庄司浩平はなぜ役者を仕事に選んだのか 「つながっていると信じて、今やれることをやる」

 日本の映像界にまた新たなスターが誕生する。『魔進戦隊キラメイジャー』(テレビ朝日系)でデビューを果たし、7月から放送が始まったドラマ『40までにしたい10のこと』(テレ東)に出演中の庄司浩平だ。高校時代は全力でバスケットと向き合い、大学時代は海外での仕事を目指し語学を習得。読書を趣味として、インタビューでも聡明な言葉選びに、スタートアップ企業の若手社長のような印象を覚えるほど。

 どんな仕事でも成功者になれる資質を持っている庄司浩平は、なぜいま役者をやっているのか。大役を掴んだ『40までにしたい10のこと』への思いから、今の率直な思いまでじっくりと話を聞いた。【インタビューの最後にはチェキプレゼント企画あり】

“初めて”の瞬間がたくさんある『40までにしたい10のこと』

――『40までにしたい10のこと』田中慶司役は、オーディションでの抜擢だったそうですね。

庄司浩平(以下、庄司):結果が出るまでに時間があったので、「うまく進んでいるのかな」と多少は期待していましたが、過度に期待しすぎるとよくないことも経験上わかっていて。当時は『仮面ライダーガヴ』(テレビ朝日系)の撮影があったので、そちらに集中しつつ、いい結果が来ればいいなと思っていました。結果が出てからは、風間俊介さんという偉大な役者さんと一緒にやれることへの高揚感と緊張感があったのですが、「今日は会わないだろうな」という日に突然会えてしまって(笑)。衣装合わせもすぐでしたし、撮影まではあっという間でしたね。

――ちなみに、ご自身の中でオーディションを受ける際の心得はありますか?

庄司:しこたま落ちてきているので、自分の実力不足だとわかっていても「誰も見てくれていないんだな」「嫌な時間だな」と思うようなこともありました。最初に受けた何十本かのオーディションでは、不良役のときにはタンクトップを着たり、学園ものなら学生っぽい服装にしたりしていたんです。でも、あるときから「そういうことじゃないよな」と思うようになって。今は白シャツにジーンズのようなラフな格好で、自己紹介も「オスカープロモーションから参りました、庄司浩平です」で終わり。身長も体重も特技も、プロフィールは事務所を通して渡っているので、対面したときに興味を持っていただければ質問が生まれるし、生まれなければ正直そこまででしょうから……って、2年後のインタビューでは「めちゃくちゃ考えてやっています」と言っているかもしれませんけど(笑)。

――(笑)。実際、撮影に入ってからのご感想は?

庄司:毎日すごく楽しかったです。風間さんとほぼ1対1でお芝居ができたこと、初めて2番手として出してもらえたこと。刺激的で充実感にあふれていて、とても幸せな時間でした。池田(千尋)監督はディスカッションを大事にする方で、これまでは「こうやってほしい」と言われて「はい」と答えるだけでしたが、今回は初めて自分の意見を言うような場面も多くて。風間さんも他のキャストさんも意見を出すし、よりベターなものをやっていこうと。みんなが納得しながら進んでいく現場で、役者人生においてとても大切なものをいただけたと思います。

――自分の意見を発信するとなると、責任が伴いますよね?

庄司:そうなんです。「なんとなくそう思いました」では意味がないので、なぜ違和感があるのかをその場で言語化しなくてはいけない。それを先輩方とディスカッションしながら行っていくので、いい勉強になりました。

――風間さんとの共演で、学びになったことを教えてください。

庄司:本当にたくさんありますけど、より多方面に思考が及ぶ方だなと感じました。たとえば、「部下が意見を出したけど、別の都合でその意見が通らなくなって、風間さん演じる雀が代替案を出す」という流れがあったときに、「これって外から見たら、彼女が仕事を奪われたように見えない?」と。風間さんはオーディエンスがどう感じるかもよくわかっているし、それぞれの演者さんのいいところも引き出してくれる。あらゆる部分に配慮やケアが行き届いていて、吸収するばかりの日々でした。

――ファンの方に対して、「本作で今までにない自分を見てもらえるんじゃないか」という思いもありますか?

