犯人像を絞り込む科学的アプローチ

　SSBCの捜査支援では、犯罪の手口から犯人像を分析するプロファイリングを実施している。FBI（米連邦捜査局）での研修を受けた専門捜査員が、科学的根拠に基づいた犯人像の構築を行っているという。近年では、AI技術も活用されているようだ。

　第1話では、容疑者の行き先や共犯者の捜索に防犯カメラ解析に加えて、SNSに容疑者が投稿した画像など複数の情報源から得られた断片的な情報を組み合わせ、全体像を構築するモザイクアプローチ的な手法も用いられている。SNSの投稿履歴、位置情報、通信記録などを総合的に分析することで、従来では困難だった細かな犯人像の構築や犯罪発生地点の推測が可能となっている。だが、モザイクアプローチは悪用も懸念されている。2019年には、女性が撮影した写真の瞳に映った景色からモザイクアプローチで住所を特定したストーカーが逮捕され、「怖い」と話題になった（※7）。

　この事例と同様に、写真や動画に映り込んだ情報を活用し、新たな証拠を得るための手がかりを得るケースは、今後、現実でもドラマでも増加していく可能性が高い。写真や動画内の鏡やガラス、メガネなどに映る手がかりが事件解決の糸口になればドラマチックだ。『大追跡』第3話のタイトルは「反射した真実」。映像解析技術が活躍することになりそうだ。

「新技術」を続々投入？

　『大追跡』は、積極的に新たな科学捜査手法を取り入れている。第2話で描かれた「自転車モンタージュ」は2024年に話題になった実在する新しい技術。防犯カメラを駆使し、少ない材料を組み合わせて、自転車の画像解析を行い、5000万台ともいわれる膨大な自転車の中から「1台」を特定する。軽快車は基本的に12のパーツからなっており、これを組み合わせるというもので、作中では印象的に「自転車モンタージュ」の使用例が描かれた。こんなところからも『大追跡』の科学捜査にかける本気度が見えてくる。

　ここまで見てきたように、『大追跡』が描く捜査手法はSFではない。だが、ドラマとしてストーリーを追求する上で、一部の技術描写で多少の“魔法感”が感じられる場面はたしかに存在する。例えば、海に投棄されて沈んだスマホが短時間で見つかって早期にデータ復旧できたり、バラバラに撮影された監視カメラ映像がどんどんつながって、容疑者の行動が完璧にトレースされたりする場面などがそうだ。実際の科学捜査は時間がかかり、より多くの時間と労力を要するケースが多い。

　しかし、『大追跡』のこういった描写は、視聴者に科学捜査の進歩と可能性を伝えるための演出だと捉えられる。メインストーリーに加えて、SSBCが運用する現在の科学捜査の最前線をドラマから感じられるのがおもしろい。次はどんな科学捜査の新技術と課題をとりあげてくれるのか、楽しみに待ちたい。

参照
※1. https://smart-flash.jp/sociopolitics/15165/1/1/
※2. https://www.iza.ne.jp/article/20131216-AIRQLPCVPZPVJIRJO4HGPS2JYI/
※3. https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE2374J0T21C24A0000000/
※4. https://www.yomiuri.co.jp/national/20231003-OYT1T50167/
※5. https://cir.nii.ac.jp/crid/1390001205245313152
※6. https://jpn.nec.com/rd/technologies/202406/
※7. https://times.abema.tv/articles/-/7023151

■放送情報
『大追跡～警視庁SSBC強行犯係～』
テレビ朝日系にて、毎週水曜21:00～放送
出演：大森南朋、相葉雅紀、松下奈緒、伊藤淳史、髙木雄也、足立梨花、丸山礼、野村康太、佐藤浩市、遠藤憲一、光石研ほか
脚本：福田靖
監督：田村直己、豊島圭介、小松隆志
ゼネラルプロデューサー：服部宣之（テレビ朝日）
チーフプロデューサー：黒田徹也
プロデューサー：藤崎絵三（テレビ朝日）、目黒正之（東映）
音楽：沢田完
制作：テレビ朝日、東映
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