杉咲花、『アンメット』で得た確かな手応え 若葉竜也には「どこまでも輝いてほしかった」

 この人ほど“役を生きる”という言葉が似合う俳優はいない。これまで数々の作品に出演し、その圧倒的な演技力で多くの人を魅了してきた杉咲花。主演を務めるカンテレ・フジテレビ系月10ドラマ『アンメット ある脳外科医の日記』(以下、『アンメット』)では、記憶障害の脳外科医・川内ミヤビを演じ、初の医師役に挑んでいる。4月に行われた制作発表会見で「“指折りの傑作を作りたい”と恥じらいもなく言ってみたい」と発言していた彼女は、どのような思いで作品に臨んだのか。その言葉からは、並々ならぬ意志が伝わってきた。【インタビューの最後には、サイン入りチェキプレゼント企画あり】

“リアリティを感じられる作品になってほしい”という現場での共通意識

ーー『アンメット』は杉咲さんにとって初のフジテレビ系連続ドラマ主演作になりますが、出演するにあたって、杉咲さん自身にも並々ならぬ思いがあったそうですね。

杉咲花(以下、杉咲):一昨年、正式なオファーをいただく前に、プロデューサーの米田(孝)さんが直接お話ししたいと会いに来てくださったんです。そこで、原作との出会いや映像化するにあたっての思い、そして純度の高い作品を共に作りませんかという気持ちを伝えてくださって。その熱意に突き動かされて、この方についていきたいと思いましたし、いままで観たことのないようなドラマが作れるのではないかという予感がありました。

ーー米田プロデューサーの熱意に感銘を受けたと。

杉咲:エンターテインメントが溢れていく一方で、テレビドラマが低迷してしまっている現実。そのことを冷静に見つめながら、面倒なことも惜しまずにトライしていけば、きっと視聴者に届くのではないかという真摯な姿勢が本当に素敵で。こんなプロデューサーさんに出会えて幸せだと思いました。そこが自分にとっての『アンメット』の出発点です。

ーー数々の作品に出演されてきた杉咲さんにとっても、その始まり方は珍しいことだったんですか?

杉咲:初めての経験でした。自分自身も久しぶりの地上波の連続ドラマでしたし、特にこの1~2年は、作品とどう向き合っていきたいか、日々生活していく中で何を感じて生きていて、どんなことを望んでいるのか、ということに対する輪郭が明確になりだしたタイミングだったので、その中でこのような出会いがあったことは、私にとっても大きなことでした。

ーー原作漫画と脚本がある上で、杉咲さん、若葉さん、米田プロデューサーを中心に、現場では細かい部分まで精査しながらやられているそうですね。

杉咲:まず私自分自身が原作漫画を拝読して、1人の受け手としてとても心を動かされて。『アンメット』で描かれる人物が、自分たちと地続きの世界で息をしている人々のように感じてもらえるように、より解像度を上げて描いていかなければいけないと感じました。それに加えて、原作では言語やイラストで表現されていたものを、映像表現においては静かに発露しなければならない場面もあるなかで、その人が背負っているものが匂い立ってくるような背景を受け手に感じてもらうためにも、どのような脚色を行っていくことがより適正なのか、みなさんと紐解く時間をとても大切にしています。

ーー原作との大きな変更点で言うと、原作では三瓶が主人公でドラマではミヤビが主人公になっている点です。

杉咲:『アンメット』の映像化のオファーは過去に何度かあったらしいのですが、ミヤビを主人公にするという提案は米田さんが初めてだったみたいで。原作の子鹿(ゆずる)先生もそれを面白がってくださって今回のドラマ化に繋がったという経緯があったそうなんです。そこに関しては子鹿先生と米田さんを全面的に信頼しています。原作の連載はまだ続いているので、ドラマ版のほうが一足進んだ展開になっていくこともあるのですが、子鹿先生もドラマの影響で原作の流れが見えたということをおっしゃってくださっているともお聞きして、原作とドラマとで、とても面白い化学反応が起きていることを実感しています。

ーー意外なことに杉咲さんが医師役を演じるのは今回が初めてだそうですが、実際に演じてみていかがですか?

杉咲:医師役はいつかやってみたいという思いがあったので、楽しみだったのですが、例えば縫合や脈の測り方、患者さんとの接し方など実際の所作をご指導いただいて、こんなにも難しいのかと痛感しました。特に手術シーンに関しては、きっと医師同士にしかわからない会話のやりとりがあるはずで。本作では、そういった場面でもリアリティを感じられる作品になってほしいという気持ちが現場の共通意識としてあるんです。自分たちの知識では到底辿り着けない領域だからこそ、監修の先生方にはとても助けていただいています。私は、技術的な所作というのは、その人物の暮らしをうつすものだと思っていて。なので手元だけが映るシーンであっても、極力自分でやりたい気持ちがあるんです。各部署がそのようにしてこだわりを持っているので、細かなシーン一つとっても、何時間も話し合いながら撮影しています。何度も議論を重ねた上で最初の状態に戻ったりすることもあるんですけど、その時間は決して無駄にはならないと思っていて。そういう意識をスタッフ・キャスト含めてみんなが持っている現場なので、本当にやりがいがあります。その人じゃないと現場が成立しない意味をみんながそれぞれに見出しているんです。

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