『虎に翼』メイクに依存しない伊藤沙莉の“加齢”の表現 “老い”の名演は近年の朝ドラでも

 『虎に翼』では、女学生の寅子が法律を学び始め、弁護士を経て、裁判官になっていく間に、少しずつ年齢を重ねていく様子を、主演の伊藤が自然に表現している。年と共に髪型は変わったが、それほどメイクに頼ることなく、顔の表情や体の動かし方に少しずつ変化を出し、少女から大人の女性になり、やがて中高年化していく寅子の変遷を体現している伊藤の演技は、本当に素晴らしいと思う。

 また、『虎に翼』は、寅子の更年期の不調をも取り上げていたのが印象的だ。伊藤による、更年期の症状の1つである“ホットフラッシュ”などの演技は、視聴者から共感を得るほど、ヒロインが年を重ねることをリアルに綴っていた。加齢による変化を真正面から描いた朝ドラとして、後世に語り継がれるに違いない。

 最近では、寅子が老眼鏡をかけて新聞を読んでいる描写もある。50代後半で、裁判官としてバリバリ働いている寅子は、仕事では熟練の域に達し、家庭では孫のいる祖母になった。東京家庭裁判所少年部部長の寅子は、まだまだ成し遂げなければならない案件も山積みだし、さらに出世すると思われるので、視聴者としては最終回まで寅子が活躍する姿を楽しみたい。そんな寅子を、最晩年まで熱演し続けであろう伊藤への期待が膨らむばかりだ。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『虎に翼』
総合:毎週月曜~金曜8:00~8:15、(再放送)毎週月曜~金曜12:45~13:00
BSプレミアム:毎週月曜~金曜7:30~7:45、(再放送)毎週土曜8:15~9:30
BS4K:毎週月曜~金曜7:30~7:45、(再放送)毎週土曜10:15~11:30
出演:伊藤沙莉、岡田将生、森田望智、三山凌輝、毎田暖乃、青山凌大、今井悠貴、井上祐貴、尾碕真花、名村辰、松川尚瑠輝、渡邉美穂、菊池和澄、余貴美子
作:吉田恵里香
語り:尾野真千子
音楽:森優太
主題歌:米津玄師「さよーならまたいつか!」
法律考証:村上一博
制作統括:尾崎裕和
プロデューサー:石澤かおる
取材:清永聡
演出:梛川善郎、安藤大佑、橋本万葉ほか
写真提供=NHK

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