったんだよね？」「今さら何を言ってる」「もう後戻りはできない」などの迷いがあったことからも、おそらくどちらかが拘置所関係者で、以前から大和に相談していた可能性も。

　要は、『大病院占拠』で犯罪コンサルタントの駿河紗季（宮本茉由）が犯罪計画を練って依頼主の大和に売って計画が実行されたように、今回は大和が復讐のコンサルを任されたという関係なのかもしれない。大和が伊吹刑事を拉致し、クリーニング屋の店主の誘拐を協力させていたが、現行の占拠事件は7月なのに、クリーニング屋にあったカレンダーが4月だったことで、「大和パートは3カ月前の前日談という時間軸のトリック？」と話題だが、もしそうなら妖の仲間集めや事件の証拠集めなど、大和が組織の基礎を作っている裏付けとなるし、今後は神津風花の恋人だった伊吹を焚きつけていくとなるといろいろと見えてくるが、まだ決めつけるのは早い。

　ただ『新空港占拠』の新見大河（ジェシー）のように、同じ敵でも思想が違い独自で動いていたり、妖を止めようとしている可能性も十分にある。そして大和には脱獄したい真の理由が他にあるはずで、それが鎌鼬事件と関係するのか、『大病院占拠』で妹の死を隠蔽して逮捕された神奈川県警本部長・備前（渡部篤郎）が『新空港占拠』では証拠不十分で不起訴の可能性という後日談があっただけにトドメを刺しにきたとか、単純に武蔵にリベンジしたいのか。

■放送情報
『放送局占拠』
日本テレビ系にて毎週土曜21:00〜放送
出演：櫻井翔、比嘉愛未、ソニン、瀧内公美、ぐんぴぃ、高橋克典、加藤清史郎、曽田陵介、吉田芽吹、戸次重幸、福澤朗、片岡礼子、齊藤なぎさ、山口大地、真山章志、亀田佳明、北代高士、宮部のぞみ、菊池風磨
チーフプロデューサー：道坂忠久
プロデューサー：尾上貴洋
演出：大谷太郎、茂山佳則、西村了
脚本：福田哲平
音楽：ゲイリー芦屋
制作協力：AX-ON
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