斎藤工、『海に眠るダイヤモンド』は2024年の集大成に “ふたつの顔”が生む演技の質感

 さて、これまでにも数々の映画やドラマで、ありとあらゆるタイプのキャラクターを演じてきた俳優・斎藤工。この2024年も個性的な役どころが続いている。

 年始から放送された月9ドラマ『君が心をくれたから』(フジテレビ系)では、ヒロインに“過酷な奇跡”を提示するあの世からの案内人に扮した。ヒロインにとって大切な者の命を救うのと引き換えに、彼女から五感を奪っていくのだ。体温の感じられない、かなり特異な役どころであった。最終的にはこの冷酷な人物の壮絶な過去が明らかになったが、誰もが納得したことだろう。斎藤は自身の演じるキャラクターがたどってきた軌跡を、つねにセリフや一挙一動に接続させていたのだ。

 さらに2024年は、2019年公開の『麻雀放浪記2020』ではじめてタッグを組んだ、白石和彌監督の作品での活躍が目立っている。『碁盤斬り』では草彅剛が演じる主人公の宿敵を演じ、見せ場はほとんど後半にかぎられていたが、彼の体現する武士の落ちぶれ具合といったら感動的なレベルのものだった。その下劣さに歯噛みしながらも、拍手せずにはいられない名演だったのだ。続いて『極悪女王』(Netflix)が世界中で配信され、スタートから2ヶ月以上の時を経たいまも話題作であり続けている。女子プロレスの世界を描いた同作において斎藤が演じる松永俊国は悪辣な興行主だが、これを彼は“好演”と呼べるほどに自分のものにしている。主体性を獲得していく女子レスラーたちの成長こそ本作の核。これを際立たせているひとりが、斎藤なのである。

 ここに2024年の斎藤が演じたキャラクターたちを並べてみたが、『海に眠るダイヤモンド』の進平に比較的近いのは、やはり『君が心をくれたから』の案内人役だろうか。どちらも心に深い傷を負っている。いや、白石作品での彼は“生”に固執した役どころを担っているが、炭鉱員としての進平は間違いなく生命力に溢れた生活者だ。壮大なスケールで物語が展開する本作には、2024年の斎藤の活動の集大成的なものが刻まれつつあるのかもしれない。

■放送情報
日曜劇場『海に眠るダイヤモンド』
TBS系にて、毎週日曜21:00〜21:54放送
出演:神木隆之介、斎藤工、杉咲花、池田エライザ、清水尋也、中嶋朋子、山本未來、さだまさし、國村隼、土屋太鳳、沢村一樹、宮本信子、尾美としのり、美保純、酒向芳、宮崎吐夢、内藤秀一郎、西垣匠、豆原一成(JO1)、片岡凜
脚本:野木亜紀子
演出:塚原あゆ子、福田亮介、林啓史、府川亮介
プロデュース :新井順子、松本明子
スーパーバイザー:那須田淳、岡崎吉弘
音楽:佐藤直紀
編成:中井芳彦、後藤大希
製作:TBSスパークル、TBS
制作協力:NBC長崎放送
『海に眠るダイヤモンド』©TBSスパークル/TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/umininemuru_diamond_tbs/
公式X(旧Twitter):@umininemuru_tbs
公式Instagram:umininemuru_tbs
公式TikTok:@umininemuru_tbs

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