宇野維正の映画興行分析
5年前の再来？ もしかしたらそれ以上？ 記録ずくめの『鬼滅の刃 無限城編』にしばし呆然
7月第3週に公開された『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』が空前のスタートをきった。『鬼滅の刃』の純粋な劇場作品としては『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』以来約5年ぶりにして、クライマックス3部作の第1弾となる本作は、言うまでもなく大ヒットとなることが約束されていて、日本全国のシネコンもそれに見合うだけの上限となるスクリーン数と上映回数を割いていたわけだが、その天井を突き破る勢いで、『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』が保持していたすべてのオープニング記録を塗り替えた。
公開初日7月18日の単日興収は16億4600万円、動員は115万5600人。オープニング3日間の興収は55億2400万円、動員384万3600人。初日は『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』の約130%、オープニング3日間は約120%の数字。上映時間2時間35分と、前作より40分近く長尺となったことでタイムテーブルをさらに圧迫していることも含め、これは現在の国内映画興行のMAX値といえる記録で、一部のシネコンでは物販や飲食の長蛇の列が捌ききれないという現象も報告されている。最初の日曜日となった7月20日には単日の歴代最高記録も更新（興収20億3800万円、動員142万1800人）、3連休最終日の今週月曜日までの4日間の興収は73億1600万円、動員は516万4300人となっている。
公開から1週間を待たず興収100億円を突破する勢いの『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』の興行を受けて、上映回数はさらに増加傾向にあり、その当然の帰結として他の作品の上映回数に大きな影響を及ぼしてしているわけだが、ここまでの数字を突きつけられるとそれを嘆く気にもならないというのが正直なところ。本コラムでは以前、今年5月にリバイバル上映された『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』の不入りを取り上げ、今回の『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』の興行を「読めない」と匙を投げてしまったが（『鬼滅の刃』リバイバルは不発 「入場者特典のスクリーンへの侵入」は今後定着するか？）、フタを開けてみれば「読めない」のは最終的にどこまで記録を伸ばすのかという一点に絞られることに。
また、忘れてはいけないのは、既に『鬼滅の刃』はグローバルマーケットでも超人気コンテンツであること。今回の日本公開には海外のファンも多く押しかけているが、国外で公開が始まったら、世界各国でさらなるフィーバーが巻き起こることだろう。
そんなシネコン非常事態の中、前週まで4週連続で1位を走り続けてきた『国宝』が、週末3日間の動員34万6000人、興収5億1000万円という数字をキープしているのは大したもの。『国宝』の大快挙についてはまた回を改めて触れたいと思っているが、6月半ばから7月半ばにかけて入院生活を送っていた身としては、その期間に公開されたいくつかの外国映画の大作をIMAXスクリーンで鑑賞する機会を失ってしまった厳しい現実を前に、しばし呆然としているところだ。
■公開情報
『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』
全国公開中
キャスト：花江夏樹（竈門炭治郎役）、鬼頭明里（竈門禰󠄀豆子役）、下野紘（我妻善逸役）、松岡禎丞（嘴平伊之助役）、上田麗奈（栗花落カナヲ役）、岡本信彦（不死川玄弥役）、櫻井孝宏（冨岡義勇役）、小西克幸（宇髄天元役）、河西健吾（時透無一郎役）、早見沙織（胡蝶しのぶ役）、花澤香菜（甘露寺蜜璃役）、鈴村健一（伊黒小芭内役）、関智一（不死川実弥役）、杉田智和（悲鳴嶼行冥役）、石田彰（猗窩座役）
原作：吾峠呼世晴（集英社ジャンプ コミックス刊）
監督：外崎春雄
キャラクターデザイン・総作画監督：松島晃
脚本制作：ufotable
サブキャラクターデザイン：佐藤美幸、梶山庸子、菊池美花
プロップデザイン：小山将治
美術監督：矢中勝、樺澤侑里
美術監修：衛藤功二
撮影監督：寺尾優一
3D監督：西脇一樹
色彩設計：大前祐子
編集：神野学
音楽：梶浦由記、椎名豪
主題歌：Aimer「太陽が昇らない世界」（SACRA MUSIC / Sony Music Labels Inc.）・LiSA「残酷な夜に輝け」 （SACRA MUSIC / Sony Music Labels Inc.）
総監督：近藤光
アニメーション制作：ufotable
配給：東宝・アニプレックス
©︎吾峠呼世晴／集英社・アニプレックス・ufotable
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