庄司:僕は体格や顔立ちから、クールな役を演じることが多くて。慶司もクール系なんですが、その中でも優しくて、人間味のあるキャラクターだと感じています。慶司のクールさは、社会を生き抜く上で身につけたものでもあるし、自分を守る手段でもある。原作へのリスペクトだけでなく、一人の田中慶司を愛する人間として、より素敵に表現できればいいなと思いながらやっていたので、今までの僕を知ってくださっている方にも“初めて”の瞬間がたくさんあるんじゃないかなと期待しています。

――クールな役が多いとのことですが、ご自身としては?

庄司:僕としては三枚目でいきたくて、いつでもズッコける準備はできています(笑)。本当の僕はおしゃべり好きなので、まったくクールではないんですよ。でも、それぞれのキャラクターに僕には備わっていない“カッコよさ”がたくさんあるので、それを自分の要素にできることがありがたいなと思っています。

芸能界が“特別”から“特殊”に変わって

――庄司さんは学生時代に電車でスカウトされたそうですね。

庄司:もともと海外で働こうと思っていたので、大学時代は留学のための資格や語学の勉強をしていました。大学3年から4年の半ばまでアメリカに行って、そのまま東海岸のどこかに就職するぞと思いながら。すべてが思い通りに行くことはないでしょうけど、海外が好きで憧れがあったので、人生のどこかでそういうことをしたいなとは思っていました。

――芸能界には興味がなかった?

庄司:映画やドラマはいち視聴者として楽しんでいましたけど、特別好きな分野ということはなくて。バスケや勉強のほうに時間を使っていましたね。

――このルックスにスタイルだと、周囲からも芸能界を勧められそうですが……。

庄司:いやいや(笑)。事務所に所属してからも、友達には黙っていたんです。そうしたら、『魔進戦隊キラメイジャー』に出たときにすごい数のLINEが来て。「年齢と名前が一緒で、お前っぽい顔のヤツが出てるんだけど」と言われて、最初はそれもスルーしていました(笑)。僕はスポットライトを浴びるタイプではないし、人前に出るのも苦手だったので、両親も含めてみんな意外そうでしたね。僕自身、意外だなと今でも思っています。

――人前に出るのが苦手だと、芸能界に入るのは覚悟がいりますよね?

庄司:学生だったので、いろんなことに覚悟はいらなかったんです。しかも芸能界ということで、特別なことをしている気持ちよさもありました。不安が生まれるのは、卒業してからですよね。“特別”から“特殊”に変わるんです。みんなが働き始めて、結婚する人も出てくる。もちろん、この職業の素晴らしさはたくさん知っているけれど、浮世離れしているのは確かで。学生の頃はそこに気づかなくて、人と違うことができてラッキーくらいの気持ちでした。

――みんなが就職する中で、「このまま続けていいのか」と悩むようなことも?

庄司:それは常に感じていました。でも、ちょうど『魔進戦隊キラメイジャー』が終わったタイミングが4年生で、みんなの就活話を聞きながら「もうちょっと特別な世界があるのかも」と勝手に幻想を抱いたんです。スーパー戦隊でさらっとデビューできちゃったので、「どうにかなるだろう」とも思ってしまったんですよね。結局、そこから2年間くらい苦しむことになりました。

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――苦しむというのは?

庄司:単純にあまり仕事がなかったんです。スーパー戦隊のときにはみんな横並びだったけど、その作品でデビューしたのは僕だけでしたし、全員が同じ歩幅で進んでいくわけではなくて。共演者たちが次々と新しいステップを踏んでいく中で、自分だけが足踏みしているような時間がわりと長かったですね。

――スポーツや勉強と違って、この世界は周囲の評価次第という難しさもありますよね。

庄司:まさにそこが心理的な壁でした。スキルを向上させる方法が明確な世界にずっといたし、その世界が好きだった。単語が覚えられなければ100回書けばいいし、シュートが入らなければ100回打てばいい。でも芸能界では、芝居がうまいから売れているとも限らないし、顔が整っているから支持されるとも限らない。どうすればいいんだろうと、ずっとモヤモヤしていました。

――そのモヤモヤからは、どう抜け出した?

庄司:僕を応援してくれている人にとって、僕がこれまで悩んできたことや、今ぶつかっている壁なんてどうでもいい、ということですかね。今はなんでもオープンにする時代だけど、僕はそれがいいことだとは思わなくて。努力は見えなくていいし、結果がダメだったらクビを切られる。すごくフェアなんじゃないかなと。もちろん今でも黒い感情が出てくることもありますけど、以前に比べたら対処する方法がわかってきた気がします。

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