宇野維正の映画興行分析

『ルックバック』大ヒットスタートも、「ODS作品」としての公開に残る謎と疑問

 また、これは実際に作品を観るまで自分も知らなかったが、本作の冒頭には近年『Saltburn』(日本では配信公開)、『アメリカン・フィクション』(同じく日本では配信公開)、『チャレンジャーズ』などの話題作を立て続けに送り出しているAmazon MGM Studiosのオープニングロゴが映し出される。これはPrime Videoで全世界配信されることを示唆するものだが、その配信時期などについても現在のところ明らかにされてない。今作と違うケースではあるが、今年3月と5月に「前章」と「後章」の2部作として日本で劇場公開されたアニメーション作品『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』は、北米では5月から18エピソード(+エピソード0)のテレビシリーズとして再編集されてアニメーション専門のプラットフォームCrunchyrollで配信されている。

 日本のアニメーション作品の人気の広がりを受けて、今後もこうした海外の配信プラットフォームの作品への参入は増えるだろうし、その際、日本ローカルと海外での展開に違いがでてくることも増えていくだろう。特に作品の配信時期に関しては、劇場での興行にも直接影響する問題なので、戦略的に情報を小出しにするのは理解できる。しかし、今回の『ルックバック』のように「ODS作品としての公開」という選択をするならば、事前にもう少しだけ情報の開示があってもいいように思う。

■公開情報
『ルックバック』
全国公開中
原作:藤本タツキ『ルックバック』(集英社ジャンプコミックス刊)
監督・脚本・キャラクターデザイン:押山清高
出演:河合優実、吉田美月喜
音楽:haruka nakamura 
アニメーション制作:スタジオドリアン
配給:エイベックス・ピクチャーズ
©藤本タツキ/集英社 ©2024「ルックバック」製作委員会
公式サイト:lookback-anime.com
公式X(旧Twitter):@lookback_anime

『今週の映画ランキング』(興行通信社):https://www.kogyotsushin.com/archives/weekend/

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