『ブラックペアン』S2の二宮和也は想像以上? 日曜劇場初挑戦の西浦正記監督に狙いを聞く

西浦正記監督が驚いた二宮和也の作品理解度

――あらためて、『ブラックペアン』の現場に入られた感想はいかがですか?

西浦:みなさん、お芝居がすごくしっかりされている方々なので、ワンシーンワンシーン、自分の想像を超えて来てくれるんです。これは本当に幸せなことだなと思いながらやっています。

――特に驚かされたことはありますか?

西浦:やっぱり二宮さんの芝居がすごくて。大事なシーンの撮影があると、1週間くらい前にヒントの出し合いみたいなことをするんですよ。「絶対こうしようね」ということではなくて、「このとき天城ってどうするかね」「声は掛けないよね、たぶん」という感じで。でも、最終的には二宮さんがカチッと固めて、ドライ(※リハーサル)でバンッと出してくるので、「おぉぉ」と(笑)。もう8割くらいがそうかもしれません。素晴らしいなと思いますね。

――二宮さんとは過去に『拝啓、父上様』(フジテレビ系)、『優しい時間』(フジテレビ系)でもご一緒されているので、再び二宮さんと組むことへのワクワク感もあったのではないでしょうか。

西浦:それはもちろんあります。昔お仕事した人とまた一緒にやるというのは、ドキドキしますし、自分がどれだけ成長できているか、どれだけ研鑽を重ねて来られたかな、と試されるような気もします(笑)。

――一方で、今回は同じ二宮さん主演でありながら、演じる役が違うという挑戦もあります。

西浦:そうなんです。なので見た目についても、ご本人といろいろと話をしました。彼の髪の長さを考えたときに、どうしても渡海との違いを出しにくいので、「シルバーにしたらどうか」とか「ピアスをつけたらどうか」とか。渡海は見た目を気にしないタイプだったけど、天城はビジュアルも気にするし、いわゆる美的な造詣にも深い人だと考えてやっていこう、という話になりました。

――ドラマを制作する中で、二宮さんから提案されて印象的だったことはありますか?

西浦:シーズン1では「誰かがオペを失敗して、それを渡海が助ける」という流れが名物になっていましたが、今回第1話のオペシーンでは誰かが失敗するのではなく、“ただ彼の技術が素晴らしくて、華麗である”ということを表現しなければいけなかった。さてどうしようかと悩んでいたところ、彼から「新しい劇伴を作るのではなくて、もともとあるクラシックの曲を使えないか」と提案されました。しかも、スタンダードナンバーではないけれど、どこかで聴いたことがあるような、ちょうどいいところを突いてくる。「この人はクラシックにまで造詣があるのか」と思って驚きましたよね(笑)。実際、オペシーンに織り交ぜて編集することで、軽やかかつドラマチックな映像に仕上がったと思います。

――本当にキャストの方と一緒にドラマを作り上げているんですね。

西浦:まさにそうですね。他の監督がどうやっているかはわかりませんが、僕は中身に関してよく喋るほうだと思います。今回も、いろんなキャラクターの方となるべくコミュニケーションを取るようにしています。

――なかでも印象的だったお話はありますか?

西浦:佐伯清剛役の内野さんとは、台本上からフィードバックされるお芝居と、シーズン2全体において「佐伯は何を考えているのか」ということをよく喋っていました。今回、彼は病院長の椅子に座ることになりますが、「後ろの額に“書”を額装して入れたい」という話になって、僕は「一度すべてを焼き尽くして、そこからスタートする」というような意味合いで「燎」(かがりび)を選んだんです。そうしたら内野さんに「自分としてはカンフル剤を打って、今少し停滞している東城大と医療の世界を変えていきたい、といった気持ちでいたけれど、それを全部リセットするくらいの気概で始めるんだ、ということに合点がいった」とおっしゃっていただいて。佐伯がその書を眺める芝居を入れていただけたりもして、すごくよかったですね。

――間もなく第1話が放送されますが、撮影中に「ここは惹き込まれた」という注目シーンを教えてください。

西浦:二宮さんのアドリブのシーンはすごかったです。先ほど言ったように、ヒントの投げ合いをしたあと、答えが出ないまま現場が始まり、ドライをやったときに、ものすごい勢いでアドリブをワーッと喋り始めたわけですよ。その内容も素晴らしかったし、現場の空気にもいい緊張感が生まれました。いわゆる医師としてのこだわり、患者に対する思い、そういった自分の中にある哲学の欠片を世良に訴えかけるんですが、撮影しながら自分が一瞬止まってしまうくらい、心に来るものがありました。あとは、やっぱり天城と渡海のキャラが全く違う。渡海は“短いワードで刺さる人”でしたが、天城は“サーッと一気に喋ってそれを伝える”という手法に変えているので、そんなキャラクターを伝えるシーンでもありますね。

――伊與田プロデューサーから、西浦監督は自分の考えだけに固執しない、台本に寄り添う監督だとお聞きしました。本作に限らず、常にそのあたりを意識されているのでしょうか。

西浦:共通言語として台本があるので、そこを逸脱したいなら自分で企画を立てて、自分で脚本を書けばいいと思うんです。でも、プロデューサー、原作者、脚本家がいらっしゃって、その方々に「今回はこれをやっていきたい」という気持ちがあるので、そこをあえて逸脱する必要はなくて。「“何を言いたいか”をどれだけちゃんと見せられるか」を考えながら、表面張力ギリギリのところを攻めたいなと思っています。バーッと注いで溢れさせることは簡単だけど、この枠で、こういう座組で、こういうことをやりたいと思っている、という共通言語があるので、そこを面白くするために「どうギリギリを攻めようかな」と常に考えています。

――3月に独立されたとのことですが、フリーになって新たな気づきなどはありますか?

西浦:制作側の想いが強い作品は、いいものになる。そんなスタッフの想いを束ねるのが監督の仕事でもありますが、やはりそれぞれの想いが強い番組や作品はいい結果につながると思います。あとは本当にいろいろな作品が選べるので、それはすごくありがたいことですよね。

――これからは、“西浦監督らしくない”作品が見られるのも楽しみです。

西浦:自分の頭の中でも、くるくると角度を変えながらやっています(笑)。7月19日には『逃走中 THE MOVIE』が公開されますが、まずはこの『ブラックペアン シーズン2』をみなさんに楽しんでいただけたらと思っています。

■放送情報
日曜劇場『ブラックペアン シーズン2』
TBS系にて、7月7日(日)スタート 毎週日曜21:00〜21:54放送
出演:二宮和也、竹内涼真、葵わかな、キム・ムジュン、内村遥、今野浩喜、森田甘路、ヤマダユウスケ、松川尚瑠輝、水谷果穂、田中みな実、石坂浩二、神野三鈴、橋本さとし、段田安則、小泉孝太郎、内野聖陽
原作:海堂尊『ブレイズメス1990』『スリジエセンター1991』(講談社文庫)
脚本: 槌谷健、守口悠介ほか
演出:西浦正記、加藤亜季子、伊東祥宏
音楽:木村秀彬
主題歌:小田和正「その先にあるもの」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
プロデュース:伊與田英徳、武藤淳、佐久間晃嗣
製作著作:TBS
©︎TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/blackpean_tbs/
公式X(旧Twitter):@blackpean_tbs
公式Instagram:blackpean_tbs
公式TikTok:@blackpean_tbs

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