『しあわせな結婚』が夏ドラマの本命に 第1話から圧倒された松たか子の“三段階”の変化

 先ほどネルラの謎めいた魅力には三段階の変化があると述べたが、それは「出会った頃」、「結婚した後」、「過去が明かされた後」という3点に分けられる。まず、エレベーターで突然他の人に渡すはずだったプレゼントと現金を渡し、退院日に突然「来ました、お迎えに」と言って現れるミステリアスな登場の仕方。不審に思ってもおかしくないが、演じる松の天性の魅力も相まって、突然の入院で心細さを感じている幸太郎には「女神」に見えた。続いて結婚後の彼女が見せるのは、いわば「寝室の姿」だ。

 つまりは幸太郎が言うところの「荒れたかかとにクリーム塗ってたりする時」のような「夫である自分だけが見ることのできる愛すべき彼女の姿」である。そしてそれはやはり、だいぶ謎めいている。変な寝相、食べ方、歩き方、ベルリオーネ『股関節の女』の絵の話、時折見せる唐突な大胆さなどが該当する。しかし、3段階目の謎は「しかしいい」では到底済まされない不穏な影を纏っていた。幸太郎の前に突然現れた刑事・黒川(杉野遥亮)が語る、ネルラの元婚約者・布勢(玉置玲央)が死亡した15年前の事件に、彼女が関わっているのではないかという疑惑である。

 第1話においてタイトル「しあわせな結婚」は2度表示される。1度目は、幸太郎が退院後、「迎えに来た」ネルラについて彼女の家へ揃って向かう後ろ姿を映した場面。緑の鮮やかさが印象的だ。2度目は、2人が互いに背を向けて眠る、第1話終盤の、寝室の光景。寝室の陰影と、背中合わせの2人の間に真っ直ぐと表示されたタイトルが、「殺人犯かもしれない」妻とともに眠る幸太郎の不安をより一層引き立てている。結婚とは、元来奇妙なものだと思う。それぞれに全く異なる人生を生きてきた、異なる価値観、家族構成を持った他人同士が一緒に暮らそうとするのだから。それでも幸太郎のように「孤独を埋めたくて」、あるいは愛する人の甘美な謎を解明したくて、ますます人は深みにはまるのだ。「結婚」とは、誰かと共に生きるとは何か。幸太郎が辿りつく先に、その答えはあるのだろうか。大人のための上質なドラマが始まった。

木曜ドラマ『しあわせな結婚』

大石静が脚本を手がける、夫婦の愛を問う“完全オリジナルホームドラマ”であり、令和の“マリッジ・サスペンス”。主演を務める阿部サダヲと松たか子は、10年ぶりに夫婦役を演じる。

■放送情報
木曜ドラマ『しあわせな結婚』
テレビ朝日系にて、毎週木曜21:00~21:54放送
出演:阿部サダヲ、松たか子、板垣李光人、段田安則、岡部たかし、玉置玲央、金田哲、馬場徹、辻凪子、堀内敬子、小松和重、杉野遥亮
脚本:大石静
監督:黒崎博、星野和成、楢木野礼
ゼネラルプロデューサー:中川慎子(テレビ朝日)
プロデューサー:田中真由子(テレビ朝日)、山形亮介(テレビ朝日)、森田美桜(AOI Pro.)、大古場栄一(AOI Pro.)
音楽:世武裕子
主題歌:Oasis「Don’t Look Back In Anger」(Sony Music Labels Inc.)
制作協力:AOI Pro.
制作著作:テレビ朝日
©テレビ朝日
公式サイト:https://www.tv-asahi.co.jp/shiawasena-kekkon/
公式X(旧Twitter):https://x.com/wasekon_tvasahi
公式Instagram:https://www.instagram.com/wasekon_tvasahi/
公式TikTok:https://www.tiktok.com/@wasekon_tvasahi

関連記事