『九龍ジェネリックロマンス』実写化の鍵は“なつかしさ”の表現 アニメとの違いから考える

「なつかしさ」を映像で表現できるのは、実写かアニメか

 さて、この原作マンガを映像化する時に重要なポイントは何だろうか。本作は雰囲気、より具体的に言うと、主人公たちが生活する空間の街の空気感、建造物が醸し出す匂いのようなものを強く感じさせる作品だ。したがって、あの舞台となる九龍の街の雰囲気、人間の酸いも甘いも、犯罪も人情もまるごと包摂してしまいそうな、あのカオスな空間をいかに映像で表現するのかがポイントとなる。

 アニメであれば、かつての九龍の写真などを参考に趣きある雰囲気を描けばいい。だが、実写映画の場合、実際のロケ地、あるいはセットで撮影する必要がある。すでに本物の九龍が存在しない以上、これは大きな挑戦になる。どこでロケをしているのか現時点ではわからないが、日本国内であの雰囲気を持ったロケ地がどれくらい存在するだろうか。かといって、セットで再現するのも相当なチャレンジだろう。実際にはロケとセットを組み合わせて撮影することになるだろうが。

『九龍ジェネリックロマンス』TVアニメ&実写映画 2025年Wメディア化超特報

 公開された特報映像では、街の全景ショットはアニメのフッテージを利用し、実写パートでは人物などに寄ったショットが多い。実写版の街の雰囲気を掴むにはまだ情報不足で判断するのは早計だが、今は存在しない街のノスタルジーを描くなら、一般的にはアニメに分があるだろう。しかし、もし、原作の雑然としたあの街を実写で描くことに成功すれば、それは絵では迫りきれない、相当に魅力あふれる映像になると思う。

 とりわけ、このラブロマンス作品は「なつかしさ」と恋を結び付けている。それは作中の工藤のセリフが象徴している。

「切れかけの電灯、カビくさい路地裏、うるさい隣人、そのどれもが無性になつかしい。俺はこのなつかしいって感情は、恋と同じだと思ってる」

 この感覚に説得力を与えるためには、「なつかしさ」を映像で表現できねばならない。どれだけ「なつかしさ」に迫ることができるかが、映像化の成否を分けるポイントになるだろう。続報を待ちたい。

■公開・放送情報
『九龍ジェネリックロマンス』
2025年TV アニメ放送&実写映画公開
原作:「九龍ジェネリックロマンス」眉月じゅん(集英社「週刊ヤングジャンプ」連載)
・TVアニメ
W主演:白石晴香、杉田智和
製作:「九龍ジェネリックロマンス」製作委員会
©眉月じゅん/集英社・「九龍ジェネリックロマンス」製作委員会

・実写映画
W主演:吉岡里帆、水上恒司
配給:バンダイナムコフィルムワークス
©眉月じゅん/集英社・映画「九龍ジェネリックロマンス」製作委員会

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