『虎に翼』で朝ドラデビュー 猪爪直人役・青山凌大が明かす、俳優としての意識の変化
NHK連続テレビ小説『虎に翼』で花江(森田望智)と直道(上川周作)の息子・猪爪直人役を演じた青山凌大。幼少期から「いい子」だったという青山は、芸能界入りに当初は消極的だったという。そんな戸惑いもありながら始めた役者業だったが、『虎に翼』への出演を通じて大きく意識が変わったそうだ。人間関係の難しさを経験しながらも、周囲の人々との出会いを通じて「人を信じられるようになった」と語る青山。今後は多様な役柄に挑戦しつつ、自身の経験を活かして観る人に寄り添える俳優を目指す青山の素顔に迫る。
圧倒され続けた猪爪家での食卓シーン
――『虎に翼』に出演されて、周囲からの反響はいかがですか?
青山凌大(以下、青山):家族も友人もみんな喜んでくれましたし、母方の祖父は、知人に「孫が『虎に翼』に出ます」とメールを送ったみたいです(笑)。「こういう反応が来たよ」とわざわざ連絡をくれたりもして、嬉しかったですね。
――出演のきっかけはオーディションですか?
青山:オーディションを受けて、「合う役があったらお願いします」と言われていました。『虎に翼』の撮影がスタートする時期には、僕のスケジュールにも仮で入っていたものが後日消えることもあって(笑)。「これはダメだったんだな」と思っていたので、正式に決まったときには実感が湧かなかったです。
――朝ドラ初出演ということには、どんな思いがありましたか?
青山:ひたすらプレッシャーを感じていました。第1話から観ていて、何回泣いたかわからないくらいに好きな作品だったので、嬉しいけれど「自分にできるのかな」と不安で。クランクインした日は初めにリハーサルがあったんですが、現場に入った瞬間にみなさんがお芝居しているのが見えて、もう緊張ですよね。(弟・直治役の)今井悠貴さんと、「いつ挨拶に行く?」ってそわそわしていました。
――それは緊張しますよね。クランクインは、初登場のシーンだったんですか?
青山:そうですね。みなさんが「これをこうやったらどうか」と提案されている中、「僕もできたほうがいいんだけど……」と思い続けていました。
――そんな中、今井さんがいて心強かったですね。
青山:本当にそうなんです。クランクアップの日に、LINEで「ありがとうございました」と送ったら、今井さんからも「心強かった」と言ってもらえてすごく嬉しかったです。
――直人を演じる上で、どんなところを意識されたのでしょうか?
青山:子ども時代を演じていた方もいらっしゃいますし、監督からも「真面目で母親思い」と聞いていたので、そのイメージで演じていました。自分としては、いち視聴者として観ている中で“家族”というものを感じてほっこりするシーンがたくさんあったので、優しい父親(直道/上川周作)の面影や、母親(花江/森田望智)が持っている要素を引き継げたらいいなと思っていました。
――花江役の森田さんとは、事前にどんなお話を?
青山:事前には特にお話していないです。ただ、最初に輪に入れてくれたのは森田さんだったと思います。僕は仲良くなるまでに時間がかかるタイプなので、前室で「どうしよう」と思っていたら、「こっちに来て座ればいいじゃん!」と呼んでくれて。すごく温かい方々ばかりで、いろいろなお話をしました。たとえば、僕は食に興味がないんですよ。
――珍しいですね。キャスト同士で美味しいものについて語る、というのはあるあるかと。
青山:「好きな食べ物は?」と聞かれたときに、「正直あまり食べるのが好きじゃない」と話したら、「生きてて何をしてる時間が楽しいの?」「どんなものなら好きなの?」と今までにないくらい質問攻めにあって(笑)。すごく楽しかったですし、嬉しかったです。
――ちなみに、何をされているときが一番楽しいんですか?
青山:友人と話しているときですね。生きていて、一番幸せな時間かもしれないです。
――“食”より“友人と過ごす時間”なんですね。特に印象的だった撮影についても聞かせてください。
青山:やっぱり家族会議のシーンは印象的でした。みなさん本当にすごいんですよ。10分以上の長回しで「今回の朝ドラで一番長いシーンだ」とも聞きましたけど、リハがあるとはいえ全部一発でやるんです。あの方々は一度も噛まないし、一度も失敗しないんです! 直前まで笑いながら会話をしていて「ヨーイ」で切り替わるって、よく聞くじゃないですか。それを目の前でやられて、「これはミスできないぞ」と(笑)。もう、みなさんのお芝居がすごすぎて……目標になりますよね、あんなものを見せられてしまったら(笑)。
――(笑)。すごく刺激のある現場だったんですね。
青山:森田さんは、こっちがどんなお芝居をしても泣いてくれるんじゃないかと思うくらいに素敵な受け方をしてくださったので、逆に自信をなくしました(笑)。“影響を与え合って”というのが理想だと思うんですが、本当にすごいなと尊敬しました。
――直人を演じるという意味ではいかがでしたか?
青山:役の気持ちを考える時間は好きなので、楽しかったです。それに、実の母親が「自分に言われているみたいで感動した」と言っていて。僕自身、母親に対する思いは直人に近いのかなと思っていましたし、観ている方が家族や日頃お世話になっている人に対して、お礼を言いたくなるようなシーンにできたらいいなと思っていました。
――青山さん自身、ご家族のことを改めて感じる時間にもなったんですね。
青山:そうですね、すごく考えました。北海道から大学進学で東京に出てきたときに、一人暮らしを始めて。それから両親に感謝する機会は増えましたけど、今回あらためて父親の偉大さにも気づきましたし、母親の優しさというか、今までいろいろとしてくれたことを思い返したりもしました。
――SNSでも「直人がいい子すぎる」と話題になっていましたが、ご自身にも近い部分がありそうです。
青山:周りからは「結構近い」と言われます。役者なので、「逆です」と言えたらカッコいいんですけどね(笑)。