『しあわせは食べて寝て待て』宮沢氷魚の役幅の広さを再確認 男性同士の恋愛から大河まで

 筆者が印象に残った作品がたまたま男性同士の恋愛を描いた作品であっただけで、宮沢の役どころは幅広いことも触れておきたい。例えば、横浜流星主演の大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』(NHK総合)では、田沼権勢の象徴として、若くして意知は若年寄に昇進、異例の出世をとげるという田沼意次(渡辺謙)の嫡男・田沼意知役として出演。凛々しい姿と柔らかありながらまっすぐなものの言い方が印象的だ。また、2024年に放送された西島秀俊と芦田愛菜W主演『さよならマエストロ~父と私のアパッシオナート~』(TBS系)では、スーパーポジティブな性格のトランぺット奏者・森大輝役を務めた。宮沢が演じてきた役柄の中では1番明るく、ノリのいいタイプだったのではないだろうか。

 『しあわせは食べて寝て待て』では、みんなに優しいけれど人と一定の距離感を保つ司を演じているが、ついに第5話ではそんな彼の過去が描かれた。本人の口からも自身がヤングケアラーであったことや結婚観が語られる一方で、鈴の目線の回想シーンでは、2人が同居するようになったきっかけと司の実父に対する思いも判明。司の爽やかで今どきっぽい見た目とは裏腹に、何かを悟ったようなものの見方や言葉の数々は、過去の経験から来るものであったのだ。家族関係が上手くいっていない団地に住む高校生・目白弓(中山ひなの)について「外から見ているだけでわからないこともありますから」というさとこの言葉が妙に沁みる。

 本作もいよいよ折り返し。「病気が治った!」というような大きな展開はないが、着実にいい方向へ変化しているさとこ。それに対して司はどうだろうか。実は一番臆病で、変化を恐れているようにも思えてきた。そんな思いをひとしきり巡らせたあと、「あぁ早く来週にならないかな」とまた思ってしまう。

桜井ユキが“強気”なキャラを脱却 『しあわせは食べて寝て待て』で見せるギャップ

現在、NHKドラマ10枠にて放送中の『しあわせは食べて寝て待て』。4月1日に放送された第1話が、これまでNHKプラスで配信された…

■放送情報
ドラマ10『しあわせは食べて寝て待て』
NHK総合にて、毎週火曜22:00~放送
出演:桜井ユキ、宮沢氷魚、加賀まりこ、福士誠治、田畑智子、中山雄斗、奥山葵、北乃きい、西山潤、土居志央梨、中山ひなの、朝加真由美
原作:水凪トリ『しあわせは食べて寝て待て』
脚本:桑原亮子、ねじめ彩木
音楽:中島ノブユキ
演出:中野亮平、田中健二、内田貴史
制作統括:小松昌代(NHK エンタープライズ)、渡邊悟(NHK)
写真提供=NHK

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