『光る君へ』黒木華がハマり役過ぎる“穏やかで怖い”倫子 道長の歌をどう受け止めるのか

 NHK大河ドラマ『光る君へ』の藤原道長(柄本佑)は、平安時代の貴族社会において自分が最高権力者にまで上り詰めることができたのは、まひろ(吉高由里子)への一途な愛が原動力にあると確信しているようだ。まひろと交わした約束を胸に、その志を支えとして政に取り組んできたと彼は自負している。

 とはいえ、実際は潤沢な資金で彼をバックアップし、サポートしてきた黒木華演じる嫡妻・倫子の存在があまりにも大きい。第43回「輝きののちに」の印象的なシーンは、土御門殿に道長と倫子、頼通(渡邊圭祐)と妻の隆姫(田中日奈子)、教通(姫子松柾)とその妻で出産したばかりの頼子(近藤幼菜)が集まっている場面から始まる。頼子は藤原公任(町田啓太)の娘で、孫を抱いた倫子は「美しいお顔が公任様に似ておりますこと」と朗らかな笑顔を見せる。

 そんな祝いの席だというのに、道長は隆姫にぜひ頼通の子を産んでほしいと真顔で切り出した。強く頼まれたからといって人にはそれぞれ事情があり、できることとできないことがある。自分には妻が2人、そのほかにソウルメイトのまひろがいて(まひろの娘・賢子も含めると13人)子だくさんかもしれないが、それを頼通夫妻に求めても困惑されるだけだ。

 頼通は道長と倫子と3人になると、道長に対して隆姫のことを気遣ってほしいと頼んだ。道長は子どもを催促して当然だと思っているようで、親子のやりとりが平行線を辿ると、倫子は穏やかな口調でそれを遮った。「覚悟をお決めなさい。父上のように、もう一人妻を持てば、隆姫とて楽になるかもしれませんよ。何もかも一人で背負わなくてもよくなるんですもの」

 そんな倫子のこの言葉に頼通は顔色を変え、「私の妻は隆姫だけです。ほかのものは要りません」と言って立ち去った。頼通の憤慨した様子に道長が「ますます頑なになってしまったではないか」と倫子が頼通を怒らせたと非難めいた表情を浮かべると「私は殿に愛されてはいない」と静かなトーンで語り始めた。

「私ではない、明子様でもない、殿が心からめでておられる女がどこぞにいるのだと疑って苦しいこともありましたけれど、今はそのようなことはどうでもいいと思っております。彰子が皇子を産み、その皇子が帝になるやもしれぬのでございますよ。私の悩みなど吹き飛ぶくらいのことを殿がしてくださった。何もかも殿のおかげでございます」

 終始おだやか、まひろの存在に気づいているのか、今は本当にどうでもいいことののか……。いつも通りの上品な微笑みで感謝まで伝える倫子に道長は「……そうか……」としか言えない。

 「私とていろいろと考えておりますのよ」(え、何を? 何を考えているんだろう? 小さい声で)「うん」心ここにあらずの表情で何となく相づちを打つしかない道長。「ですから、たまには私の方もご覧くださいませ。フフフフフ……」倫子のかわいらしい笑い声が不気味に響く。苦い、何ともいえない表情で道長は笑う倫子を見つめるしかない。

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