『虎に翼』週タイトルの意味を解説 女性に向けられた偏見を示すことわざの数々

第5週「朝雨は女の腕まくり?」

 「朝雨は女の腕まくり」は、「朝に降る雨は、じきにあがるのと同様、女が腕まくりをして、いくら力んで見せても、すぐにへたばってしまうので、少しも怖くない」という意味(※3)。

 「共亜事件」に巻き込まれ、逮捕された父・直言(岡部たかし)の無実を信じる寅子は、はるが毎日つけていた手帳と調書の内容を照合し、直言が自白を強要された事実を突き止める。

 さらに、直言が長時間にわたって革手錠をされて追い込まれたことが違法だと気づき、弁護を担当する穂高に進言した寅子。

 はるが、日記としてつけ続けてきた「主婦乃手帖」と、寅子の勉学が大いに役に立ち、「朝雨は女の腕まくり」ということわざが間違っていることが証明された。

第6週「女の一念、岩をも通す?」

 「女の一念、岩をも通す」は、「女の執念が深いこと」の例え(※1)。

 明律大法学部で最終学年となった寅子たち女子学生は、高等試験で全員不合格に。女子部の新入生募集が中止になるという知らせが入り、香淑を筆頭に、寅子たちは穂高らに土下座して女子部存続を懇願する。その結果、翌年の高等試験で合格者が出たら、新入生募集が再開されることとなった。

 だが、それぞれの事情により、香淑、涼子、梅子は弁護士の夢を諦めることに。無事に合格した寅子は、大学が開催した祝賀会で、「この場に私が立っているのは、私が死ぬほど努力を重ねたから。でも、高等試験に合格しただけで、自分が女性の中で一番なんて、口が裂けても言えません」と言い、「志半ばで諦めた友、そもそも学ぶことができなかった、その選択肢があることすら知らなかったご婦人方がいることを、私は知っているのですから」と述べた。

 女性たちの想いを背負い、執念で弁護士となった寅子はまさに、「女の一念、岩をも通す」を実行したのだ。

第7週「女の心は猫の目?」

 「女の心は猫の目」は、「猫の目が光によって形が変化するように、女の心は気まぐれで変わりやすいこと」を例えたことわざ(※5)。

 雲野(塚地武雅)の事務所で弁護士として働きだした寅子だが、依頼人たちは女性ではなく、男性の弁護士を希望し、なかなか法廷に立つ機会を得られず、焦りを募らせる。

 女性であるだけではなく、未婚であることが頼りないとされ、社会的地位を得るために、結婚することを決意する寅子。だが、27歳になった寅子には、見合いの相手すら見つからなかった。そんな時、優三が名乗りを上げ、寅子は彼と結婚。ついに、法廷デビューを果たした。

 寅子に「女の心は猫の目」ということわざは相応しくないように思うが、花岡に婚約者がいることを知った後、弁護の担当を断られ続け、結婚を決意したのは、女心の変化もあったのかもしれない。

第8週「女冥利に尽きる?」

 「女冥利」とは、「女に生まれた甲斐があること」「女に生まれたことの幸せ」を意味する。

 契約結婚のような形で、優三と結婚した寅子だが、彼の優しさに触れるうちに優三を恋愛対象として好きになる。妊娠した寅子は、体調がすぐれない中、先輩の久保田(小林涼子)が弁護士を辞めると知って、夢を諦めた仲間たちを想い、女性弁護士はもう自分しかいないと奮闘した結果、無理をしすぎて倒れてしまう。

 女性の幸せとは何なのか? 「女冥利に尽きる」という言葉の意味を深く考える、第8週となりそうだ。

参照

※1. 『デジタル大辞泉』(小学館)
※2. 『精選版 日本国語大辞典』(小学館)
※3. 『ことわざを知る辞典』(小学館)
※4. https://kotowaza.jitenon.jp/kotowaza/276.php
※5. https://kotowaza.jitenon.jp/kotowaza/1836.php

■放送情報
NHK連続テレビ小説『虎に翼』
総合:毎週月曜〜金曜8:00〜8:15、(再放送)毎週月曜〜金曜12:45〜13:00
BSプレミアム:毎週月曜〜金曜7:30〜7:45、(再放送)毎週土曜8:15〜9:30
BS4K:毎週月曜〜金曜7:30〜7:45、(再放送)毎週土曜10:15~11:30
出演:伊藤沙莉、石田ゆり子、岡部たかし、仲野太賀、森田望智、上川周作、土居志央梨、桜井ユキ、平岩紙、ハ・ヨンス、岩田剛典、戸塚純貴、松山ケンイチ、小林薫
作:吉田恵里香
語り:尾野真千子
音楽:森優太
主題歌:米津玄師「さよーならまたいつか!」
法律考証:村上一博
制作統括:尾崎裕和
プロデューサー:石澤かおる
取材:清永聡
演出:梛川善郎、安藤大佑、橋本万葉ほか
写真提供=NHK

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